実はとっても奥が深い指標「PER」

今回は、バリエーション指標(株価が割安か割高かを判断するための指標)のうち最も代表的なPERについて、基本的な意味や上手な使い方を解説したいと思います。

PERという指標は大変ポピュラーなものであるにもかかわらず、実はとても奥が深いものです。そのため、PERを投資判断の基準として実際に投資してみても、うまくいかないことが少なくありません。

そこで今回のコラムでは、PERで失敗しないためのコツも合わせてご紹介したいと思います。

PERの求め方

PER(ピーイーアール)は、日本語では「株価収益率」とも呼ばれ、株価が予想1株当たり当期純利益の何倍の水準まで買われているかを表すものです。

PERは以下の式で計算することができます。

PER (単位:倍) = 株価 ÷ (予想) 1株当たり当期純利益

例えば、株価800円、当期の予想1株当たり当期純利益が80円のA社であれば、PERは 800円÷80円=10倍、と計算されます。

一般に、PERの適正値は15倍~20倍程度、これより低ければ低いほど株価が割安で、逆に高ければ高いほど株価は割高、とされます。

「PER10倍」の意味するものは

PERを使う前に、PERが示す数値がいったい何を意味するのか、理解しておく必要があります。

上で計算例として挙げた「株価800円、予想1株当たり当期純利益80円、PER10倍」のA社のケースで考えてみましょう。A社は毎年1株当たり20円の配当金を出しているとします。

株式会社は株主が所有するものです。そして、収益から費用や税金を差し引いた最終的な利益である「当期純利益」は全て株主のものです。

A社のケースでは、この当期純利益80円のうち20円は配当金として実際に株主の手元に入り、残りの60円は利益剰余金として企業に蓄積され、純資産の増加要因となります。純資産が増加すれば、当然1株当たり純資産も増加しますので、ストック(貸借対照表)の面からみた企業価値は上がります。

上記のPER10倍というのは、仮に当期の予想1株当たり当期純利益80円の水準が今後も続けば、配当金(20円×10年=200円)や1株当たり純資産の増加(60円×10年=600円)により、投資した800円を10年間で回収することができる、という意味です。

つまりPERは、「その企業に投資した資金を回収するために要する年数」のことなのです。

同じお金を投資するのであれば、回収するまでの期間が短い方が有利に決まっています。ですからPERが低い方が株価が割安、高ければ株価は割高、と考えることができます。

原則は「低PERなら割安」だが…

ここまでは、PERの基本的な意味、いわば教科書的な説明なのですが、いざ実践となると「それならPERが低い銘柄を買えばよいのね」とはいかないのが株式投資の難しく、そして面白いところです。

低PER=割安、高PER=割高と単純に判定できない最大の理由は、PERの計算式をよくみると分かります。計算式の分母の「予想1株当たり当期純利益」は、当期の予想値を使います。つまり、PERは、「当期予想と同じ水準の1株当たり当期純利益が今後もずっと続いた場合」という前提のもとの数値なのです。

ところが実際は5年も10年も当期純利益が同水準という企業はごく少数です。景気や為替、商品市況などで業績が大きく変動するような業種(代表的なものに商社)は、将来の業績の不確実性からPERは慢性的に低くなりがちです。PERが1ケタ台と表面的には割安に思えても、そこから株価がさらに半値以下になることもあるのです。

一方、増収増益が続き、今後も利益の増加が大いに期待できるような成長性の高い企業であれば、3年後、5年後の1株当たり当期純利益は当期より大きく増加しているでしょうから、当期の予想純利益で計算したPERが30倍、40倍というように多少高くなろうとも、まだまだ割安と評価され、株価が上昇を続けることも珍しくありません。

株式投資の実践でPERをどのように活用していけばよいかについては、別の回にてご説明したいと思います。