多数の個人投資家が被害を受けた安愚楽牧場の破たん

「和牛オーナー制度」で知名度が高く、約7万人のオーナーを抱える安愚楽牧場が経営破たんしました。オーナーの債権総額は4,000億円を超え、オーナーの中には退職金や老後の生活資金の大部分を出資していた人も少なくなかったようです。

少し前にあった「円天」のときもそうでしたが、こうした投資に多額の財産を投じてしまった方が多数いらっしゃることに筆者は心が痛み、悲しい気持ちになってしまいます。

そこで今回は、今後そのような人が1人でも少なくなることを願い、特に投資初心者、初級者の方を対象に、投資で大失敗しないための「投資の鉄則」を考えていきたいと思います。

鉄則 1 1つの投資先に資金を集中させないこと

安愚楽牧場の破たんで致命的なダメージを負ってしまったのは、自らの資産の大部分を安愚楽牧場へ出資していた人です。したがって、逆に考えれば、例えば資産全体の5%を安愚楽牧場へ出資していた人なら、最悪でも全資産の5%の損失で収まることになります。

世の中何が起こるか分かりません。1つの投資先・投資商品に資金を集中させた場合、その投資先が破たんしたり投資商品が大きく値下がりしてしまえば、下手をすれば再起不能なほどの損失を被ってしまうことがあるのです。投資の際にはこの点を何が何でも避けなければなりません。その投資にどんなに自信があっても、そしてどんなに魅力的な投資商品でも、1つの投資先に資金を集中させないこと、これが非常に重要です。

筆者であれば、もし安愚楽牧場のような投資先に投資するのであれば投資可能資金全体の5%、どんなに自信があっても10%にとどめます。

この考え方は、日本株の個別銘柄であっても同様です。もし特定の銘柄に資金のほとんどをつぎ込んでしまうと、その銘柄が経営破たんした場合、投資資金のほとんどを失うことになります。ちなみに筆者は、個別銘柄1銘柄当たりの投資金額は、投資可能資金全体の3%程度を上限としています。

鉄則 2 高い利回りには常に高リスクありと認識すること

安愚楽牧場への投資の最大の魅力といえば、高い配当利回りでした。しかし、個人投資家としての経験が多少なりともある方であれば、「高利回り=リスクも高い」という原則は分かるはずです。

銀行預金の利息が低いのは、他の投資先よりリスクが低いからです。日本国債の10年物長期金利(現在は年利1%程度)より格段に高い利回り(3%以上)を提示している投資商品は、それに応じた高いリスクも合わせ持っていると思って間違いありません。

日本株の個別銘柄でも高い配当利回りの銘柄に飛びつくのは禁物です。配当利回りが1~2%程度の銘柄が大部分のなか、5%を超える銘柄も散見されますが、こうした銘柄を見つけたら、「配当利回りが高くお買い得」と喜ぶ前に、なぜ配当利回りが高く放置されているのかを考えてみてください。真っ先に考えられるのが将来の業績如何で配当金が減額されるリスクが株価に反映されているということです。配当利回りが高い銘柄は、将来業績悪化により配当が減額されたり、株価が下落するリスクが高いことに留意して投資するようにしてください。

超低金利が続く中、個人投資家は少しでも利回りの高いものを、と追い求めてしまいがちですが、「高利回り=高リスク」ということを肝に銘じて投資先を選定するようにしましょう。

鉄則 3 流動性(換金性)の低い投資先への投資はできる限り控えること

投資に対するリスクは、投資先から資金を引き揚げてキャッシュにすることで回避することができます。そのため、いつでも好きな時に売って換金することができるかどうかが投資先を選定する際には非常に重要になってきます。その点、上場企業への株式投資は証券取引所が開いていればいつでも売却できるため有利です。

その一方で、中途解約できない投資商品も少なくありませんから要注意です。中途解約できなければ、投資先の業績や経営状況が芳しくないことが分かっても、換金できないのですから、満期が来るまで破たんしないことをただ祈るだけです。そんな神頼みの投資は失敗のもとです。

また、金融機関で販売されている仕組み預金と呼ばれる投資商品も、通常預金より高利率であることが多いですが、中途解約ができないものが大部分です。

上場企業への株式投資においても、特に初心者・初級者の方は売買高が少なく流動性が低い銘柄はできるだけ避けておいた方が安全です。いざ売りたいときに値段がつかない可能性もあるからです。

流動性の低い投資先への投資は、全体資金の20%程度にとどめておくのが無難でしょう。そして、何かあったらすぐに資金を引き揚げることができるように、企業業績をはじめとして投資先の情報には常にアンテナを張っておくことが望まれます。