政府の債務は40兆ドル超え、米国は崩壊した帝国と同じ道をたどっている?

 米連邦政府の債務総額が40兆ドルの大台を突破した。8月24日のフォーブスの記事「40兆ドルを突破した米連邦債務、トランプ第1次政権発足以降倍増」によると、「総債務はこの95日間で1兆ドル(約159兆円)増加したという。トランプ第1次政権が発足した当初、米政府の債務は20兆ドルに満たなかったが、それ以降、2倍に膨れ上がった」と指摘している。

米国の債務の推移

米国の債務の推移
(米国が初めて1兆ドルの債務に達するまで200年かかったが、最後の1兆ドルを追加するまで95日しかかかっていない)
出所:ゼロヘッジ、米国財務省のデータより石原順作成

 米政府は2024年、純利息費用としては史上最高額となる約8,800億ドルを支出した。現在のペースが続けば、利息の支払額は今年末までに年間1兆ドルに達することになる。米国には約1億2,800万世帯があるが、単純計算すると、1世帯当たりの負担額は月額650ドル、年間では7,800ドルになるとしている。

米政府の金利支払い負担

米政府の金利支払い負担
出所:International Man

利払い費用は国防予算を上回っている

利払い費用は国防予算を上回っている
出所:International Man

 作家で投資家のダグ・ケーシーが運営するサイト「International Man」に掲載されたコラム「The Looming Debt Crisis: Is America Following the Path of Collapsed Empires?(迫り来る債務危機:米国は崩壊した帝国と同じ道をたどっているのか?)」は、歴史を振り返りつつ帝国の負債について次のように記している。

 最も強大な帝国でさえも崩壊させる可能性があり、ローマ、スペイン、フランス、イギリス、ソビエト連邦など、どの国においても過剰な債務は衰退において決定的な役割を果たしてきた。こうした帝国崩壊の事例に見られる典型的なパターンは次の通りだ。

ステージ1:帝国が成功を収め、過信に陥る
ステージ2:過信が贅沢品や戦争への浪費につながる
ステージ3:帝国は借金をすることで、この贅沢な支出を賄う
ステージ4:債務が持続不可能なレベルまで膨れ上がり、耐え難い重荷となる
ステージ5:帝国は課税と通貨の価値下落によって債務を賄う
ステージ6:帝国が税金を引き上げ、通貨の価値を極限まで下げ、国内の不安定を引き起こすまで、国民が債務返済の負担を負う
ステージ7:帝国は債務負担のために軍事費を賄えなくなる。これが通常、転換点となる
ステージ8:資金不足の軍隊と国内の不安定さにより、帝国は外国からの侵略、国内革命、内戦、その他の存亡の危機に対して脆弱になる
ステージ9:帝国の崩壊

 歴史家でジャーナリストのニーアル・ファーガソンは「国防費よりも債務返済(国債の利払い)に多くの費用を費やす大国は、長く大国であり続けることはできないだろう。ハプスブルク帝国時代のスペイン、旧体制下のフランス、オスマン帝国、大英帝国にも当てはまったこの法律は、まさに今年から米国によって試されることになるだろう」と述べている。

利回りを抑制するため政府が講じるさまざまな手段は、自国通貨の下落を早めるだけ!?

 国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストやゴールドマン・サックスのチーフ為替ストラテジストを歴任し、現在はブルッキングス研究所の上級研究員を務めるロビン・ブルックスは、8月20日、自身のサイトにおいて「Dollar Debasement Has Begun(ドルの価値下落が始まった)」と題するブログ記事を掲載した。

 ブルックスは、「財政政策が制御不能になると政府は利回りを抑制するためにさまざまな手段を講じる。しかし市場が期待するリスクプレミアムを得られないため通貨に下落圧力をかける。こうして債務危機は通貨危機へと変貌する。円が長年にわたって下落し続けている理由である。米財務省は火遊びをしている。日本が示すように一度この道を進むと、自国通貨の下落を止めるのは困難、あるいは不可能になる可能性がある」と述べている。

米国金利の推移

米国金利の推移
出所:ロビン・ブルックス

 800年間にわたる世界各国の金融危機と国家破綻の事例を分析し、その共通パターンを明らかにした2011年の「国家は破綻する──金融危機の800年」(原題はThis Time Is Different)は、「国家が基本的な機能を果たせなくなり、経済的、社会的な崩壊状態に陥ること、過剰な債務(政府・銀行・家計)の蓄積と『今回は特別』という慢心が、金融危機や国家破綻の共通パターンである」と論じている。

