日本株・長期上昇相場への入り口か?

日本株の上昇が続いています。前週末3月2日の日経平均株価の終値は9,777円03銭、と、10,000円の節目まであとわずかのところまで来ています。1月16日の安値8,352円23銭から2月29日の高値9,866円41銭までの上昇率は18.1%に達しました。個別銘柄に目を向けても、短期(日足)のみならず中期(週足)、長期(月足)でみて上昇トレンド入りしている銘柄がかなり増加しています。

皆様は今回の日本株上昇にうまく乗ることができたでしょうか。筆者の感覚では、今回の上昇は非常に素直な動きで、上昇トレンド初期の段階から買い出動することも比較的容易だったのではないかと思っています。

悪いニュースに耳を傾けていた個人投資家は手を出せなかった

ただし、それは「株価」を投資判断の根拠としている投資家に限ります。「ニュース」や「専門家の相場見通し」を参考にしていた投資家は、おそらく今回の上昇にうまく乗ることはできなかったのではないでしょうか。

それも無理はありません。日本株上昇の初期段階では、テレビや新聞、インターネットのニュースで毎日のようにギリシャ危機の問題について報道されていました。アナリストをはじめとした資産運用の専門家も、ギリシャ問題はやがてはヨーロッパ全土のみならず世界中に悪影響を及ぼし、世界経済に深刻なダメージを与えるとコメントしていました。

そうした専門家の発言に耳を傾けていた個人投資家としては、そんな恐ろしい話を聞いた後ではとても株式投資に新たな資金を振り向ける気は起こらなかったでしょう。

しかし、相場というのは実に意地悪なもので、多くの投資家がギリシャ問題を恐れていた中で、日本株のみならず世界中の株価は着実に上昇していたのです。

筆者なら「ニュース」より「株価」を重視

このように、ニュースでは悪材料が飛び交い、とても新たに株を買うような雰囲気でないにもかかわらず、株価は上昇を続けている……こんなとき、筆者なら「悪材料満載のニュース」より「株価」を重視して投資判断をします。

筆者は「株価の移動平均線超え+移動平均線上向き」が上昇トレンド入りのサインであることを本コラムでも何度かご紹介してきました。そして、株価が底打ちする際に最も早く出現するサインである「株価の25日移動平均線超え+25日移動平均線上向き」が1月下旬以降個別銘柄で次々と出現していたのです。

このサインは短期的なトレンド転換の際に現れるため「ダマシ」も多いのですが、とりあえず買ってみる価値が大いにあるタイミングです。

その後多くの銘柄では中期的な上昇トレンドへの転換のサインである「株価の13週移動平均線超え+13週移動平均線上向き」も果たしました。日経平均株価もこれを達成しています。中期的上昇トレンド入りのサインすら見送っていては、いったいいつ株を買うのかということになってしまいます。

さらに日本株上昇の大きな条件の1つである「為替相場の円安」も進みました。これだけ円安が進んでいるのに日本株に弱気でいる必要はないのです。

株価上昇の初期段階は、悪材料も相当出回っていることが多く、多くの投資家が株価上昇に懐疑的である中を、株価はスルスルと上昇を続けていくものです。

明らかに誰の目から見ても株価上昇が期待できる局面まで待っていては、その頃には株価は安値から何倍にも上昇してしまっているでしょう。下手をすると、そこが株価の天井、という可能性も否定できないのです。

弱気発言をした専門家はなかなか軌道修正ができない

今回の日本株上昇に懐疑的な専門家は、「ギリシャ問題は全く解決していない」とか「PERなどのバリエーションからみて明らかに割高な水準まで上昇している」などとして、弱気の旗を下ろすことができないままでいるようです。

専門家は、自らの発言に価値を見出します。従って、簡単に前言撤回をして、それまでの主張を180度変えることがなかなかできないのです。

さらに、今回の日本株上昇局面でいえば、確かにギリシャ問題は根本的な解決には至っていません。つまり、ギリシャ問題をもって株価上昇に懐疑的な専門家にとっては、今後の株価見通しに弱気となる状況は何も変わっておらず、発言を翻すこと自体ができないのでしょう。

しかし、資産運用では、昨日と今日とで投資スタンスを180度変えることができる投資家こそが生き残ります。「この株価上昇はおかしい」「こんなはずはない」「これはバブルだ」と意固地になっていると、歴史的な株価上昇に乗り遅れてしまいますし、売りポジションを持っている場合には致命的な損失を抱えることにもなりかねません。個別銘柄や日経平均株価が上昇トレンド入りしたならば、それに素直に従うべき、というのが筆者の主張です。

例え「バブル」でも上昇トレンドならば乗るべき

株価上昇に懐疑的な専門家の多くは、今の世界的な株価上昇を「バブル」と呼びます。確かに今の株価上昇は、世界的な金融緩和によるカネ余りが大きな要因であることは確かです。

でも筆者に言わせれば、バブルでも何でも、株価が上昇するなら、それに乗らない手はありません。

もし、このバブルが何年も続き、日経平均株価が2倍、3倍、そして個別銘柄の株価が5倍、10倍になったとしたら、それに乗れた投資家と乗れなかった投資家とで、運用成績には雲泥の差がつくことでしょう。

バブル相場が怖いのは、最終的には株価が大きく下がるからですが、そんなものは損切りさえしっかりと実行すれば何も怖くないのです。

そして、2008年10月の世界的な株価暴落や、2011年3月の大震災のような突発的な大事件・大事故への備えとして、プットオプションをお守り代わりに少量買っておけばさらに万全です。

株式投資で利益を上げるためには、多少のリスクは取らなければなりません。でも、多くの個別銘柄や日経平均株価が少なくとも中期的な上昇トレンドにあり、長期的な上昇トレンド入りも見えてきた今、そのリスクを取らないで一体いつ取るの? と思います。

今回の上昇相場の初動に乗り遅れてしまった投資家はどうすればよい?

とはいえ、今回の上昇相場の初動に乗り遅れてしまったという個人投資家の方も多いと思います。でもご安心ください。上昇相場にも必ず押し目があります。日経平均株価に先駆けて上昇した「先行銘柄」には当面の高値をつけてからすでに何週間も調整に入っている銘柄もあり、その中には高値から10%~20%程度の調整をしている銘柄も結構あります。

このように、株価が当面の高値をつけた後の押し目を積極的に狙っていけばよいのです。

また、当面の高値をつけた後の調整局面では、短期的に「25日移動平均線下向き+株価が25日移動平均線の下」となり下降トレンド入りしている銘柄も相当数出てきます。そんなときは、再び短期的なトレンドが上昇トレンドに転じたことを確認してから新規買いすればより安心と思います。

そして、ややリスクは高まりますが「直近高値抜け」に飛び乗るのも1つです。当面の高値をつけた後一旦1カ月前後の調整場面を迎え、その後先の高値を抜けてくるようなことになれば、中長期的な本格上昇に入った可能性がより高くなります。

「相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育つ」とよく言われます。まだまだ多くの専門家や投資家がこの株価上昇を懐疑的な目で見ていることが、筆者にとっては逆にチャンスと思えてなりません。

専門家がどんなに弱気な発言をしようとも、株価のトレンドに素直に従った投資行動を心がけてみてはいかがでしょうか。