プロの投資家の「株価予想」

年末・年始に新聞や雑誌などをみて目につくのが、「今年の日経平均株価の高値・安値」や「今年の注目株」をプロのアナリストや投資家にアンケートした結果についての記事です。
そもそも、プロなのだから、将来の相場予想もかなり高い精度で当てることができるはずだ、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ところがプロであっても日経平均株価の高値・安値の予想はバラバラです。例えば、ある専門紙のアンケート結果では日経平均株価の安値予想が7,000円~10,000円、高値予想が11,000円~17,000円とかなり幅があります。
また、こうした株価予想は当然のことながら何か突発的な大きな材料により株価が急騰したり、急落することまでは予想できない点に注意が必要です。実際、2008年には日経平均株価が7,000円割れにまで大きく下落しましたが、これを予想できたアナリストを私は知りません。
プロでも将来の株価予想は大きく見解が分かれ、さらに2008年のように当たらないこともあるのですから、結局将来の株価を予測するのは誰もが不可能に近い、と思っておいたほうがよいでしょう。

プロが挙げる注目株は「無難な銘柄」が多い?

プロの投資家が挙げる「今年の注目株」については、傾向として次のようなことがいえます。

  • 好業績が比較的安定して続いているいわゆる「優良株」が多い
  • 誰でも知っているような有名企業が多い
  • すでに人気化し、株価が大きく上昇している銘柄が多い

少々穿った見方をすれば、「この銘柄を挙げておけば安心」「例え外れても説明がつきやすい」といった銘柄をあえて選んでいるのではないか、というようにもみえます。もしかしたらアンケートで回答した注目株の他に大本命銘柄があるのかもしれません。

プロの予想より株価のトレンドを第一にチェック

ではどうするべきか?
私たち個人投資家は、プロの株価予想を鵜呑みにするのではなく、日経平均株価、TOPIX、そして個別銘柄の株価の動きを常にチェックしてトレンドを注視すべきです。
上昇トレンドであるならば保有株の持続、もしくは新規買いを行う。下降トレンドならば新規買いは控え、保有株の売却も検討する。このような投資行動原則が重要です。
そこには、投資のプロによる株価予想が入り込む余地はありません。極端な話、将来の株価予想は無視しても構わないのです。プロの予想は当然のことながら予想でしかなく、あくまで参考であることを強く意識するべきです。

また、株価が1年のうちいつ頃高値・安値をつけるかにつきアンケートをとると、一般に、安値は年前半、高値は年後半に集中しやすくなる傾向があることにも注意が必要です。先の専門紙のアンケートでも、安値をつけるのは1~3月、高値をつけるのが12月、という予想が非常に多くなっています。これは、プロの投資家であっても、心の中で株価というものは時間の経過と共に右肩上がりに上がっていくという「神話」が残っており、さらに株価が上がって欲しいという期待も踏まえた結果からではないかと個人的には思います。しかし、右肩上がりに株価上昇という神話は20年前のバブル崩壊以後消え去りましたし、年の前半に安値、後半に高値をつけるケースはそれほど多くありません。
繰り返しになりますが、私たち個人投資家は、株価がいついくらになろうが、その時点での株価のトレンドに従って行動するのが最も重要なのです。

株価が大きく上昇した「注目株」より株価が安い不人気銘柄に期待

筆者が新規投資する銘柄を選ぶとしたら、「今年の注目株」に選ばれるような好業績ですでに高人気を得ている(=株価がすでにかなり上昇している)銘柄ではなく、業績が悪くないものの注目されずに株価が安値で放置されているものを見つけます。そして、株価チャートや相場全体の動きを見据えて(トレンド注視)買い仕込み、もちろん損切りルールの設定・実行も厳守して株価の大幅な値上がりを期待します。

相場のテーマや人気株は何年も同じものが続くことはめったにありません。前年にすでに人気化して株価が大きく上昇した銘柄が、翌年も引き続いて大きく上昇するというのは少数です。逆にすでに株価がかなり上昇している分、市場関係者の期待に応えられるような好業績が続かなければ、株価が大きく下落してしまうことも十分に考えられます。
それよりも、まだ誰も注目していないために株価が低いものの業績・財務状態も悪くなく、株価チャートをみても底打ちの兆しがみられるような銘柄を発掘する方が、大きく値下がりするリスクも少なく、なおかつ株価が大きく上昇する夢があって面白いのではないでしょうか。