上昇相場でも銘柄ごとの上昇率は大きく異なる

上昇相場ではほぼすべての銘柄の株価が上昇し、逆に下落相場であればほとんどの銘柄の株価は下落します。
しかし、個別銘柄においては上昇相場での上昇率、下落相場での下落率ともに銘柄ごとに大きく差があることも事実です。例えば、今年2月~4月にかけ、日経平均株価が9,867円39銭の安値から11,408円17銭の高値をつけるまでの上昇率は15.6%でしたが、個別銘柄をみるとこの間15.6%よりはるかに大きく上昇したものもある反面、上昇率が15.6%より小さかったもの、さらには逆に下落してしまったものと、様々でした。
上昇相場で日経平均株価を大きく超える上昇率が得られるような銘柄選びを行い、限られた資金でできるだけ高い成果をあげたいと思う個人投資家の方も多いのではないでしょうか。

業界下位銘柄や低位株ほど株価変動が大きい

とするなら、株価変動が大きく、相場上昇時に高い上昇率が期待できる銘柄に投資するのが効果的となります。
一般的に、同業種であれば業界上位銘柄より下位銘柄の方が、株価変動が大きくなります。これは、業界上位銘柄は相対的に業績が安定している一方、業界下位銘柄は業績の変動が激しい傾向にあることが1つの理由ではないかと考えられます。
また、株価水準自体が高い銘柄よりも低い銘柄の方が株価変動は大きい傾向にあります。株価10,000円の値がさ株が10%上昇する間、株価50円の低位株は50%上昇した、ということはよく起こります。ただし、あまりに株価が低い銘柄は倒産リスクも高まりますから注意しましょう。
さらに、東証1部銘柄よりもマザーズ、ヘラクレス、ジャスダックなど新興市場銘柄の方が株価変動は大きくなります。今年3~4月の上昇局面で、新興市場銘柄の多くが株価2倍、3倍に跳ね上がったのは記憶に新しいところです。

株価変動の大きい銘柄は上昇率も下落率も高い

株価変動の大きい銘柄を狙って上昇局面での投資効率を高める場合に最も注意しなければならないのは、「株価変動の大きい銘柄は上昇相場での上昇率だけでなく下落相場での下落率も高い」ということです。
前述のように、業界下位銘柄は業界上位銘柄より業績の変動が激しい傾向にあるため、株価上昇時の上昇率も大きくなる反面、株価下落時の下落率も大きくなります。
同様に、信用リスクにより敏感に反応することもあって、株価が低い銘柄の方が株価の高い銘柄よりも下落率が大きくなる傾向があり、また新興市場銘柄も東証1部銘柄より下落率が大きくなるのが通常です。
例えば今年5月の株価急落局面では、東証1部上場銘柄の下落率がせいぜい20~30%であったのに対し、新興市場銘柄の多くは50%以上下落しました。
このように、株価変動の大きい銘柄は、うまく上昇相場をつかむことができれば非常に高い利益率をあげることができる可能性がある反面、うまくいかなかったときに速やかに損切りをしなければ、その後の下落で多額の含み損を抱えて身動きが取れなくなってしまう危険性が大いにあります。したがって、損切りの重要性が非常に高いのです。

ベータ値で銘柄ごとの株価変動の特徴を知る

個別銘柄の株価変動の大きさを表すものに「ベータ値」というものがあります。
ベータ値とは、指数(日経平均株価やTOPIX)の動きに対する個別銘柄ごとの感応度を表すものです。ベータ値が1の銘柄は、指数と同じ動きをする、つまり指数が1%上昇したらその個別銘柄も1%上昇することを示します。ベータ値が3であれば、指数が1%動けば個別銘柄は同じ方向に3%動く、とう意味です。ベータ値が高いほど株価の変動が大きい、逆に低いほど株価の変動が小さいといえます。まれにベータ値がマイナスの銘柄がありますが、これは指数とは逆の値動きをすることを表します。
つまり、上昇相場ではベータ値の高い銘柄を選んだほうが、より高い利益率を得られる可能性が高いということです。なお、ベータ値の高い銘柄は下落に転じた時の下落率も大きいので、損切り等のリスク管理はシビアに行う必要があります。
ベータ値はあくまでも過去の値動きから算出したもので、将来の値動きを保証するものではありません。しかしながら、ベータ値をみれば、業種・銘柄ごとの値動きの特徴は明らかになります。その意味で、非常に参考になる情報といえます。

これ以外にも、信用取引を用いて投資効率を高め、利益の極大化を狙う方法もあります。信用取引についてはこのコラムの第22回、第23回をご覧ください。
いずれにせよ、株価変動の大きい銘柄を選んで大きな利益を狙うのであれば、投資資金量や損切りといったリスク管理が重要となるのは間違いありません。