バーチャルトレードの効用は

株式取引やFX取引に興味や関心があっても、いざ始めようとなると、取引の仕方が分からず尻込みしてしまう個人投資家も多いようです。
そんな個人投資家にとって、仮想の投資資金を使って仮想売買をすることができるバーチャルトレードは心強い味方です。
このバーチャルトレードを使えば、実際に株式取引やFX取引の仕組み、注文の方法を学べるだけでなく、株価や為替レートの変動に伴う時価評価額や含み損益も一目瞭然です。そのため、たとえば株式取引であれば実際にこの銘柄を買っていたらどれだけの損益が生じたのか、FX取引であれば10倍のレバレッジをかけた場合に含み損益の変動がどのくらい大きいものになるのか、といったことを実感することができます。

バーチャルトレードでの大成功は実戦での大失敗につながる

しかし、気をつけたいのは、バーチャルトレードで順調に仮想資金を増やせたとしても、実戦で同じようにいくとは限らないということです。
例えばバーチャルトレードによる運用成績を競うコンテスト。コンテストで上位に入賞すると賞品がもらえるものもありますが、こうしたコンテストでの成績上位者の運用成績をみると、驚くほど高いパフォーマンスをあげているのが分かります。
怖いのは、バーチャルトレードで大きく仮想資金を増やすことのできた人が、なぜ自身が仮想資金を大きく増やせたのかよく理解できないまま実戦の株式取引・FX取引をはじめてしまうことです。
仮想資金を短期間で大きく増やすためにはかなり無理をした投資をしなければなりません。相場が思ったとおりに動けば莫大な利益を得ることができる反面、逆方向に動けば下手をすると投資資金のほとんどを失ってしまう、そんなリスクの高い投資を繰り返さなければならないのです。
この点を気づかずに、バーチャルトレードでの成功体験をそのまま実戦に持ち込むと、大失敗につながりかねません。
バーチャルトレードはあくまでも「ゲーム」「遊び」と割り切り、同じような投資スタイルを実戦に持ち込まないことが大失敗を避けるためには必要です。

バーチャルトレードでは「恐怖心」が生まれない

筆者が考えるバーチャルトレードの最大の欠点、それは「恐怖心」を経験することができないという点です。バーチャルトレードは当然ながら身銭を切って投資しているわけではありません。したがって、株価や為替相場が急変して含み損がみるみる拡大することによる「恐怖心」を感じることができません。
しかしながら実戦ではこの「恐怖心」を知ること、そしてそれをコントロールすることが非常に重要になってきます。2008年秋のリーマンショック以降の株価暴落や為替の急速な円高は、市場参加者や個人投資家を未曾有の恐怖に陥れました。本当に自分の資金がゼロになるかもしれないと皆がパニックになる中、損失を最小限に抑えて乗り切らなければならなかったのです。そのためには、「恐怖心」をコントロールし、パニックにならずに常に冷静に投資行動をすることが求められます。
また、投資では「無理をしない」のも重要な点の1つです。無理をしないというのは、株価が下がったり、為替レートが変動して含み損が生じても、恐怖心を感じずに平常心を保っていられる程度の資金量に運用資金をとどめることともいえます。例えば、株価下落の最終局面で起こる「投げ売り」は、投資家がパニックになり恐怖心が高まることにより引き起こされます。恐怖心が高まって投げ売りまで追い込まれるほどの大勝負をしてはいけないということ、そして恐怖心が高まるほどの含み損を抱える前に早めの損切りを心がけることが重要です。

何はともあれ実戦が一番の教科書

上記のようなことは、実際に一度恐怖心を感じてみないとなかなか理解できません。しかし、これらはバーチャルトレードをしていただけでは決して気がつくことができないのです。含み損がどれくらいになれば恐怖心を感じるかを体験することができれば、自分自身のリスク許容度の把握にもつながり、自ずと身の丈に合った投資スタイルを構築することになります。
恐怖心を感じれば、無理をした投資は自然と控えるようになりますし、早めの損切りが重要だということも理解できるようになります。そのためには、バーチャルトレードで取引の方法や仕組みを一通り学んだら、バーチャルトレードはすぐに卒業して、自分の資金を使って実戦で学ぶことです。そして、早めに失敗して恐怖心を感じることができれば大いに結構です。投資も他の物事と同じで、失敗し、反省し、同じ失敗を繰り返さないようにすることで上達していくものです。そのためにはまずは実戦あるのみです。

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