流動性の面で優れている株式投資

筆者が株式投資で重視するポイントの1つに「流動性」というものがあります。「流動性」とは、言い換えれば「売りたいときにいつでも売れるかどうか」ということです。

例えば所有する不動産を売ろうとすると、ある程度の期間がかかります。今日明日中に不動産を売ってすぐにお金に換えることは非常に困難です。そのため、不動産は流動性が低いといえます。

でも上場している株式であれば、証券取引所が開いている時間であればいつでも売却して換金することができますから、流動性という面では優れています。

人生何が起こるか分かりません。余裕資金を投資に回していても、急に多額のお金が必要になることだってあります。また、経済状況や相場環境の急変等により、投資資金を引き揚げてキャッシュでしばらく持っていた方が安全、という状況がやってくるかも知れません。

何かあったときのため、すぐにキャッシュに換えることができるものに投資しておくことが資産運用では大事なポイントです。売るべき時に売れず、そのために損失が拡大してしまうことは避けなければなりません。その面ではいつでも売って換金できる株式投資は安心です。

個別銘柄によって流動性が大きく異なる

とはいえ、上場している株式すべてが流動性が高いわけではありません。銘柄により流動性が高いもの・低いものさまざまです。いくら証券取引所が開いている限りいつでも売却・換金できるとはいえ、流動性が低く買い手がいない銘柄は売ることができません。数ある上場銘柄の中には、1日のうちに1回も売買が成立しないものも珍しくないのです。

例えば、現在の株価が200円の銘柄があります。流動性が高い銘柄であれば、すぐに注文を出せば200円か201円で買うことができるでしょう。しかし、流動性が低い銘柄の場合、売り注文が少ないため、220円や240円でないと買うことができないかもしれません。

逆に、資金が急に必要になったとき、現在の株価200円の銘柄を売ろうとした場合、流動性が高い銘柄ならば200円か199円で売ることができます。でも、流動性が低い銘柄は、買い注文が少ないため、180円や160円でないと売れないかもしれません。最悪の場合、買い注文が全くなく、売ること自体ができない可能性もあります。

流動性の低い銘柄が「割安」に見えるワケ

実は、流動性が低い銘柄はPERやPBR、配当利回りといった指標でみると株価が割安に放置されているものが多いです。これは、流動性が低く売買しにくいというリスクが株価に反映された結果であるといえます。

したがって、非常時であっても換金する必要のないような本当の余裕資金であれば、こうした流動性の低い銘柄に投資するのも1つの方法です。ただ、いつかは売らなければならないことを考えれば、流動性の低い銘柄への投資は投資資金の一部にとどめておいた方がよいと思います。

流動性の低い銘柄への成行注文は危険

流動性の低い銘柄に投資する際は、注文時に板(現在出ている売り注文・買い注文の状況)をよく確認するようにし、成行注文は控えるようにしましょう。

たとえば、現在の株価300円、最低価格の売り注文が330円で1,000株出ている状態で1,000株の成行買い注文を出すと、330円で約定することになります。300円近辺で買うつもりが、10%も高い価格で買うはめになってしまいます。

逆に、現在の株価300円、最高価格の買い注文が240円で1,000株出ている状態で1,000株の成行売り注文を出すと、240円で約定してしまいます。300円付近で売るつもりでいたのに、20%も低い価格で売らされてしまうことになるのです。

流動性の低い銘柄は、成行注文を出すと想定外の価格で注文が成立してしまうリスクだけでなく、買いたい価格で買えない、売りたい価格で売れない、どうしても買いたいもしくは売りたいのなら、現時点の株価より大きく離れた価格でないと売買が成立しない、最悪の場合は売買の成立すらできない、というリスクがあることに十分注意してください。

流動性の高低を判断する基準は?

筆者は流動性の低い銘柄はなるべく避けるようにしています。その際のポイントは、「自分が買いたい株数の100倍以上の売買高が毎日あるかどうか」です。もしある銘柄を1,000株買いたいと思っているならば、毎日の売買高を調べて、コンスタントに100,000株以上の売買高があるならば流動性の面では合格、としています。

一般に、東証1部の銘柄の方が2部銘柄や新興市場(ジャスダック、マザーズ)銘柄より流動性が高いです。また、誰でも知っているような有名な大企業であれば、流動性の面では心配ないといえます。

現在の日本株は、昔のように一度買って持ち続けてさえいれば利益をあげられるような簡単なものではなくなってしまいました。

そのため、必要に応じて持ち株をキャッシュに換えることが求められます。そんなとき、流動性が低く持ち株をキャッシュに換えられなかったり、時価よりはるかに低い価格でないと売ることができないと、売るべきときに然るべき価格で売れないこととなり、投資成績にも大きく響いてきてしまいます。流動性に十分気をつけることは、負けないための重要なポイントの1つといえるでしょう。