バリュエーション指標では割安を示唆している日本株だが…

株式投資における代表的なバリュエーション指標として「PER」「PBR」「配当利回り」の3つが挙げられます。

この3つの指標を使えば、現状の株価が割安かどうか判断することができます。

しかし株価が長期間低迷する中、明らかに株価が割安な水準にまで下がっていても一向に株価が反発せず、逆にずるずると下がり続けてしまう、といった現象が多くみられます。

そこで今回は、株価調整局面において3つのバリュエーション指標をどのように活用していけばよいのかを考えてみたいと思います。

各バリュエーション指標の意味

PERやPBRの基本的な使い方や注意点は別の回にてご説明することとします(配当利回りについては第141回コラムをご覧ください)が、3つの指標の意味を簡単に表すと次の通りです。

PER
(株価÷1株当たり予想純利益)
株価が当期の予想1株当たり純利益の何倍であるかを表す。この数値が小さいほど株価が割安とされる。
PBR
(株価÷1株当たり純資産)
株価が1株当たり純資産の何倍であるかを表す。この数値が小さいほど株価が割安とされる。
配当利回り
(1株当たり予想配当金÷株価)
当期の予想1株当たり配当金が株価に対して何%であるかを表す。この数値が大きいほど株価が割安とされる。

筆者の感覚では、さすがにこの株価は割安と感じる水準はPERなら10倍以下、PBRなら0.5倍以下、配当利回りなら4%以上です。

ところが、今はPERが5倍以下、PBRが0.3倍以下という銘柄がゴロゴロしています。配当利回りも、5%台、6%台といった銘柄が出現しています。

割安な株価の是正は全体相場の上昇が不可欠

2003年から2005年にかけての日本株上昇相場では、明らかに割安に放置されていた銘柄の水準訂正が起こりました。その間の景気回復による業績の改善も相俟って、PBR0.2倍だった銘柄がPBR1倍になったり、PER2倍だった銘柄がPER10倍になるなど、株価が割安だったほぼ全ての銘柄の株価が大きく上昇しました。株価が安値から5倍、10倍に上昇するのは当たり前、新興市場銘柄に至っては50倍、100倍の上昇をみせるものもありました。

しかし、この本格的な株価上昇を見せる前は、いくら割安株といえども何年も株価は低迷していたのです。ちょうど今と同じような感じでしょうか。

割安株の水準是正には、どうしても全体相場の上昇が不可欠です。今のように買い手不在の相場では、いくら割安株であっても株価を買い上げていくような新規の投資資金が入ってこないためどうしても上昇できないのです。

来るべきチャンスに備え割安株のピックアップと定期的なウォッチを

株価が割安だからただちに株価が上昇するわけではありません。逆に需給関係のよくないときは、割安な水準からさらに株価が下がってしまうこともよくあります。特に、現在のように買い手不在の中では、割安・割高関係なく保有株自体を売らなければならない投資家の存在(今でいえば公的年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の売り)が大きな株価下落圧力となってしまいます。

よって、PER、PBR、配当利回りで割安な銘柄を見つけても、飛びついて買うのではなく、株価の動きをよく観察し、少なくとも日足チャートベースで株価が上昇トレンドにあることを確認できた段階で新規買いするとよいでしょう。

ちなみに、GPIFが株をあまり保有していないと思われる小型株や新興市場銘柄の中には、すでに株価が上昇に転じ、割安是正の動きをみせはじめている銘柄も少なくありません。

筆者はPER、PBR、配当利回りなどから株価が明らかに割安と思われる銘柄を100銘柄程度ピックアップし、毎日株価の動きをウォッチしています。皆さんも、やがて来るチャンスに備えて準備だけは怠らないようにしておきましょう。