株価が大きく上昇する銘柄を安く買えるチャンス

今年も残すところあとわずか。12月に入り日本株は反発局面を迎えていますが、個別銘柄をみると力強い反発となれないものも多く見受けられます。実質的には、2009年の日本株で比較的容易に利益を得ることができたのは、3月下旬~6月頃にかけてであり、それ以降は一部の銘柄を除けば実質的に下降相場でした。

でも、株価がここまで大きく下がっている今は、逆に考えればよい銘柄を安く買えるチャンスでもあります。
本コラムでは「失敗をいかにして避けるか」をテーマにしているため、どうしても「これはダメ」「あれもダメ」と、ネガティブなイメージになりがちなのですが、年の瀬を迎え、2009年の最終回である今回は、景気の良い話をしようと思います。
それは、「株価が大きく上昇する銘柄をどのようにして見つけるか」ということです。

高成長期待の銘柄は「10倍」どころか「10分の1」になる危険も

投資した株の株価が10倍になれば、これほど嬉しいことはありませんね。では、株価10倍を目指せる銘柄は、どのように探すのがよいのでしょうか?
多くの人がまず頭に思い浮かべるのは、「将来の高い成長性が期待できる銘柄」でしょう。業績が今後も伸び続ければ、株価もそれにつれて大きく上昇する……これは至極当然の考え方です。

しかし、その方法では、うまくいかないことが多いのが事実です。
その理由は大きく2つあります。

(1)成長性の高さがすでに株価に織り込まれている可能性が高い

自分が「この銘柄は将来高い成長が期待できる」と思っているならば、大多数の投資家が同じように考えていると思ったほうがよいでしょう。
つまり、その銘柄についている株価は、「将来の高成長」が十分に織り込まれた水準にまで達しているはずです。こうした銘柄の株価が買った後10倍になるには、現時点で投資家が考えている高成長よりさらに高い「驚きの超高成長」をしなければ難しいのです。そうなる可能性は非常に低いと言わざるをえません。

(2)成長性期待が高い分、その期待が剥げ落ちたときの反動安が大きい

(1)で述べたように、高成長が期待される銘柄の株価は、その期待感から株価が高い水準に位置しています。しかしながら、その銘柄が、投資家が期待しているような高成長を実際には達成できないと分かると、株価は期待感が剥げ落ちる分、大きく下落してしまいます。
ドリコム(3793)のチャートをご覧ください。このように、高成長の期待が剥げ落ちると、銘柄によっては買値から10分の1どころか100分の1以下まで下落してしまうこともあるのです。特に損切りができないような投資家にとっては、高成長が期待され、かつそのために株価が高水準に位置している銘柄への投資は非常にリスクが高いことをぜひ理解してください。


楽天証券マーケットスピードより

2009年02月27日 安値 48,000円

高成長期待の銘柄よりボロボロに売られた銘柄を探そう

これらのことから、将来高い成長が期待できるが、ほとんどの市場参加者がそれに気付いておらず、結果的に非常に低い株価に落ち着いている銘柄でなければ、「株価10倍」は難しいことが分かります。
確かに、自分自身に将来の世の中が見渡せるほどの先見の明がある人ならこうした銘柄を発掘できるかも知れませんが、筆者を含めほとんどの投資家にとっては無理な話です。
逆に、誰もが認める高成長期待の銘柄は、然るべきタイミングで損切りをしなければあっという間に株価が急落し、永遠に塩漬け株のままとなってしまいかねません。

それでは、「株価10倍銘柄」を掴むもっと現実的な方法とはどのようなものなのでしょうか。それは、「株式市場全体の低迷により、株価が大きく売られた銘柄」に投資することです。
日本株は2003年4月に一旦底打ちし、そこから大きな上昇をしました。中低位株の多くは、そこから5カ月ほど前の2002年11月に大底をつけました。
こうした中低位株の多くは、その後株式市場全体が上昇するにつれ、株価が大きく上昇しました。その中には、アシックス、住友金属工業、日本製鋼所、東急不動産など、数年で株価が10倍以上になった銘柄も多くありました。
今は株式市場全体がまだ低迷している局面ですが、逆に言えば、2002年11月~2003年5月ごろのように、将来株価が10倍以上になる銘柄を安く買うことができるチャンスでもあるのです。

「10倍銘柄」の具体的な銘柄選択の方法は

もちろん、株価が低い中低位株ならなんでもよいわけではありません。次のような点に気をつけて銘柄選択をするとよいでしょう。

(1)できるだけ業績や財務状態が悪くない銘柄を選ぶ

株価が低い銘柄の中には、倒産リスクの高い銘柄も多く含まれています。その一方で、2002年秋~2003年春のときも、株価100円割れにかかわらず、黒字かつ無借金という銘柄もありました。借入金ができるだけ少なく、キャッシュを多く保有し、かつ黒字を維持しているような銘柄を選べば倒産リスクは減少します。

(2)複数の銘柄に資金を分散させる

いくら倒産の危険性が低い銘柄に投資したとしても、100%倒産リスクが回避できるわけではありません。また、将来どの程度株価が上昇するかも事前には分かりません。そのため、最低でも10銘柄程度に分散して投資すべきです。

(3)株価の下げ止まりを待ち、かつ損切りルールも明確に設定する

いくら株価が安いといっても、株価が下げている最中で買わないようにしましょう。いくらまで下げるかは分からないからです。また、「底打ちした」と思って買ってみても、底割れしてしまうこともありえます。そんなときは一旦損切りし、次のチャンスを待つようにしましょう。

「株価10倍銘柄」を確実に探すのは難しくとも、上で挙げたような方法をとれば、10銘柄のうち2つ、3つくらいは株価が10倍になることは大いに期待できますし、それ以外の銘柄も10倍まではいかなくとも、3倍、5倍程度の上昇は十分に可能です。
上でチャートを紹介したドリコムも、株価が100分の1にまで下がり、誰もこの銘柄の成長性に期待しなくなってから底打ちし、たった3カ月で底値から株価が10倍以上に上昇しているのです。
「10倍銘柄」を無理に狙うのではなく、株式市場が低迷しているときに、株価が低くかつ倒産の危険性のできるだけ低い銘柄に複数投資しておいたほうが、結果的に「10倍銘柄」にめぐり合える可能性が高まります。

終わりに:新年に向けての抱負

あと少しで新年を迎えます。人口が減少に転じ、日本経済を引っ張る成長の原動力も見えてこない中で、日本株の将来に期待が持てない投資家が増えているようです。しかし、筆者は日本株もまだまだ捨てたものではないと思っています。何をきっかけにして本格的な上昇局面を迎えるかは分かりませんが、損切りを徹底し、来るべきチャンスに備えて資金管理を行っていれば、日本株への投資で大きな成功を収めることも大いに可能です。
本当のチャンスが来るまでに、多くの個人投資家が失意のもとに退場したり、戦意喪失に陥ってしまいます。チャンスに参加できるのは個人投資家のうちの一握りでしょうが、今このコラムをご覧になっている皆さんには参加する資格があります。本当のチャンスが来るまで生き残って、やがては笑顔を享受できるように頑張りましょう。筆者も微力ながらそんな個人投資家の皆さんのお役に立てるよう、有用な知識・情報提供に努めてまいります。
それでは皆さん、良いお年をお迎えください。