買い時だけでなく売り時も同じように重要

前回のコラムでは、長期上昇相場の底値圏での買い時の見極め方をお話しました。しかし、絶好のタイミングで買うことができたとしても、買った時点ではまだ長期上昇相場入りする「可能性」の段階に過ぎません。その後実際に長期上昇相場へと発展してくれなければ、再び株価が下落してしまうことも十分考えられます。

そのため、こうなったら売却する、という撤退のタイミングもはっきりさせておく必要があります。その判断は、買いの時と同様、株価と移動平均線で行います。

売却は原則として、株価が25日移動平均線を割り込み、25日移動平均線も下向きとなった場合です。

時には株価が25日移動平均線を割り込んでも25日移動平均線は上向きのまま、ということもあります。この場合は、再び株価が上昇トレンド(株価が25日移動平均線の上方に位置し、移動平均線自体も上昇)に復帰することも少なくありませんが、念のため一旦売っておき、株価が上昇トレンドに戻ったことが確認できたら買いなおすとより安全です。

株価と移動平均線を用いた売却基準では遅すぎることも

ただし、すでに大きく上昇してから買った場合など、買いのタイミングによっては上記の売却基準(株価が25日移動平均線割込み+25日移動平均線自体下向き)を適用すると買値に対する損失率が20%、30%に達してしまうこともあります。これでは損失が大きすぎますので、売却基準に達する前であっても、買い値から10%下がったら損切りするなどの対応が必要です。

もし、前回のコラムで説明したように、株価が25日移動平均線を上抜け、25日移動平均線自体も上向きとなったベストタイミングで買っていれば、おそらく売却基準に抵触して売却した際、損失が生じることになったとしてもわずかなもので済むはずです。買った後の売却・損切りのことまで考慮すると、買いのタイミングが投資成果に大きく影響を及ぼすことが分かります。

含み益が大きければ売却基準を無視して保有を続けるべき

一方、売却基準に抵触する状況であっても、株価が買い値より大きく上に位置している(つまり含み益が大きい)ケースもあります。この場合は、長期上昇相場入りしている可能性が低くないことから、無理に売却する必要はないと考えます。

もし長期上昇相場入りして、数年間にわたって株価が大きく上昇するとしても、一直線に上昇するものではなく、日足チャートなど短期間のスパンでみると上昇、下落を繰り返すものです。

この動きに合わせて買い・売りを繰り返してもよいですが、結構大変ですし、長期上昇相場では小さな株価の変動は気にせず保有を続けた方がより多くの利益を得られることが多いものです。

そこで、そこそこの含み益がある場合は日足チャート+25日移動平均線で売却基準に該当したとしても売却せず、週足チャート+13週移動平均線でみて売却基準に該当するまでは保有を続けるのです。

日足チャートでの売却基準に達したら持ち株の一部は売却し、残りを週足チャートでの売却基準に該当するまで保有するというように、ご自身でアレンジを加えても良いでしょう。

また、持ち株が短期間で3倍、5倍と大きく上昇することもよくあります。そのときは、上昇トレンド継続中であっても、持ち株の一部だけでも利食いしておいた方がよいでしょう。株価の動きが絶好調でまだまだ上昇するように思えても、いつ天井をつけて下落に転じるか分からないからです。含み益を実現益として確定させていく作業も重要です。

売却後も再投資のチャンスを見逃さないように

さて、売却基準に抵触して売却・損切りしたとしても、そこで終わりではありません。売却基準に抵触したということは、その時点で下降トレンド入りしていることを表しますが、遅かれ早かれその後再び上昇トレンドに転じることになるからです。したがって、売却後も株価チャートをチェックして、再投資の機会を逃さないようにしておくべきです。

売却後の再投資のタイミングは、前回のコラムで申し上げた買いタイミングと同じです。つまり、再び株価が25日移動平均線を上回り、25日移動平均線が上向きとなったときが再投資のタイミングです。

週足・月足チャートを使うときの注意点

前回のコラムと同様、今回のコラムも基本的に使用するチャートは「日足チャート+25日移動平均線」として説明をしています。これを「週足チャート+13週移動平均線」や「月足チャート+12カ月移動平均線」に置き換えることもできます。

ただ、週足チャートや月足チャートは日足チャートに比べて対象期間が長い分、日々の株価の変動に対する感応度がどうしても遅くなってしまいます。日足チャートと比べると、株価がかなり下落しなければ売却基準(株価の移動平均線割れ+移動平均線下向き)に達しないことも多々あります。

そのため、どんなにベストなタイミングで買ったとしても、株価と移動平均線を用いた売却基準に達するのを待って売却すると多額の損失が生じてしまう恐れがあります。

したがって、週足チャートや月足チャートを用いる場合は、移動平均線が上向きであっても株価が移動平均線を割れた時点で即座に売却するとか、買い値からの損失率が10%に達したら損切りするなど、多額の損失を避けるような工夫をするようにしてください。

買い時、売り時の見極め方については、拙著「超実践・株価チャート使いこなし術」(日本経済新聞出版社)でも詳しく説明しています。よろしければそちらもご参考にしてください。