 米国金利の不安定な動きは株式相場へ大きな影響を与えるだろう。今の時代にも生きているジェシー・リバモアが残した21のルールをいま一度、振り返っておきたい。リバモアは幾度となく巨万の富を築き、そしてそれらを失った。

 リバモアの特筆すべき点は、彼の提唱したルールが今なお非常に価値が高いということだ。彼が特定した原則と行動パターンは、100年前と変わらず2026年においても有効だ。

ルール1:証券や商品への投機や投資のビジネスにおいて、新しいことは決して起こらない

 市場サイクルが繰り返されるのは、人間の心理が繰り返されるからだ。具体的な市場の引き金となる要因は変化するが、貪欲と恐怖のサイクルは続く。

 例えば、今日ではAIの評価額が引き金となっているが、15年前は住宅市場、さらにその10年前はインターネット関連株だった。しかし、引き金となる要因が異なっても、現実とファンダメンタルズを隔てる陶酔感という根底にあるパターンは一貫している。

 この法則を理解するのに、未来を予測する必要はない。必要なのは、私たちがサイクルのどの段階にいるのかを理解することだけだ。

ルール2:年間を通して毎日または毎週取引をして継続的に利益を上げることはできない

 リバモアは、リスクとリターンのバランスが良く、トレンドが確実な、真に優れた投資機会はまれであると述べている。リバモアは、市場の動きのほとんどはノイズだと考えている。ノイズをシグナルとして扱うことは、長期的に見て確実に損失につながるとしている。

 根本的な状況に関係なく常に行動を起こしたいという欲求は、ウォール街で多くの損失の原因となっている。毎日いくらかの利益を上げなければならないと感じているプロの投資家でさえも例外ではない。

ルール3:市場の動きがあなたの見方を裏付けるまでは、自分の判断をうのみにしてはいけない

 あなたがどれほど正しいと思っていても、あなたの投資分析は市場がそれに同意するまでは取引対象にはならない。株価が著しく過小評価されている銘柄は、何年もその状態が続く可能性がある。逆に、ファンダメンタルズ分析がもはや意味をなさなくなった後も、株価が上昇し続ける銘柄もある。本格的な投資を行う前に、分析結果と価格変動が一致するまで待とう。

ルール4:市場は決して間違えないが、意見はしばしば間違える

 投資が不利な方向に動くと、われわれは市場が間違っている理由を主張したくなるものだ。そうした主張は長期的には正しいと証明されるかもしれない。ルール3でリバモアが示唆しているように、市場は全ての参加者の集合的な判断だ。

 だからといって市場が合理的であるとは限らないが、資金がどこに配置されているかをリアルタイムで最も正確に反映した指標となることは確かだ。

ルール5:投機で本当もうかるのは、最初から利益が出ている投資案件

 ポジションがすぐに不利な方向に動くことは重要な情報だ。リバモアは、最大の利益を生み出したトレードはほぼ例外なくエントリー直後から機能していたと指摘している。機能し始めるまでに時間がかかるトレードは、判断を誤った可能性がある。早期の確認は利益を保証するものではないが、確認が取れないことは重要な警告となり得る。

ルール6:株価が順調に推移し、市場が健全な状態にある限り、利益確定を急いではならない

 私たちは心理的に、利益が消えてしまうことを恐れて、小さな利益でもすぐに確定させようとする傾向がある。リバモアによれば、最大の利益は、長期にわたって保有し続ける少数のポジションから得られるとのことだ。根本的な状況や価格変動に変化がない限り、単に価格が上昇したという理由だけでポジションを売却するのは間違いだ。

ルール7:投機的な事業が投資に転じることを決して許してはならない

 投機的なポジションが下落すると、損失を受け入れることを避けるために、それを長期投資として捉え直したくなる誘惑に駆られる。しかし、そのポジションは特定の投資理論と想定される期間に基づいて構築されたものだ。

 失敗した投機を「長期保有」と呼び替えても、経済的な意味合いは変わらない。損失の認識を遅らせ、本来なら有効活用できるはずの資金を拘束するだけだ。

ルール8:投機だけで失う金額は、放置したポジションから失う巨額の金額に比べれば微々たるものである

 長期的なバイ・アンド・ホールド投資はアクティブ運用よりも本質的に安全であるという従来の常識に異議を唱えたものだ。リバモアの主張は、ポジションが悪化し、損失を軽減するための対策が何も講じられなかった場合、受動的な無策は壊滅的な結果を招く可能性があるということだ。

