信用取引は「順張り」が基本
今回は「事例研究編」として、最近株価が大きく上昇したアイフル(8515)を例に、信用取引による売買のポイントを考えてみたいと思います。
以前に当コラムでもお話ししたと思いますが、信用取引は「順張り」(トレンドに従って売買する)が基本です。信用取引は建て玉の返済期日が6カ月後(制度信用取引の場合)と決まっていますから、現物取引のように、下降トレンド真っ只中の安いところで買っておいて上がるのをじっと待つ「逆張り戦略」を取ることはできません。無期限信用取引であればそういうことも可能ですが、支払金利などコストがかさむことを考えればあまり得策ではありません。
さらに、株価下落で信用建て玉の含み損が拡大すると、「追い証」(証拠金の追加差し入れ)が発生する恐れがあります。株価下落に耐えて持ち続けた結果、追い証に引っ掛かり泣く泣く決済して大損失確定→その後株価急騰、などという笑えない話も珍しくないのです。
ですから、信用買いの場合は上昇トレンドの時にサッと飛び乗って、上昇トレンドが続いているうちに欲張らずに利益確定するのが基本的なスタイルです。空売りの場合はその逆です。信用取引は大きな利益を1度に得るというよりは、小さめな利益を積み重ねていくものと考えておきましょう。
アイフル株の信用買いポイントは?
それではアイフル株の日足チャートを見てみましょう。
アイフル(8515)
信用買いを仕掛けるポイントとしては、まずは上昇トレンド入りして、かつ直近高値(9月19日の147円)を超えた10月9日の150円近辺(①)が挙げられます。
もう1つ、11月13日に236円まで下落した翌日の11月14日に253円で寄り付いたのですが、これをみて236円割れを損切り価格として飛び乗ることもできました(②)。
もし10月9日の150円近辺や、11月14日の253円近辺で買うことができていれば、その後買い値を下回ることなく推移していますので、そのまま建て玉を保有していても問題ありません。大きく上昇していますから一部を利益確定したり、現引きして現物株としてじっくり保有することとしてもよいでしょう。十分に利益を上げられて満足と思うのであれば全て決済してしまうのもありです。
今回はこれらの仕掛けポイントで成功しましたが、うまくいかなかった場合の対処も事前に考えておく必要があります。筆者なら150円で買った場合は直近安値の134円割れで損切り、253円近辺の場合は236円割れで損切りとします。場中に株価をみることができない方は、あらかじめ損切り価格をトリガーとする逆指値の返済売り注文を発注しておくことをお勧めします。
もちろん上昇トレンド継続中ですからこれ以外のタイミングで買ってもよいのですが、株価が25日移動平均線より大きく上方にかい離しているようなときに新規買いする場合は、移動平均線割れを損切り価格に設定すると損失率が大きくなってしまう恐れがあります。したがって、例えば買値から10%値下がりで損切り、とするとよいでしょう。
また、新規買いの後に含み益になったものの、その後株価が下がってきた場合は、損切り価格までの株価下落を待たず、小さな利益でも返済売りをする、買値まで下がったらトントンで手仕舞いするなどしておきましょう。その後良いタイミングが来たらその時に買いなおせばよいのです。
信用取引は基本的に短期決戦でコツコツ利益を積み重ねるスタイルですから、できるだけ損失を少なく抑えるのがポイントです。
空売りのタイミングは?
では、アイフル株を空売りするのはどうかといえば、現時点(12月14日大引け段階)ではどうみても空売りをするタイミングにはありません。株価が上昇トレンドの動きを続けているからです。
投資情報サイトでは、アイフル株の空売りを推奨しているところも散見されます。また、信用取引残高をみると、空売り残高も大きく増えています。ということは、この上昇トレンドの中、空売りを仕掛けている投資家も大勢いることを意味しますが、空売りの怖さを知っている筆者としては、上昇トレンド真っ只中のアイフル株を空売りすることなどできません。
もし空売りを新規に行うのであれば、トレンドが上昇から下降に転換したと思われる状態になるまで待ってから行うべき、というのが筆者の考えです。
具体的には、(ア)高値更新後の押し目を付けた後の反発で直近高値を抜くことができず、その後直前の押し目を割り込んだとき(例:400円→350円→385円→350円割れ)や、(イ)25日移動平均線が下向きに変化し、株価も25日移動平均線を割り込んだときが挙げられます。
空売り時に気をつけるべきこと(1) 信用買い残・売り残の推移
空売りを仕掛ける際に気をつけたいのは、信用買い残と売り残の状況です。多くの銘柄では信用買い残の方が信用売り残より多くなっています(「買い長」といいます)が、銘柄によっては信用買い残と売り残が拮抗していたり、逆に売り残の方が買い残より多い(「売り長」)場合もあります。こうした拮抗銘柄や売り長銘柄に空売りを仕掛けるのはリスクが高くあまり賢明ではありません。信用売り残が多いと、踏み上げを狙った買い仕掛けが入ることがよくあるからです。
アイフルの場合、上昇初期の10月12日時点では、信用買い残2,617万株に対し売り残220万株、信用倍率(信用買い残÷信用売り残)は11.89倍ありました。しかし株価が大きく上昇したあとの12月7日時点では、信用買い残4,208万株に対し売り残2,965万株、信用倍率は1.42倍まで下がり、買い残と売り残が拮抗してきていることが分かります。
このように、株価上昇とともに信用売り残も増加している場合は特に要注意です。
空売り時に気をつけるべきこと(2) 信用取引規制
アイフル株は今のところ特段の信用取引規制はありませんが、株価が短期間に急速に上昇した場合などは、過熱した状態を落ち着かせるために、信用取引に対して何らかの規制が入ることがあります。例えば新規空売りの停止、信用買いの現引きの停止、信用取引の新規売買(買い、売りとも)の停止、必要な保証金の増額などです。
この中で特に気をつけなければいけないのが「新規空売りの停止措置」です。
空売りを仕掛ける個人投資家の中には、「いずれ大きく下がるだろう」という思惑から、株価が上昇したら追加で新規の空売りを行って平均空売り単価を上昇させる、ナンピン買いならぬ「ナンピン空売り」を行って当座をしのごうとする人がいます。
ところが、そんな時に「新規空売りの停止措置」が実施されてしまうと、株価がさらに上昇しても「ナンピン空売り」ができないため、株価上昇で含み損が増える一方になりかねません。
さらに、信用売り残が多い状態でこの規制がかかると、空売りをしている投資家が危険を感じて買い戻しを急ぐとともに、踏み上げ狙いの買い仕掛けも相俟って、株価が急上昇することもあります。
短期間で急騰した銘柄は確かにその後大きく下落することも多いため、空売りを仕掛けたくなる気持ちも分かりますが、信用取引規制のリスクを考えるとあまりお勧めできるものではありません。
大きく利益を上げることが可能な反面、上手に使いこなさないと思わぬ損失を被ることもある信用取引。本コラムでは、正しく活用するための注意点やポイントなどを今後も発信していく予定です。
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