AI相場の調整が続く今週の米国株市場

 今週の米国株市場ですが、先週に引き続き、AI・半導体関連銘柄が売りに押される場面が目立っています。

<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月8日時点)

<図1>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月8日時点)
出所:MARKETSPEED IIおよびBloombergデータを基に作成

 図1は2025年末を100とした米主要株価指数のパフォーマンス比較のグラフですが、主要な半導体関連銘柄で構成されるSOX指数(フィラデルフィア半導体株指数)の値動きが、ここ数週間で荒くなっている様子が分かります。

 また、直近では株価の上げ下げを繰り返しながら下値が切り下がっているため、AI相場が調整相場入りしている様子がうかがえます。

<図2>米SOX指数(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)

<図2>米SOX指数(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)
出所:MARKETSPEED II

 実際に、図2の日足チャートを見ると、8日(水)時点のSOX指数の株価が、25日移動平均線を下抜けて50日移動平均線あたりに位置しているほか、下段のMACDも「0pライン」近くまで低下するなど、下方向への意識を強めています。

 さらに、株価水準の視点でも、足元の株価が弱気相場入りの目安となる「高値から20%安」水準近くまで下落しており、AI相場が調整局面入りしていることが確認できます。

AI相場の行方を占う来週の企業決算に注目

 そのため、今後のAI相場は、「調整が一巡した後に復活していく」のか、もしくは、「調整がさらに進んで弱気相場入りする」のかが注目点になります。

 そんな両者の行方を左右するのが、間もなく本格化する決算シーズンになります。そこで、現時点でのAI・半導体関連企業の主な決算発表スケジュールをチェックしていくと図3のようになります。

<図3>AI・半導体関連企業の決算発表スケジュール

<図3>AI・半導体関連企業の決算発表スケジュール
※2026年7月8日時点。今後の発表スケジュールは変更される可能性があります。
出所:Bloombergデータを基に作成

 まずは、来週に予定されているオランダのASML(ASML)と台湾のTSMC(タイワン・セミコンダクター・マニュファクチャリング:TSM)の決算が注目されます。

 ASMLは半導体製造装置を手掛けている企業、TSMCは半導体の受託製造を担っている企業であり、両社の決算からは、取引先の半導体企業が増産に備えて注文を増やしているかどうかを判断する試金石になります。

<図4>蘭ASML(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)

<図4>蘭ASML(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)
出所:MARKETSPEED II

<図5>台湾TSMC(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)

<図5>台湾TSMC(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)
出所:MARKETSPEED II

 図4と図5は両社の日足チャートです。6月30日に高値をつけた後に下落し、足元の株価は25日移動平均線を少し下抜けたところに位置しています。高値から10%安の調整局面入りが意識されていることなど、チャートの形状が非常に似ていることが分かります。

 もっとも、50日移動平均線までは距離を残していて、上昇トレンド自体が崩れる手前で踏みとどまっている印象です。いずれにしても、調整局面の水準まで株価が下落しているだけに、決算の内容が好感されれば、上昇基調に戻りやすい状況ともいえます。

 今週7日(火)に韓国のサムスン電子が業績速報(暫定値)を発表し、その内容はおおむね好調だったものの、株式市場がネガティブな初期反応を見せただけに、市場が描いている期待のハードルは高く、サプライズ的な業績の上振れが求められていることには警戒しておく必要がありそうです。ちなみに、サムスン電子の正式な決算は30日(木)に発表される予定です。

 さらに、再来週にはアルファベット(GOOGL、GOOG)、その翌週にはマイクロソフト(MSFT)やメタ・プラットフォームズ(META)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)といった、AI投資を行っている「ハイパースケーラー」の決算が予定されています。

 これらのハイパースケーラーはすでに巨額のAI投資を行ってきましたが、今後も旺盛なAI需要が見込まれる中、「しっかりと利益を生み出せているか」「投資の手綱を緩めていないか」「投資を続けられる財務力があるか」「競争が激化する中での優位性を持っているか」などが論点になります。

地政学的リスクが揺るがした「循環物色」にも注意

 続いて、今週の別のレポートでも触れた「循環物色」の動きについても確認していきます。

 同レポートでは、AI・半導体関連銘柄内での循環物色と、グロース株からバリュー株への循環物色の二つの動きを紹介しました。基本的にこうした循環物色の流れは、今週も継続していると思われます。

<図6>米S&P500(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)

<図6>米S&P500(日足)とMACDの動き(2026年7月8日時点)
出所:MARKETSPEED II

 図6は、S&P500種指数の日足チャートとMACDの動きを描いています。

 50日移動平均線がサポートとして機能しつつ下値を切り上げているほか、下段のMACDも上向きとなってシグナルを上抜けています。株価水準についても、足元の株価は調整局面入りの目安である「高値から10%安」の水準(6,858p)から上放れしており、先ほども見てきた図2のSOX指数と比較すると、S&P500は底堅い値動きになっていることが分かります。

<図7>業種別S&P500のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月8日時点)

<図7>業種別S&P500のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年7月8日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 また、図7は、昨年末を100とした業種別S&P500のパフォーマンス比較ですが、テック企業が多い「情報技術」は6月上旬にピークをつけて以降、水準を切り下げてもみ合いが続いている一方、資本財や金融、ヘルスケアなどの業種が回復基調をたどっており、グロース株からバリュー株へ買いが向かう循環物色の様子がうかがえます。

 ただ、ここ1~2日の動きを見ると、エネルギーが上昇する一方で、全体的に売り優勢に傾いていることが確認できます。

 こうした動きの主因となったのは、中東情勢への不安が高まってきたことです。今週に入ってイランがホルムズ海峡を通過中の船舶に攻撃し、これに対して米国がイランに報復攻撃を行ったことが報じられました。

 これにより、「米国とイランの交渉期限となる8月中旬までは小康状態が保たれるだろう」という市場の前提が揺らぎ、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)などの原油先物市場が上昇し、それに伴ってインフレ警戒が高まったことが売りを促しました。

 イランでは9日(木)まで故ハメネイ師の国葬を行っていた最中に攻撃を行ったこともサプライズになったと思われます。

 とりわけ、金利の上昇は、実体経済への影響や、理論株価を計算する際の割引率を上昇させて許容できる株価収益率(PER)を引き下げるなど、株式市場にとってネガティブに働きます。

<図8>日米の10年債利回り(日足)の動き(2026年7月8日時点)

<図8>日米の10年債利回り(日足)の動き(2026年7月8日時点)
出所:Bloombergデータを基に作成

 図8は日米の10年債利回りの推移を示したものですが、日米ともに足元で利回り(金利)が上昇基調をたどっています。特に米国では、10年債利回りが4.5%を超えてくると、株式市場が売られやすいという傾向がここ2年ほど見られます。

 実際に図1を見ても、これまで堅調に上昇していたラッセル2000が今週に入って微妙に下落していますが、金利や景気の影響を受けやすい中小型株で構成される指数の性質が反映されているほか、図6のS&P500も「上値ライン」を抜けきれない要因の一つになっていると思われます。

 従って、今後数週間の株式市場は、企業決算を通じたAI相場の復活の有無と、金利動向の組み合わせで方向感を探る展開になりそうです。