ストップ高でも「まだ割安」

トウシル編集部(以下、トウシル):キオクシアの決算で特に印象的だった点を教えてください。

楽天証券経済研究所・今中能夫チーフアナリスト(以下、今中):最も印象的だったのは、業績の成長速度が高水準だという点です。non-GAAP(ストックオプション等の評価項目を除いたベース)で見れば、会社予想を上回る実績を残しています。

売上収益についても、2027年3月期第1四半期(4~6月)の1兆7671億円に対し、第2四半期(7~9月)の会社予想は2兆3900億円と、前四半期比で約35%の増加を見込んでいます。
 


キオクシアが急激に成長しているのは、単なる市況の影響だけではありません。NAND型フラッシュメモリやSSDの高性能化が進み、平均販売単価(ASP)が上昇していることが要因です。AIデータセンター向けの需要が非常に強く、高性能品の出荷が業績を大きく押し上げています。第2四半期の営業利益率も約79%という非常に高い水準が予想されており、現在のキオクシアの稼ぐ力は極めて強固です。


現在の売上収益の伸びが続けば、私が出している通期の業績予想はさらに上方修正となる可能性が高いと見ています。キオクシアの設備投資や市場シェアに対するスタンスには課題があると感じますが、ストップ高となった7月31日時点の株価をベースにした株価収益率(PER)で見ると、2027年3月期に5.5倍、2028年3月期に3.2倍に低下する見込みであり、株価はかなり割安だと考えています。

出所:会社資料

SKハイニックスへの対抗策は?

今中:キオクシアは1対3の株式分割と、8000億円を上限とした自社株買いを発表しました。この背景には、株価の大幅な調整に対する経営陣の危機感があると思われます。

出所:東京証券取引所

キオクシアの株価下落は、SKハイニックスが8~9兆円規模の巨額投資計画を発表し、メモリ市場の需給悪化が懸念されたことが大きな要因です。SKハイニックスとサムスンはDRAM増産に合わせて約80兆円を投じる計画も打ち出しています。

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SKハイニックスによる、これら巨額投資の背景には、「メモリ価格が高騰しすぎると、AIデータセンターの設備投資そのものが滞ってしまう」という懸念があります。

出所:会社資料

一方、キオクシアは決算説明会で、「シェアを追うための設備投資はしない。技術力向上を第一に考える」と高付加価値製品への注力を強調しつつも、「柔軟に考える」として含みを持たせました。

設備投資のタイミングを逃せば、シェアの低下や影響力の減退を招く恐れがあります。SKハイニックスの攻勢が強まる中、キオクシアが設備投資の金額を上乗せしていくのかどうかが、今後の株式市場での最大の注目材料となるでしょう。

7月31日の発言・発表内容
•    2026年9月30日付けで1対3の株式分割を行う。
•    8000億円を上限とした自社株買いを行う(2026年8月3日~10月30日)。
•    設備投資はシェア追求ではなく技術力向上を優先するが、状況に応じて柔軟に対応する。

メモリ株の「底打ち」に期待

トウシル:総合的に判断して、今回の発表はポジティブな側面の方が多いと思われますか?

今中:ポジティブな内容だと思います。株価が急落した背景には、SKハイニックスやサムスンの大型投資だけでなく、信用取引等によるレバレッジ取引の解消や追証回避の売りがありました。

しかし、足元の整理も落ち着いてきました。株価が下がったことによるPERの低さや利益成長率の高さに魅力を感じて再参入を検討する投資家も多いはずです。キオクシアだけでなく、マイクロンやSKハイニックスといったメモリ株全般の下落も、一応「底を打った」というのが私の考えです。