ルール9:以前の高値から大きく下落したという理由だけで株を買ってはいけない

 重要なのは、株価が以前どの水準で取引されていたかではなく、下落を引き起こした状況が変化したかどうかである。株価が以前の価格に比べて「割安に見える」という理由だけで下落トレンドに乗って買いを入れるのは、投資家がよく犯す大きな間違いだ。

ルール10:株価が高いように見えるからといって、決して株を売ってはいけない

 従来のファンダメンタルズ指標では割高に見える株でも、その事業が実際に成長している場合や投資家の資金が継続的に流入している場合は、上昇を続ける可能性がある。

 過去数十年間、価格が上昇したというだけの理由で優良資産を売却することは、投資家にとって大きな損失となってきた。アマゾン・ドット・コム(AMZN)株は2012年に割高に見え、アップル(AAPL)株は2016年に割高に見えた。価格だけを理由にポジションを解消するのは、決して妥当な判断とは言えない。

ルール11:株価が通常の反応を示した後、新たな高値を更新した時点で、私は買い手になる

 リバモアは、健全な調整局面の後にブレイクアウトした時点で買いを入れることを勧めている。例えば、株価が秩序正しく調整局面を経て、その後新たな高値を更新した場合、売り圧力が吸収され買い手が主導権を取り戻したことを示唆している。これは上昇トレンドにおける最もリスクの低いエントリーポイントの一つだと考えられている。

ルール12:損失を平均化してはいけない

 ナンピン買いは、投資において最も危険で、かつ最もよく見られる手法の一つだ。ポジションが下落している時、市場は何らかの情報を提供している。つまり、当初の投資判断が間違っていたかタイミングが早すぎたかのどちらかだ。

 うまくいっていないポジションに資金を追加しても間違いは修正されずむしろ悪化するだけである。リバモアはこれをトレーダーが陥りうる最も破壊的な習慣の一つとして指摘している。

ルール13:あらゆる人が持つ人間的な側面は、平均的な投資家や投機家にとって最大の敵である

 行動ファイナンスという分野が確立されるずっと以前から、リバモアは、投資家は合理的ではないという厳しい真実を指摘していた。損失回避の心理によって、投資家は損失を出している銘柄を長く保有してしまう。過信によって、ポジションサイズを誤って判断してしまう。アンカリング効果によって物の価値ではなく、実際に支払った金額に基づいて意思決定をしてしまう。

 こうした行動は、私たちの認知パターンに深く根付いている。

ルール14:希望的観測は排除されなければならない

 希望的観測とは、分析が希望に取って代わられたときに生じるもので投資家が「市場は何を語っているのか?」と自問することをやめてしまう瞬間だ。「もし今日この銘柄を保有していなかったとしたら、現在の価格と情報に基づいて購入するだろうか?」と定期的に自問自答し、答えが「いいえ」なら、なぜまだ保有し続ける必要があるのか。

ルール15:大きな動きは時間をかけて発展する

 市場における最大の収益は、個別銘柄やセクターにおける数カ月あるいは数年にわたる長期的なトレンドから生まれる。こうしたトレンドは形成に時間がかかり、完全に展開するにはさらに長い時間を要する。

 投資家は焦りからポジションを早々に解消し、最良のアイデアから得られるはずだった収益の大部分を逃してしまうことがよくある。トレンドを見極めることは重要だが、確認されたトレンドが継続するのを辛抱強く待つことも同様に重要だ。

ルール16:価格変動のあらゆる理由について過度に詮索するのは好ましくない

 金融メディアは、あらゆる株価や市場の動きについて、リアルタイムで解説や説明を絶えず提供している。そうした説明の多くはすでに起こった出来事に合うように後付けで構築されている。株価は、しばしば不可解な理由で上下する。

 個々の価格変動の説明を追い求めることは、誤った結論や後付けの判断につながることが多い。市場で実際に何が起こっているかを示す価格変動こそが、解説よりも信頼できる情報だ。

ルール17:たくさん見るより、少数を見る方がはるかに簡単だ

 ポートフォリオが大きくなると、資産ではなく負債となるポイントがある。50銘柄や100銘柄を保有することでリスクは軽減されるかもしれないが、注意力が分散しすぎて、個々の銘柄を十分に厳密に監視することができなくなる。

