信用取引で絶対に避けるべきは「追証」

信用取引は、一般に最高で保証金の約3倍のレバレッジをかけることができるため、失敗すると最悪の場合資金をすべて失いかねません。そのような事態は絶対に避けなければいけません。
ただ、通常は保証金の全額を失う前に、警告が発せられます。「追証」(おいしょう。追加保証金差し入れ義務)と呼ばれるものです。
差し入れている保証金から、信用取引による含み損を差し引いた額が、信用取引総額の20%未満になると、翌々日の正午までに不足する保証金を追加で差し入れる必要があります(楽天証券の場合)。これが追証の制度です。もし、追加保証金を期日までに差し入れなければ証券会社が強制的に決済をして信用取引を終了させます。
追加で保証金を差し入れれば、強制決済は免れます。しかし、追証が発生したということは、その信用取引が失敗だったことを意味します。さらに株価が下がれば、再び追証が発生してしまいます。負け戦をいつまでも引き延ばせば、傷がどんどん深くなるばかりです。勇気ある撤退も時には必要です。
追証の発生は、信用取引による失敗の典型例です。したがって、追証を発生させないためにはどうすればよいかを考えれば、おのずと信用取引で失敗しないための重要な点が浮かび上がってきます。

信用取引(信用買い)で必ず守るべき3つの鉄則

信用取引で「追証」を引き起こさないために、以下の3つを必ず守るようにしましょう。

その1:逆張りをしない

信用取引は6ケ月という期日があります。6カ月が経過すれば、いくら含み損を抱えていようと決済しなければなりません。このことから、信用取引は短期決戦とすべきであり、そのためには上昇トレンドにある銘柄へ投資する「順張り」が鉄則となります。株価が下降トレンドにある銘柄を信用買いするような「逆張り」は厳禁です。
現物取引であれば、保有株が多少含み損を抱えても、持ち続ければ時間が解決してくれることもあるでしょう。しかし、期間に制限のある信用取引では、時間を味方にすることはできません。
下降トレンド途中の銘柄に信用買いをすれば、下手をすると含み損の拡大で追証発生、という事態にもなりかねません。したがって、近い将来に株価が上昇する可能性の高い上昇トレンドにある銘柄を信用買いすることが重要なのです。
また、信用取引ではナンピン買いは厳禁です。ナンピン買いはまさに「逆張り」の典型例です。ナンピン買いをした後にさらに株価が下がれば、追証の危険はさらに高まってしまいます。

その2:損切りを遵守する

追証の原因は、つきつめれば含み損が拡大することにあります。したがって、含み損をいたずらに拡大させないために、損切りの確実な実行が求められます。
現物取引であれば、買った株が大きく値下がりしても、塩漬け覚悟で持ち続けることもできます(筆者は推奨しませんが)。しかし、信用取引で買い建てた株が大きく値下がりした場合は、含み損が拡大し、追証が発生してしまうことも大いにあります。その場合、追加で保証金を差し入れなければ強制決済されてしまい、持ち続けたくても持ち続けられないのです。
追証を避けるためには、早めの損切りが鉄則です。そうすれば、追証に陥ったときよりもはるかに浅い傷で済みます。

その3:取引枠いっぱいに信用取引をしない

信用取引は最大で約3倍のレバレッジをかけることができます。レバレッジを高くすれば、成功したときの利益も大きい反面、逆に損失も大きくなる危険があります。
取引枠いっぱい、つまり保証金の3倍の金額まで信用取引をした場合、株価が買値より約13%下がっただけで追証が発生してしまいます。
しかし、信用取引の総額を保証金と同額にとどめておけば、買値より80%超の株価下落でなければ追証が生じることはありません。つまり、レバレッジを低く抑えることで、追証を防ぐことができるのです。
もちろん、買い値より大きく値下がりする前に、第2の鉄則である損切りを実行すべきなのはいうまでもありません。

信用取引で大きく失敗するのは、取引枠いっぱいまで信用取引を行い身の丈を超えた大勝負をして、かつ損切りをはじめとした適切な対処を取らなかった場合です。
したがって、信用取引をはじめるときは、無理のない範囲で行うことをお勧めします。その上で、信用取引に慣れてきてリスク管理を万全に取ることができるようになってから、だんだんと取引規模を拡大していけばよいでしょう。