株価下落終盤は「投げ売り」に要注意

日本株の下落が止まりません。日経平均株価の値動きは、ここ数カ月はユーロ・円の為替相場の値動きとほぼぴったりと一致しており、ギリシャ問題うんぬんというよりもまずは円高・ユーロ安が止まらないことにはどうにもならないようです。

個別銘柄に目を向けると、増収増益など業績が好調な銘柄も決して少なくないのですが、ここまで相場の地合いが悪いとたとえ好業績銘柄であっても連れ安となってしまっています。

さて、株価の下落が終盤に差し掛かってきたときに気をつけないといけないことがあります。それは信用取引の「投げ売り」です。

「投げ売り」発生のメカニズムとは

信用取引は、証券会社に担保(現金や現物株)を差し入れることで、担保評価額の3倍程度の株式取引ができる制度です。例えば100万円の担保で300万円の取引ができるわけですが、担保の100万円を飛び出した200万円の部分は証券会社から借金しているのと同じことです。

株価が下落を続けているとき、もし現物株として保有している株なら、(本当は好ましいことではありませんが)塩漬け覚悟で株価下落を我慢して持ち続けることもできます。

しかし、信用取引で買い建てした場合(以後「信用買い」)、株価の下落に伴い含み損が拡大すると、担保が不足し、追加で担保を証券会社に差し入れなければならなくなります(これを「追い証」とよびます)。

期日までに追加担保を差し入れることができなければ信用買いが強制的に決済されてしまいます。また、追い証の発生を避けるために、投資家自身が損失覚悟で信用買いの決済売りを行う動きも強まります。

こうした追い証に係る強制決済や投資家自身の信用買い手仕舞いの動きが、株価下落が進むことで次第に増加し、やがてはそれが「投げ売り」の形となって株価下落に拍車をかけるのです。

「投げ売り」が終わると株価は反発へ

ただし、信用買いの「投げ売り」がひと段落すると、株価下落により売らざるを得ない投資家がいなくなるため、その後株価は反発しやすくなります。

したがって、今の相場環境で筆者が望ましいと考える戦略は、信用買いの投げ売りが一巡するのを待ってから新規買いするということです。

信用買いの整理(=「投げ売り」)が進んでいるかを判断するために注目したいのが「信用買い残高」です。

信用買いの投げ売りが多く出れば、信用買い残高は大きく減少するはずです。そこで、株価の大幅下落に加え、信用買い残高が大幅に減っていれば、株価反発局面近し、ととらえます。

実は、5月16日前後にかけて個別銘柄で急落するものが増加したため、信用取引の整理が進んだものと期待したのですが、その後発表された信用買い残高をみると、ほとんど減少していませんでした。

案の定、5月16日以降も株価は反発せず、ダラダラと下げ続けてしまっています。ここまで株価下落が深くなると、信用取引の投げ売りが出尽くさないと、一時的な反発はともかく本格的な株価上昇は難しいと思っています。

自分自身が「投げ売り」しないようにするためには

個人投資家としては、自らが「投げ売り」せざるを得なくなる立場におかれないようにすることが重要です。

「投げ売り」が生じる状況は株価下落局面の終盤であり、個別銘柄の株価チャートを見ると下降トレンドに転換してからかなり時間が経過し、株価も大きく下落した後です。

このことから、個別銘柄の株価が下降トレンドに転じたらできるだけ早く手仕舞い売りや損切りを実行することが何よりも大事です。

どんなに好業績の銘柄であっても、どんなに株価が割安な銘柄であっても、信用買いでは絶対に株価下落による含み損拡大を我慢してはなりません。自分自身が我慢に耐えられなくなって投げ売りせざるを得なくなる状況になるまで株価下落は止まらないと考えてください。

いくら今後の株価上昇が見込まれる銘柄であっても、株価が下降トレンドに転じたら即座に売却すること、これが信用買いを行う場合の鉄則です。

信用取引は6カ月の短期勝負ですから、トレンドの判断は日足チャートで行うのがよいでしょう。損切りに自信のない方は、信用取引は避けるべきです。