 リバモアは、綿密に確認できる主要セクターの少数の優良銘柄に焦点を絞った。リスク管理としての分散投資と、努力を怠るための言い訳としての分散投資には、大きな違いがある。

ルール18:主要な銘柄で利益を上げられないなら、株式市場全体で利益を上げることはできない

 どの市場サイクルにおいても、比較的少数の銘柄が資金流入の大半を占める。パッシブ投資の人気が高まっている今日では、この傾向はさらに顕著になっている。投資家がこうした優良銘柄を見極め、そこから利益を得ることができない場合、二流銘柄や出遅れ銘柄からリターンを生み出す可能性は低い。

ルール19:今日のリーダーが2年後のリーダーであるとは限らない

 セクターやファクターの主導権は、市場サイクルを通じて劇的に変化する。1970年代初頭のニフティ・フィフティ銘柄は、1970年代後半から1980年代前半にかけてパフォーマンスが低迷した。1990年代後半はテクノロジーセクターが市場を席巻したが、その後10年間は最悪のパフォーマンスセクターとなった。

 エネルギー株は2014年から2020年にかけて最悪のパフォーマンスセクターの一つだったが、2021年と2022年にはどのセクターよりも高いリターンを生み出した。過去の成功銘柄に固執し続けることは、次のサイクルでパフォーマンスが低迷する確実な道だ。

ルール20:特定グループの一つの銘柄が明らかに一般的なトレンドから逆行したからといって、市場全体に対して完全に弱気または強気になってはならない

 単一のデータポイントはトレンドを示すものではない。ある企業の業績不振は、業界全体の悪化を示すものではない。銀行の破綻が必ずしもシステミック危機の前兆となるわけではない。

 個々の観察結果よりも、文脈と証拠の重みがはるかに重要だ。市場は複雑なシステムであり、孤立した出来事から安易に推論しようとすると、大きな損失につながる可能性がある。健全な分析には、広範な結論を導き出す前に、複数のデータポイントを集約することが不可欠だ。

ルール21:内部情報には注意が必要だ、もし簡単に稼げるお金がそこら中に転がっているなら、誰もそれをあなたのポケットに押し込もうとはしないだろう

 時代は変わった。かつてはカクテルパーティーで話題になっていた情報も今ではソーシャルメディアのスレッド、金融インフルエンサー、ウェブベースの取引サービスに取って代わられている。情報源は変わったものの、経済原理は変わっていない。

 もし本当に非対称的な機会が存在し、それが広く知られていれば、すぐに非対称性は失われてしまうだろう。「確実な投資」をうたう人々は、情報不足か、何かを売りつけようとしているか、あるいはその両方である。

出所:リアル・インベストメント・アドバイス「ジェシー・リバモア:現代の市場に役立つ過去の教訓」「市場の知恵をもっと知ろう:ジェシー・リバモア パート2」

 相場は予測不能な値動きが続く世界であり、絶対的な正解や未来の確実性はない。相場で最も大切なことは高度な予測ではなく、生き残り続けるための「資金管理(マネーマネージメント)」である。ポジションを持つと同時に、損失の限界額を計算して必ずストップロス注文(逆指値)を置くことが鉄則だ。

 相場とは何か? 筆者にとって相場とは「ストップロス(損切り・資産管理)」そのものである。

代表的な金融バブルのピーク前後とS&P500の推移

代表的な金融バブルのピーク前後とS&P500の推移
出所:各種データおよびBOAの資料から石原順作成

9月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 9月2日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所 チーフエコノミスト)をゲストにお招きして、「長期金利は金融の一丁目一番地」というテーマで、愛宕さんの本音を聞いてみました。ぜひ、ご視聴ください。

9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー 資料
出所:YouTube
9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー 資料
出所:YouTube
9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー 資料
出所:YouTube
9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー 資料
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー バナー

9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

9月2日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube

<セミナーのご案内>

投資戦略フェアEXPO2026大阪 2026年10月10日

 10月10日(土)の「第9回ご愛顧感謝祭投資戦略フェア EXPO2026 in 大阪」に楽天証券さんの協賛で登壇します。
(石原順講演【参加特典】あり)

第9回ご愛顧感謝祭投資戦略フェア EXPO2026 in 大阪

 愛宕伸康さん(楽天証券経済研究所の所長兼チーフエコノミスト)とのブースでの対談もあります。

 ぜひ、ご参加ください。