まずは上昇相場の兆しをいち早く察知すること

前回、上昇相場に乗り遅れたときの主な行動パターンのメリットやリスクを説明しました。でも、上昇相場の初期段階で上昇相場であることを察知し、安値で買っておくことができれば、悩む必要もなくなるわけです。そのためにはどうすればよいか、筆者なりの方法をご紹介します。

上昇相場入りしたとなれば、どこかに何らかのサインが見つかるはずです。日経平均株価やTOPIXといった株価指数に底入れの兆しが見えたり、騰落レシオが底打ち・反転となったりします。また、新興市場株が本格的に上昇するような上昇相場であれば、マザーズ指数やヘラクレス指数、ジャスダックインデックスといった新興市場の株価指数が底入れします。こうした「上昇の兆し」を見つけるために、まずは定期的に、最低でも週1回は株価指数の株価チャートや騰落レシオをチェックしておく必要があります。

次に上昇相場の「テーマ」を見つけ出す

次に、その上昇相場での「テーマ」をいち早く見つけ出すことが重要です。
一口に上昇相場といってもいろいろあります。2005年や2009年3月~6月頃のように、ほぼすべての銘柄が大きく上昇する全面高相場もあれば、2000年前後のITバブル相場のように、一部のネット関連銘柄だけが大きく買われる反面、内需系中低位株をはじめ安値を更新し続ける銘柄も多く出現する、といった爬行(はこう)色の強い上昇相場もあります。値がさハイテク株が大きく上昇する上昇相場もありますし、中低位株が軒並み何倍にも跳ね上がる上昇相場もあります。特に全面高相場以外の上昇相場では、テーマに合致した銘柄へ投資しないと、一向に利益をあげることができなくなってしまいます。
上昇相場のテーマは、他の銘柄に先行して上昇している銘柄の共通点から導き出すことができます。したがって、どんな銘柄が上昇しているのかをいち早く察知するために、まず上場銘柄を、業種・市場などが偏らないよう100銘柄ほどピックアップしておきます。それらの銘柄を、同じような値動きをしやすいいくつかのグループにまとめ、株価の動きを定期的に観察しておくのです。

株価が上昇しているグループを探し出す

グルーピングの方法は、業種、上場している市場、過去の株価の動きや高値・安値をつけた時期などをもとに行います。筆者であれば「値がさハイテク株」「銀行株を含めた内需大型株」「中低位株」「新興市場株」といった具合です。その上で、ピックアップした銘柄のうち明確に上昇しているようなものがあれば、他の銘柄の株価もチェックして、全体的に上昇をはじめているグループがあるかどうか確認します。そして、そのグループ内でまだ本格的上昇に至らず出遅れている銘柄を探し、新規買い候補としていきます。必要に応じて、上記でピックアップしている銘柄以外にも、同じグループに分類される出遅れ銘柄がないかどうかチェックします。
なお、ここでの「出遅れ」というのは、あくまでも上昇相場初期段階での出遅れであり、上昇相場がかなり進展した後の出遅れ銘柄(出遅れている何らかの理由・マイナス要因が隠れている可能性が高い)とは意味合いが異なることを申し添えておきます。

また、日々の値上がり率や売買高ランキングの上位銘柄や、新高値更新銘柄のチェックも有効です。本格的な上昇相場となる前に、先行して大きく値上がりする銘柄がいくつかあるものです。これらの銘柄の共通点を分析することで、その後到来する上昇相場の特徴やテーマを予測するうえでのヒントとなります。

実行には労力もかかるうえに相応のリスクも伴う

このように、上昇相場の初期段階で買おうとすると、常に株式市場や個別銘柄の動きを追いかける必要があります。実際に実行するのは結構大変かもしれません。
したがって、精度や買いタイミングの面では多少劣るものの、次のようにすれば労力も多少は減らせると思います。

  • 観察銘柄を大幅に絞り込む(自分の興味ある銘柄だけにする)
  • 観察銘柄の株価チェックの頻度を減らす(例えば毎週末のみとする)
  • 株価指数や個別銘柄等の底打ち・上昇の兆しの有無は日足チャートではなく週足チャートで観察する(観察が週1回ですむ)

さらに、上昇相場の初期段階で買おうとすると、上昇相場ではなく単なる下落途中の一時的な戻りを買ってしまう、というリスクも高くなります。
したがって、上昇初期で買おうとするならば、それが本格的上昇でなくあや戻しのダマシだったことが判明次第、すみやかに損切りすることが非常に重要です。
こうした一時的なあや戻しにできるだけ引っかからないようにするためには、例えば日経平均株価や個別銘柄の多くが25日移動平均線(日足チャートでの分析の場合)や13週移動平均線(週足チャートでの分析の場合)の上方で恒常的に推移するようになって、上昇相場入りの確度が高まった段階で買い出動するようにします。これなら、株価は底値からある程度上昇してしまってはいるものの、失敗は減らせるのではないかと思います。