最近、株式分割を実施する企業をよくみかけます。定期的に株価をウォッチしている銘柄が株式分割を行うことを知らずにいると、ある日突然株価が暴落したように見えてしまい、一瞬びっくりしたりするものです。

今回のコラムは、この株式分割について、株価に対してどのような影響があるのか、そして私たち個人投資家にとってプラスになる点は何か、といった観点から考えてみたいと思います。

株式分割はまさに株式を「細かく分割」すること

株式分割とはその名のとおり、株式を細かく分割することをいいます。例えば「1対2の株式分割」ならば1株を2株に分割することを意味します。「1対1.2の株式分割」であれば1株を1.2株に分割する意味です。

理論的には、株式分割をすると、分割の割合に応じて株価が下がります。「1対2の株式分割」なら株価は分割前の2分の1、「1対100の株式分割」なら株価は100分の1になります。

なぜ株価が下がるのか、それは「株価×株式数=企業価値(時価総額)」ととらえると理解できます。

株式分割は単に株式を細かく分けるだけなので企業価値には何ら影響を与えません。したがって、企業価値を表す「株価×株式数」の金額は株式分割の前後で不変です。その一方で、株式分割により株式数が増えますから、株式分割の前後で「株価×株式数」が不変ならば、株価が下がらざるをえないのです。

株式分割で株価は下がるが損をするわけではない

しかし、株式分割によって株価が下がったからと言って、株主が損をするわけではありませんので安心してください。

例えば1株を2株にする株式分割の場合、株価は2分の1に下がりますが、一方で株主の持ち株は2倍に増えます。したがって、「株価×自身の持ち株数」でとらえれば、株式分割の前後でその金額は変わりません。1対2の株式分割前の株価が1,000円、持ち株が1,000株なら株価×自身の持ち株数は1,000×1,000=100万円、株式分割後は株価が500円になるものの、持ち株が2,000株に増えるので株価×自身の持ち株数は500×2,000=100万円でどちらも変わらないことが分かります。

株式分割にはプラスの効果も期待

むしろ、株式分割は株価にとってプラスの効果も十分に期待できます。

最たるものが流動性の向上、つまり購入に必要な資金の低下により投資家が買いやすくなり、それが新規の買い需要を誘発するという点です。例えば株価6,000円、売買単位100株の銘柄であれば、購入には最低でも6,000×100=60万円が必要になります。もしこの銘柄が1株を3株にする株式分割を行えば、株価は6,000円の3分の1の2,000円に下がりますから、2,000×100=20万円から購入可能になります。60万円必要となると手を出しづらかった投資家も、20万円で買えるとなれば新たに買ってみよう、という気持ちになることで、潜在的な買い需要を掘り起こすことにつながるのです。

また、株式分割を何度も行っている銘柄は「成長株」であることが多い点も見逃せません。株式分割を行えば株価は下がるのですから、株価が上昇するような高業績・高成長の銘柄でないと株式分割を繰り返し実行することはできません。

もちろん株式分割自体が企業価値を向上することはない点は上でご説明したとおりですが、高業績・高成長にプラスして株式分割による流動性向上効果が加わり、これが株価のさらなる押し上げ要因になっていることと思われます。

実際、理論的には株価に中立なはずの株式分割を発表するだけで、株価が大きく上昇するケースをよく見かけます。企業実態は株式分割によって何ら変わることはなくとも、需給面によるプラス効果を投資家もよく認識している表れといえるでしょう。

株式分割と正反対の「株式併合」もある

なお、株式分割とは逆の「株式併合」というものもあります。これは複数個の株式を1個にまとめることを表します。「2対1の株式併合」なら2株を1株にする併合、「10対1の株式併合」なら10株を1株にする併合を意味します。

この「株式併合」が実施されるのは、主に業績が長期間低迷しているような銘柄です。業績の低迷が続くと、株価も大きく下がってしまいます。株価が低いと、どうしても心象も悪くなってしまいがちです。そこで、株式併合を実施して、株価の引き上げを図るのです。

2株を1株にする株式併合を行えば株価は併合前の2倍、10株を1株にする株式併合なら株価は10倍に上昇します。1株50円の銘柄が10株を1株にする株式併合を行えば、株価は500円になります。株価が50円と500円とでは、投資家が受ける印象も大きく異なるはずです。

持ち株が株式併合される時に気になるのが、例えば最低売買単位1,000株の銘柄を1,000株保有していたところ、その銘柄が10株を1株にする株式併合を実行して持ち株が100株に減ってしまったような場合です。こうなると最低売買単位未満となり、取引所で売買できなくなってしまうのではないか、と心配になってしまいますが、基本的には株式併合とともに、売買単位のくくり直しもされます。最低売買単位1,000株の銘柄が10株を1株にする株式併合をすれば、おそらく最低売買単位は100株に変更されるはずです。

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