突然の事態に備えるための「守り」の投資

前回のコラムでは、「債券安」「円安」「株安」のトリプル安が日本破たんの予兆となることをご説明しました。しかし今のご時世、いつ何が起こるか分かりません。何の前触れもなく突然日本破たん、ということも絶対にないとはいえません。そこで今回は、突然の「日本破たん」に備えた投資について考えてみたいと思います。 

ただし、まず、最初に申し上げておきたいのは、現段階で日本が100%破たんすることを前提として投資を行うことそれはそれでリスクが高いという点です。なぜなら、通常の一般的な投資は資産を「増やす」のが目的であるのに対して、日本破たんを前提とした投資は資産を「守る」のが目的だからです。

「守り」の投資は平穏無事である限り資産目減りの可能性も

もし、資産を日本円のみで持っていれば、日本が破たんした場合資産がゼロに近くなってしまうかもしれません。でも、資産を例えば日本円、米ドル、ユーロの3通貨に3等分しておけば、日本が万が一破たんしても3分の2は残ります。

このように、万が一のことが起きたとき、「資産がゼロにならなくて済んだ」「資産の3分の2は残せて良かった」とするのが「守り」の投資です。ですから、万が一のことが起こらない限り、資産が目減りしてしまうこともある点には注意が必要です。
事実、2006~2007年ごろ、財政問題をはじめとした日本の先行きを心配して資産の大部分を外貨建商品にシフトさせた投資家は、その後の円高によって資産を大きく減らしてしまうことになりました。資産を守るのが目的であればこうなることは仕方ないのですが、資産を増やすのが目的であれば投資の失敗だったと言わざるをえません。

したがって、これ以上お金を増やす必要はない、むしろ資産がゼロになることを避けたいというような資産家でなければ、日本破たんを過度に心配するよりも、現時点では万が一に備える投資は全資金の一部にとどめておいた方が無難です。その上で、前回のコラムで述べたような日本破たんの兆候が明確に表れた段階で「守り」の投資に回す資金の割合を増やしていけばよいでしょう。

必要最小限の「守り」はゴールドと外貨で

このように、突然の日本破たんという万が一の事態に備えるならば、まずは必要最小限の「守り」の投資を行うことを筆者としては勧めます。具体的には、金(ゴールド)と外貨への投資です。ゴールドや外貨を保有していれば、日本破たんに伴う強烈な円安によって日本円の価値が急激に低下しても、その目減りを防いでくれるからです。

突発的な事象に備えるわけですから、まずは価格に関係なく必要最小限は投資しておかねばなりません。その上で、価格が大きく下がったならばその時に買い増しを検討すればよいと思います。

例えば、金(ゴールド)は、現在史上最高値圏にあり、いつ大幅な下落に転じてもおかしくありませんが、万が一に備えるのであれば、今後の値下がりによる損失も覚悟の上、現時点の高い価格であっても必要最低限の数量は買わざるを得ないでしょう。

一方、外貨については、軒並み円高・外貨安となっているため、まとまった数量を投資しやすい環境にあります。資産を守るという側面だけではなく、今後の円安により資産を増やすという側面からも妙味があります。ただし、現段階で為替相場のチャートをみると、中長期的な円高トレンドが継続している状態であり、今後さらなる円高となる可能性も大いにある点には注意すべきです。

国際分散投資で守りつつ増やすことは可能か?

リスクをできる限り分散しつつ資産の増大を目指す、つまり「守りつつ増やす」方法として考えられるのが「国際分散投資」という手法です。これは、国内外の株式、債券、通貨等に投資資金を分散させ、長期的に保有する方法です。

この方法は、世界的に右肩上がりの経済発展が続く限りは有効といえますが、世界中のマーケットが同一の動きをみせることが多くなった近年は分散効果も薄れ、その有効性に疑問符がつきはじめています。

従って筆者の見解としては、「増やす」という面から見ればその効果は疑問ですが、「守る」という面から見れば効果的です。そこで万が一に備え、「守り」の観点から投資可能資金の何割かを国際分散投資に回すというのは有効だと思います。

日本破たん時に資産を守る銘柄選択のポイント

また、日本株に投資していたのに突然の日本破たん、という憂き目に遭うことも絶対にないとはいえません。そこで、万が一の時に備えた日本株の銘柄選択のポイントも考えてみたいとおもいます。

ポイントは、「日本が破たんしても生き残る企業を選ぶ」ということです。そのためには、 財政状態がよい企業(借金が少ない)、グローバル展開している国際企業(日本市場が壊滅しても海外で稼ぐことができる)、といった条件を兼ね備えた企業から選択することです。

こうした企業は日本破たんによっても倒産する危険性が少ないだけでなく、日本が破たんした後は、強烈な円安により業績の急回復が期待でき、その後の株価上昇によって資産を守ることにもつながります。通貨危機後ウォン安により急速に国際競争力を高めた韓国が好例でしょう。