含み損の早期処理の重要性…会社も個人投資家も同じ
オリンパス問題が株式市場を震撼させています。各種報道によれば、オリンパスはバブル期の資産運用の失敗による損失を20年間隠し続けていましたが、その損失は20年という長い年月を経ても消えることなく、逆に増幅してしまいました。
この事実を私たち個人投資家も重く受け止めなければなりません。持ち株の株価が下がって含み損の状況となっても、それを20年間持ち続けたところで一向に含み損が解消しないことも十分にありえる、これが現実です。
オリンパスが損失を早期に処理していればこのような問題は起きなかったのと同様に、個人投資家も含み損が拡大する前に損切りしていれば塩漬け株で悩まずに済むのです。
個人投資家はオリンパス株への投資を事前に回避できたか?
ところで、個人投資家はオリンパスが多額の損失隠しを行っていることを見抜き、投資対象から外すことは可能だったのでしょうか。
最新の会社四季報でオリンパス株の投資主体別持ち株比率をみると、外国人が27.6%、投資信託が6.2%となっています。情報量・知識量の豊富な外国人投資家や投資信託でさえ、オリンパス株を大量に保有していたという事実からすれば、オリンパスがこうした事態に陥ることを個人投資家が察知することはできなかったといえます。
不幸にも保有銘柄について今回のオリンパスのような状況となる可能性は今後も十分にあると考えられます。そこで、保有銘柄が不祥事などで大きく下落する可能性を考慮した投資手法を心がける必要があります。
最も重要なことは、1つの銘柄に資金を集中させず、できるだけ複数の銘柄に資金を分散させることです。個人投資家が多数の銘柄を管理するのは確かに大変ですが、突然の不祥事発覚で株価がいつ急落するか分からない中では、資金を分散させないと命取りになりかねません。
相場環境により多少変わりますが、筆者は現時点であれば1銘柄当たりの資金配分を投資資金全体の3%程度となるようにしています。どんなに強気の銘柄であっても、1銘柄当たり10%が限度です。そうしておけば、今回のオリンパスのように急落して損切りなど適切な対処ができなかったとしても、最大で損失を投資資金全体の10%に抑えることができます。10%の損失であれば十分に挽回可能です。
もし筆者がオリンパス株を保有していたらどう行動するか
オリンパス株が最初に大きく反応したのは、外国人社長の突然の解任が発表された10月14日です。この日、株価は大きく下落し、日足チャートで25日移動平均線を明確に割り込みました。
また、週足チャートでみても、13週移動平均線を明確に割り込んでいます。ただ、1年以上守られてきた2,000円近辺のサポートラインは割りこんでおらず、今年9月につけた直近安値2,017円をも割り込んでいません。
日足と週足のいずれで判断するかは個々に決めればよいと思いますが、筆者であれば、オリンパス株の取得単価が2,000円を超え、10月14日の急落の時点で含み損となっていれば日足チャートで、取得単価が2,000円より相当低いのであれば週足チャートで判断します。
もし、日足チャートで判断するなら、すでに株価が25日移動平均線を大きく割り込んでいるため、週明けの10月17日の寄り付きで成行売り注文を出します。週足チャートであれば、10月17日の下落でそれまでのサポートラインを明確に割り込んだことが分かるため、翌10月18日の寄り付きで成行売りとします。もしくは10月14日に13週移動平均線を割り込んでいることを重視して10月17日の寄り付き成行売りという選択も可能です。
10月17日の寄り付きで売れば1,795円で、10月18日の寄り付きでも1,562円で売ることができます。11月11日の終値が460円であることを考えれば、十分に高い株価で売れたといってよいでしょう。
売った後反発するかもという思いから売却に踏み切れないという方も多いでしょうが、大失敗したくなければ、自身の感情は抑えて半ば機械的に行動するべきというのが筆者の考えです。もし、売った後反発したなら、再び上昇トレンドに復帰したのを確認して買い直せばよいだけです。
今回はオリンパスという個別企業だけの問題ですから、オリンパス株に集中投資していない限り、損切りできなくとも致命傷にはならないでしょう。しかし、2008年10月の大暴落時のように、マーケット全体が急落するときは多くの銘柄が今回のオリンパス株のような値動きになることもあります。そんなときは、大損を防ぐためにどうしても損切りが必要になるのです。
「上場廃止」=「経営破たん」ではない点には注意
11月10日より、オリンパス株は四半期報告書を法定提出期限までに提出できる見込みがないとの理由で「監理銘柄」に指定されています。監理銘柄とは、簡単にいえば上場廃止となる恐れのある銘柄を意味します。
ただし、ここで注意したいのは、オリンパス株が仮に上場廃止になったからといって、オリンパスという会社がなくなったり、オリンパス株が紙切れになるのではないという点です。
上場廃止の多くは、会社更生法適用申請、民事再生法適用申請、破産などいわゆる「経営破たん」を理由とするものです。この場合、持ち株は紙切れ(無価値)になってしまうのが通例です。しかし、上場廃止となる要因は他にもあります。今回のオリンパスの場合、四半期報告書を12月14日までに提出しなければ上場廃止となります。
参考になるのは、有価証券報告書への虚偽記載により上場廃止となった西武鉄道のケースです。西武鉄道株は上場廃止になったものの、会社自体は今も存続しています。
つまり、経営破たん以外の理由で上場廃止となった場合、証券取引所でいつでも売買できるという流動性の面からは大きなマイナスであるものの、株式が無価値になるわけではないので、ある程度の株価で下げ止まるであろうことが予想されます。西武鉄道株も、証券取引所での取引最終日の株価は485円でした。いくらで下げ止まるかを正確に予想するのは難しいですが、例えば1つの目安として1株当たり純資産の額が挙げられます。
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