証券会社にも大きな影響を及ぼした今回の株価急落

3月11日に発生した東北関東大震災により、亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災された皆様に対しまして心よりお見舞い申し上げます。

3月11日に生じた大地震およびその後の福島第一原発事故の影響で、3月14日、15日と株価は非常に大きな下落をみせました。今回の株価急落によって多数の個人投資家が多額の損失を被ったと推測されます。

今回のような株価急落は2008年10月にも起こり、そのときも同様に多くの個人投資家が大きな損失を被りました。

そこで今回は特別コラムとして、突然の株価急落で再起不能な多額の損失を生じさせないためにはどうすればよいのかを考えてみたいと思います。

何が起きても冷静でいられるようなポジションを心がける

3月14日以降の株価の動きは激しいものでしたが、特に3月15日は、まさに投資家が「パニック」に陥っていることを如実に表している動きであると感じました。

今回のように突発的な出来事が生じた場合、冷静になって「持ち株を売るべきか」「保有を続けるべきか」「売るとしたら全部売るのか半分売るのか」など自分自身で決断しなければなりません。

そんなとき、自分自身がパニックになってしまうと、冷静な判断ができず、損失をさらに拡大させてしまうことにもなりかねません。

筆者は、突発的な出来事が起きてもパニックにならずに済むかどうかは、「投資資金に対してどのくらいの割合の株式保有額であるか」で決まると思っています。

例えば、投資資金1,000万円の投資家が株式に100万円(投資資金の10%)を投資していて突発的な出来事が生じても、最悪でも失う資金は全体の10%ですから、おそらくパニックにならずに済むと思います。

しかし、投資資金1,000万円の投資家が株式に1,000万円全額を投資し、さらに信用取引で1,000万円、合計2,000万円分投資していたならば、完全にパニックになってしまうのではないでしょうか。

何が起こっても冷静に判断して投資行動を行えるかどうかの水準は投資家によって異なるでしょうが、もし、今回の株価急落でパニックになってしまった、もしくは生きた心地がしなかった、という方は、それは株式の持ちすぎが原因です。今後は無理のない金額まで株式保有額を抑え、冷静な判断を常にできるようにしておくことが重要です。

株式の保有額が大きいときはプットオプションの活用を

投資資金に対する株式の保有額が少なければ突発的な出来事があってもそれほど心配ありませんが、株式の保有額が大きいときは、万が一の突発的な出来事に常に備えておくことが重要です。

そんなときに効果的なのが第73回でもご紹介した「プットオプションの買い」です。

今回の株価急落でも、プットオプションの価格は大きく値上がりしました。もし株価の急落で売るに売れない状況となっても、プットオプションを保有していれば、その値上がり益で保有株の損失を相当程度カバーすることができたのです。

投資資金を超えた信用取引や先物取引は危険

現物取引だけであれば、株価急落で売るに売れず、投資資金の2~3割を失うことになっても、全額を失うことはありません。その後の挽回も十分に可能です。

しかし、レバレッジの効く信用取引や先物取引で、投資資金の何倍もの取引を行っていると、投資資金の全額を失ってしまう危険性があります。

信用取引や先物取引は現物取引と異なり、株価が大きく下がったときには強制的に決済され、損失が確定してしまいます。

例えば、投資資金100万円で300万円分の信用取引をしていたとすると、今回の株価急落で持ち株の株価が33%下落すれば投資資金の全てを失ってしまいます。

投資資金以上の取引ができるのが信用取引や先物取引の魅力ではありますが、それは同時に投資資金全額を失うリスクもあることを理解の上、慎重に行うようにしてください。

なお、オプションの買いについては、損失額は最大でもオプションの購入金額にとどまります(買ったオプションの価格がゼロになるだけ)から、特に心配する必要はありません。

株価急落直後の新規買いは慎重に

2008年10月のときもそうでしたが、株価急落後は急激なリバウンドを見せることが多いため、うまくすれば短期間で大きな利益を得ることも可能です。

しかしながら、実際にやってみると、毎日のように株価が乱高下し、思うように行かないのも事実です。株価の急激な反発をみてあわてて買ったものの、翌日の株価急反落であわてて売ってしまい、損失を積み重ねてしまう……ということも十分に考えられます。

特に初心者、初級者の方は、新規買いをするのであれば株価の乱高下が落ち着き、ある程度安心して買えるようになるまで待ってもよいのではないかと思います。

今回のような株価急落はまたいつか起こることでしょう。その意味で株式投資をする限り株価急落は避けられないのですが、それをしっかりと乗り越えていく力のある個人投資家が、最後には成功するのだと思います。