タップ(ねじ切り工具)分野で世界首位
オーエスジー(6136 東京)(株価3,879円、時価総額3,187億円:8月12日終値)は、切削工具のグローバル専業メーカーとして世界的に高い競争力を持つ企業です。特にタップ(ねじ切り工具)分野では世界首位で市場シェア30%を誇ります。
主力製品は、ねじを切るタップ、穴を開けるドリル、溝や形状を削るエンドミルの三つで、いずれも金属加工の基盤となる工具です。自動車、航空機、金型、医療機器、半導体製造装置など、精密加工を必要とする幅広い産業で使用されています。
オーエスジーの強みは、高精度・高耐久の工具を生み出す技術力にあります。特にコーティング技術や難削材向け工具の開発力は世界的に評価が高く、チタン合金や高硬度鋼などの加工が増える産業構造の変化に対応してきました。また、顧客の加工工程そのものを改善するソリューション提案型営業を展開しており、単なる工具販売にとどまらない付加価値を提供しています。
海外展開も積極的で、北米、欧州、アジアに生産拠点と販売網を広く持ち、グローバル需要を取り込む体制を整備しています。近年は自動車の電動化や航空機の軽量化に伴う難削材加工の増加が追い風となり、オーエスジーの高付加価値工具の需要が拡大しています。
オーエスジーは1938年、大沢秀雄が東京で「大沢螺子研削所(Osawa Screw Grinder)」を創立し、タップ・ダイスの製造から事業を始めました。戦後は本社を愛知県へ移転。1963年に現社名へ変更し、1964年に名証2部、1970年に東証2部へ上場しました。
1960〜1980年代にかけて国内で豊川、豊橋、新城など主要工場を整備し、ハイスエンドミル(1970年)、超硬エンドミル(1980年)、ドリル(1984年)など製品ラインを拡大。1968年の米国法人設立を皮切りに、台湾、ブラジル、韓国、カナダなど海外展開を加速し、1990年代以降は欧州・アジアへも進出しました。
2000年代以降は米欧亜で多数の工具メーカーを買収してグローバルな製造・販売ネットワークを構築しました。現在は世界最大級の総合切削工具メーカーとして、タップ、ドリル、エンドミルを中心に事業を展開しています。
直近1年で株価急伸
オーエスジーの当期純利益はこの10年で「成長→コロナで急減→回復」という流れをたどりました。2016〜2019年は世界的な加工需要拡大で100億円半ばまで増加。2020年はコロナで50億円台へ急減しましたが、2021年に回復。2022年は難削材加工需要の増加と海外展開強化で過去最高の160億円台を記録しました。
2023〜2024年は調整でやや減少したものの、2025年は再び140億円規模へ回復。2026年は主要市場の需要回復や円安を背景に、200億円超えを見込みます。
<オーエスジーの当期純利益推移(2015年11月期以降)>
出所:オーエスジー資料などより作成
他方、オーエスジーの株価は利益成長に反応せず長らく低迷していました。しかし直近1年は、航空機・半導体装置向けの難削材加工需要が世界的に回復して高付加価値工具の販売が増加する中、成長期待が明確化したことで株価が上昇トレンドへ転じました。
<オーエスジーの株価推移(2015年11月期以降)>
出所:オーエスジー資料などより作成
過去10年で株主資本は1.8倍も時価総額は1.4倍止まり
過去10年間の変化で見ると、売上高が1.4倍、当期純利益は1.1倍となっています。この期間、株主資本は1.8倍に拡大しましたが、時価総額は1.4倍にとどまっています。結果的に株価純資産倍率(PBR)は2.3倍から1.8倍へと低下し、割安感が出ている状況となっています。
この割安感が解消され、PBRが2.3倍にまで上昇した場合には、株価は5,000円(29%上昇)となります。
<オーエスジーの業績推移(2015年11月期と2025年11月期)>
| (億円) | 2015年11月期 | 2025年11月期 | 変化(倍) |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,119 | 1,606 | 1.4 |
| 売上総利益 | 500 | 658 | 1.3 |
| 営業利益 | 216 | 203 | 0.9 |
| 当期純利益 | 125 | 143 | 1.1 |
| 株主資本等合計 | 1,026 | 1,808 | 1.8 |
| 時価総額 | 2,312 | 3,187 | 1.4 |
| PBR(倍) | 2.3 | 1.8 | - |
| PER(倍) | 18 | 22 | - |
| ※2025年11月期の時価総額は直近値 出所:オーエスジーの資料などより作成。 |
|||
オーエスジーの過去10年の業績をセグメント別で見ると、欧州・アフリカおよび米州が成長をけん引したことが分かります。
欧州では航空機(エアバス)の増産や、医療機器・半導体装置の加工需要が増えたことにより、チタン・耐熱合金向け工具が大きく伸びました。オーエスジーは現地販売網を強化したことにより、高付加価値工具の採用増につなげました。
米州では航空機(ボーイング(BA))、防衛、エネルギー産業の回復に加え、米国製造業の回帰が工具需要を押し上げました。北米工場の増産投資で供給力を高めることにより、難削材加工向け製品の販売拡大につなげました。
<オーエスジーのセグメント別業績推移(2015年11月期と2025年11月期)>
| (億円) | 2015年11月期 | 2025年11月期 | 変化(倍) | |
|---|---|---|---|---|
| セグメント別売上高 | 1,119 | 1,606 | 1.4 | |
| 日本 | 482 | 517 | 1.1 | |
| 欧州・アフリカ | 114 | 376 | 3.3 | |
| アジア | 306 | 363 | 1.2 | |
| 米州 | 218 | 350 | 1.6 | |
| セグメント別利益 | 216 | 203 | 0.9 | |
| 日本 | 114 | 89 | 0.8 | |
| 欧州・アフリカ | 12 | 27 | 2.2 | |
| アジア | 63 | 48 | 0.8 | |
| 米州 | 35 | 42 | 1.2 | |
| 出所:オーエスジーの資料などより作成 | ||||
