上がったら買い、下がったら売るのが逆指値注文

 今回は前回に引き続き実践編として、逆指値注文をどのような場面でどう活用していくかを、筆者の手法もまじえて具体的にご紹介していきます。

 通常の注文は、主に「○○円まで株価が上昇したら売る」「△△円まで株価が下落したら買う」という考え方によるものといえます。一方の逆指値注文はこの考え方が全く逆になり、「○○円まで株価が上昇したら買う」「△△円まで株価が下落したら売る」となります。

 なぜ株価が上昇したら「売り」ではなく「買い」で、下落したら「買い」ではなく「売り」なのか、それは逆指値注文の根底に「トレンドをより重視する」というスタンスがあるからです。

逆指値買い注文は「上抜け買い」に効果的

 重要な買いタイミングの1つに、以前ご紹介した「上抜け買い」があります。この「上抜け買い」に逆指値注文が威力を発揮するのです。

「上抜け買い」とは株価が直近の高値を「上」に「抜け」たら「買い」、という方法で、上昇トレンド途中にある銘柄を買う際のセオリーの1つです。株価が直近高値を超えるということは、上昇トレンドが継続しているサインとなるからです。

 底値200円から500円へと順調に上昇した後に反落し、現在450円になっている銘柄があるとしましょう。現在の450円の株価から、上へ向かうか下へ向かうかははっきりしません。はっきりしないならば現時点では手を出さず、上へ向かうことがはっきりした段階、つまり直近高値の500円を超えてきたときに買おうとする戦略が「上抜け買い」です。

 このとき、常に株価をチェックすることができる方ならば、株価500円超えを確認できたらすぐに買えばよいですが、会社勤めの方など日中株価を頻繁にチェックすることができない方も多いでしょう。そんなときに、例えば501円を逆指値とした成行買いの逆指値注文を使えば、自身の代わりに証券会社が株価の動きを継続的に監視し、株価が500円を超えたところでタイムリーに買うことができるのです。

直近安値割れを逆指値に設定すればトレンド転換直後に売れる

 逆指値注文は購入のときだけではなく売却の際にももちろん効果を発揮します。筆者がよく用いるのは「直近安値割れ」を逆指値に設定する方法です。

 株価が直近安値を割るということは、下降トレンド入りないしは下降トレンド継続を示唆するため、重要な売りサインとなります。

 筆者はしばらく下落を続けていた株価が直近安値から少し反発した際に底打ちの可能性を感じればとりあえず買ってみることがよくあります。そして買った後には、直近安値割れの価格を逆指値に設定して成行売りの逆指値注文を入れておきます。

 こうすれば、直近安値割れにより直近安値では底打ちをしていなかったことが判明した時点で即座に損切りすることができ、小さいリスク(損切りによる損失)で相対的に大きなリターン(直近安値を底値に反発した場合の利益)を狙うことが可能になります。

 含み益がある保有株についても同様に、直近安値割れの株価を逆指値として逆指値注文を発注しておけば、下降トレンド入りの初期段階の比較的高い株価水準で保有株を売却することができます。

逆指値注文で損切りが苦手な人も「損切り上手」になれる

 最も重要な逆指値注文の活用法、それは損切りに逆指値注文を用いる方法です。

 損切りの重要性は分かっていながらもいざとなるとどうしてもできない、という個人投資家は非常に多いようです。株価が買値より下がって、損切りを実行しなければいけない状況に陥ると、実行を躊躇してしまうのでしょう。

 でも、「逆指値注文」を使えばそんな心配は無用です。損切り価格を逆指値に設定し、逆指値まで株価が下がったら成行売りとする逆指値注文を出しておけば、あとは自動的に損切りを執行してくれます。そこには感情の入る余地はありません。

 そもそも損切りに感情は障害となります。「損切り価格に達したけれどやっぱり売りたくない」とか「もう少し持ち続ければ反発するかも」という思いが、損切りをできなくさせます。しかし、損切りの条件に達したら何も考えずに機械的に売る、それが損切りのあるべき姿です。自身の感情に打ち勝って損切りする自信のない方は、逆指値注文を活用してみてください。

まとめ・逆指値注文を使うとこんなメリットがある

 以上、逆指値注文を使うことによるメリットをご説明しましたが、まとめると以下の3点になります。

  • 買いタイミングの重要なサインである「直近高値超え」直後に買うことができる
  • 売りタイミングの重要なサインである「直近安値割れ」直後に売ることができる
  • 心理的に損切りに抵抗がある投資家でも、自動的に損切りを執行してくれる

 逆指値注文は、特に日中株価を頻繁にチェックすることができない個人投資家にとって、買うべきタイミングでタイムリーに買い、売るべきタイミングでタイムリーに売ることができる非常に画期的な仕組みです。皆さんも逆指値注文を上手に活用して、「良いところで買えた」「良いところで売れた」とぜひ実感してみてください