なぜ今「債券バブル」なのか?

現在は「債券バブル」であり、近い将来に債券バブルが崩壊すると警鐘を鳴らす専門家も少なくありません。筆者もこれからの債券投資の危険性を大いに感じる1人です。
債券投資は株式投資に比べて安定的な運用ができることから、公的年金や企業年金などでは、資産運用の中核的な位置付けとなっています。
しかし、リーマンショック以降の世界的な金融緩和により、各国で金利が歴史的な低水準まで下がりました。
ご存じの方も多いと思いますが、債券価格と金利は、「金利が下がれば債券価格は上昇」「金利が上がれば債券価格は下落」という関係にあります。
したがって、日本を含め世界中が超低金利状態にあるということは、裏を返せば超低金利になるまで債券が買い進まれてきたことを示しているのです。
金利が下がれば債券価格は上昇しますが、すでに超低金利の現状からさらに金利が下がる余地は限られています。これ以上の上昇が困難である水準にまで債券は買い進まれている、これが現在の「債券バブル」の実態です。

これからの債券投資は要注意

バブルであるならば最後は破裂します。ヨーロッパ諸国の財政危機問題など懸念材料も多く、何かをきっかけに世界的に金利水準が大きく上昇すれば、債券価格が大きく下落し、やがては債券バブルの終焉を迎えることになります。
仮に債券バブルが崩壊しないにしても、債券市場に大きな影響を与えるアメリカの長期金利の水準が約60年のサイクルで変動している点も見逃せません。アメリカの長期金利が直近のピークを迎えたのは1981年です。現在はそこから29年経過しています。60年サイクルは30年の下落とその後の30年の上昇で構成されること、そして株価も金利も世界的な連動性が強まっている点を考慮すれば、長期的にみて今後世界中で金利は上昇する、つまり債券価格は下落する可能性が高いといえます。
債券は満期まで保有すれば、決められた利率で利息が受け取れますので、債券発行元が破たんしない限り元本割れしません。しかし、金利1%のときに満期10年の債券を買うより、金利が3%になってから買った方がより多くの利息を受け取れるのは明らかです。
また、債券を投資対象とする投資信託は、金利の変動などに伴う債券の時価の変動が基準価格に反映されます。金利水準の低い時にこうした投資信託を買って、その後金利が上昇すれば、投資信託の価格は値下がりしてしまいます。

低金利下では債券よりキャッシュが安全

筆者が債券投資に対して慎重な姿勢をとらざるを得ないのは、「金利水準が歴史的な低水準=債券価格が歴史的な高値」にあるからです。金利水準が高くなってから買うならともかく、超低金利の現在債券を買うということは、バブルの頂点で日本株を買うようなものだといえば理解いただけるでしょうか。
もちろん今後世界的な景気悪化・デフレ懸念などの理由で、ここからさらに金利が低下していく可能性もありますが、債券価格の大幅な下落というリスクに見合ったリターンが期待できるとは思えません。超低金利下であれば無理に価格下落リスクを抱えて債券へ投資しなくとも、キャッシュで保有していれば実質的な資産価値は目減りしません。
金利の高い外債への投資であれば悪くはありませんが、高金利国の債券はカントリーリスクや高インフレによる通貨安(=円高)リスクには十分に注意するようにしてください。

金利が上がると株価はどうなる?

債券バブルが崩壊すれば、おのずと金利は上昇します。では、金利が上昇すると株価はいったいどうなるのでしょうか。
投資の教科書には、「金利が上昇すると株価は下がる」と書かれています。金利が上昇すると債券や定期預金の魅力が増し、株式から資金がシフトするため、というのがその理由です。
ところが、近年の日本株と金利の関係をみると、そうはなっていません。逆に「金利が上昇すると株価は上がる」状態になっています。これは、「金利上昇=景気回復・デフレ脱却」というプラスの側面が株価に反映されているためといえます。
今年11月から続く株価上昇局面でも、株価とともに長期金利も上昇しています。また、日本株が大きく上昇した2006年は10年国債金利も2%まで上昇していました。
一方、バブル崩壊のはじまった1990年は、「金利上昇=株価下落」となりました。金利が高水準にまで上昇し、投資意欲減退など実体経済へのマイナス面が懸念されたためです。
金利が2%程度の低水準であれば「金利上昇=株価上昇」となるものの、金利が7%、8%と高水準に達すると「金利上昇=株価下落」となる、といえそうです。
また、日本株はアメリカの長期金利との連動性が高いという点も良く知られた話です。日本株の長期低迷は、アメリカの長期金利が長年の間下落傾向にあったことも原因の1つと言われています。上で述べたアメリカの金利の60年サイクルがボトムにあることを考えると、今後の日本株にも期待が持てそうです。

「悪い金利上昇」でも日本株にはプラス?

ただ、金利の上昇には「良い上昇」と「悪い上昇」があります。経済成長や景気回復を伴ったものであれば「良い上昇」、そうでなければ「悪い上昇」です。財政危機がささやかれる欧州諸国の金利急上昇は「悪い上昇」の典型例です。おそらく債券バブルの崩壊による金利急上昇は、「悪い上昇」の部類に入ってしまうでしょう。

現在のアメリカにおける長期金利の上昇は、「良い金利上昇」だという見解と、「悪い金利上昇」だという見解が入り混じっています。現状のアメリカ株は堅調に推移していますから、今のところは「良い金利上昇」という認識が勝っている状況といえます。
一方で、ここからさらにアメリカの長期金利が大きく上昇すれば、「悪い金利上昇」となり、アメリカ株にもマイナスの影響を及ぼしてしまうかもしれません。
ただし、長年デフレに苦しんだ日本は、例え金利上昇が「悪い金利上昇」であっても、それによりデフレからの脱却がかない、株価にはプラスに作用する可能性も大いにあります。

巷でいくら「悪い金利上昇だ」と言われても、金利上昇と株価の上昇がパラレルに起こっている間は特段の心配はないと思います。しかし、金利がどんどん上昇する一方で、株価が上昇しなくなったならば、「金利上昇=株価上昇」という図式が崩れたことを意味しますから、その後の株価の下落に注意が必要です。
金利上昇と株価上昇が同時に起こっており、かつ株価と移動平均線の関係から上昇トレンドが続いている(株価が移動平均線の上方にあり、移動平均線自体も上向きの状態)限りは、弱気になる必要はないのではないかと思います。