今後については「難削材加工需要の拡大」「北米・欧州での生産能力増強」「円安による海外利益押し上げ」が追い風となり、成長が継続する展開が見込まれています。
<オーエスジーの業績予想>
| (億円) | 2025年11月期 | 2026年11月期 | 2027年11月期 |
|---|---|---|---|
| 実績 | 予想 | 予想 | |
| 売上高 | 1,606 | 1,850 | 1,968 |
| 営業利益 | 203 | 300 | - |
| 当期純利益 | 143 | 210 | 226 |
| 株主資本等合計 | 1,808 | 1,770 | 1,875 |
| 時価総額 | 3,187 | 3,187 | 3,187 |
| PBR(倍) | 1.8 | 1.8 | 1.7 |
| PER(倍) | 22 | 15 | 14 |
| 出所:オーエスジーの資料などより作成。売上高、売上総利益、営業利益、当期純利益は会社予想。株主資本等合計、時価総額、PBR、PERはコンセンサス予想。 | |||
切削工具同業他社比でPBRに割安感があり、解消されれば株価は6,700円
一般に株式の評価と収益性はおおむね、図のような比例関係にあります。
<株価評価と収益性はおおむね比例関係>
この関係を活用し、オーエスジーと上場同業他社について、収益性については自己資本利益率(ROE)を、株価評価についてはPBRを適用した散布図を作成します。
オーエスジーの上場同業他社である主な切削工具企業には、ケナメタル(KMT NYSE)、旭ダイヤモンド工業(6140 東京)、ユニオンツール(6278 東京)などがあります。
これらの企業について散布図を作成すると、ROEとPBRの間におおむね比例関係があることが確認できます。その中で、オーエスジーについては割安方向にずれており、この点から、株価に割安感があるといえます。この割安感が解消された場合のオーエスジーのPBR(散布図の青破線に乗る水準)は2.7であり、相当する株価は6,700円(73%上昇)です。
<主な切削工具企業のROEとPBRの関係>
<主な切削工具企業10社のROEとPBR>
| 社名 | 証券 コード |
取引所 | 売上高 | ROE | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 億円 | % | 倍 | |||
| Sandvik | SAND | ストックホルム | 18,470 | 15 | 5.0 |
| ケナメタル | KMT | NYSE | 2,946 | 7 | 1.5 |
| オーエスジー | 6136 | 東京 | 1,606 | 8 | 1.8 |
| YG-1 | 019210 | 韓国 | 674 | 6 | 1.6 |
| Guangzhou KDT Machinery | 002833 | 深セン | 506 | 15 | 2.7 |
| 旭ダイヤモンド工業 | 6140 | 東京 | 420 | 3 | 1.0 |
| ユニオンツール | 6278 | 東京 | 402 | 8 | 4.0 |
| Shandong Weida Machinery | 002026 | 深セン | 400 | 7 | 1.2 |
| Kinik | 1560 | 台湾 | 392 | 18 | 12.7 |
| Bosun | 002282 | 深セン | 353 | 4 | 0.9 |
| 出所:各社資料より作成 | |||||
なお、これらの企業の予想配当利回りを比較すると、オーエスジーは3.0%の利回り(一株当たり配当115円で計算)となっており同業他社比で平均を上回る水準となっています。
<主な切削工具企業10社の株主還元>
| 社名 | 証券 コード |
取引所 | 昨年度 | 今年度 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 実績配当 | 総還元 | 予想配当 | |||
| % | % | % | |||
| Sandvik | SAND | ストックホルム | 2.0 | 2.0 | 2.1 |
| ケナメタル | KMT | NYSE | 3.5 | 5.9 | 2.3 |
| オーエスジー | 6136 | 東京 | 3.8 | 5.4 | 3.0 |
| YG-1 | 019210 | 韓国 | 1.0 | 1.0 | 0.8 |
| Guangzhou KDT Machinery | 002833 | 深セン | 3.7 | 3.6 | 4.0 |
| 旭ダイヤモンド工業 | 6140 | 東京 | 2.5 | 6.5 | 3.0 |
| ユニオンツール | 6278 | 東京 | 1.5 | 1.5 | 0.8 |
| Shandong Weida Machinery | 002026 | 深セン | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
| Kinik | 1560 | 台湾 | 0.6 | 0.5 | 0.9 |
| Bosun | 002282 | 深セン | 2.0 | 2.0 | 2.5 |
| 出所:各社資料より作成 | |||||
オーエスジーは今後も収益拡大が見込まれる中で、現在の株価3,879円には過去実績対比、同業他社比で割安感があります。過去実績対比で割安感が解消された水準は5,000円(29%上昇)、同業他社比で割安感が解消された水準は6,700円(73%上昇)です。
本コンテンツは情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身でご判断いただきますようお願いいたします。本コンテンツの情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本コンテンツの記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答えいたしかねますので、あらかじめご了承ください。また、本コンテンツの記載内容は、予告なしに変更することがあります。
当サイトの掲載画像には、Adobe社提供の画像生成AI「Firefly」を使用している場合があります。