リーマン・ショックを契機とした世界同時株安から1年がたちました。その間、世界中の株式市場は安値から大きく値上がりました。日本株も、日経平均株価が今年3月の7,000円からわずか半年で50%以上の上昇率となっています。中国株など、日本株よりはるかに大きい上昇率をみせている株式市場も数多く見受けられます。
さて、この株高の要因はどこにあるのでしょうか。一般的にニュースや新聞などで解説されているのは「世界的な景気回復期待」というものです。しかし、筆者はこの点につき懐疑的にみています。
確かに、各種経済指標には下げ止まりから若干の上昇に転じているものも見受けられますが、全体的にはまだマイナス幅が縮小した、という段階であり、水面下から浮上したとはいえないでしょう。個人的にはここから力強い景気回復をみせるようには現時点では思えません。

もちろん、将来の景気や株価がどうなるかを完全に予測するのは不可能ですし、もしかしたら今の世界的な株高はバブルではなく本当に将来の本格的な景気回復を先取りしているのかも知れません。
しかし、金融危機克服のための世界的な大規模の金融緩和政策に伴うカネ余りによって株価が上昇しているのは事実でしょう。
つまり、現在の世界的な株高はカネ余りを背景とした「バブル相場」という認識を持って臨むべきであるというのが筆者の考えです。

バブル相場は周期的に巡ってくるものです。日本株であれば1989年を頂点としたバブル相場、2000年~2001年をピークとしたITバブル相場、2006年初めのライブドア・ショックにより終焉を迎えた新興市場バブル相場が最近では有名なところです。
また、景気が悪い中をカネ余りにより株価が上昇する相場を「金融相場」とか「不景気の株高」と言いますが、今年3月以降の株価上昇はまさに金融相場の様相をみせていました。
バブル相場は「カネ余り」の状態の中、株式市場に資金が流れ込むことにより起こりますから、金融相場もバブルの一種と考えてよいでしょう。

今後、金融引き締め政策により市場にあふれたマネーの回収が行われるのでなければ、大規模なバブル相場が本格的に訪れる可能性が高いといえます。もしかしたら、3月以降の株価上昇ですでにバブル相場は始まっているのかもしれません。
したがって、バブル相場との付き合い方を今のうちによく考えておく必要があります。

バブル相場を「バブル相場だ」と思って臨むのと、そうでないのとでは、最終的な投資結果に大きな違いが表れます。
「バブル相場だ」と思いながら投資すれば、「いつかはどこかで破裂する」と分かって投資しますから、常に「出口」を考えて行動するはずです。あまり無理をせず、バブルの途中で持ち株を売り払って降りてしまうこともあるでしょう。その結果、さらなる高値を取り逃して悔しい思いをするかもしれませんが、それでよいのです。いつまでも持ち続けていたら、バブルがはじけてあっという間に株価が急落してしまう可能性が高いのですから。
もし、「バブル相場」をバブルではなく、「景気が良いからこれだけ株価が上昇している」などと勘違いしてしまえば、バブルの頂点を迎えてその直後から激しい下落に見舞われても、「景気が良いのだから持ち続ければまた上昇に転じる」などとつい考えてしまいがちです。その結果、逃げるに逃げられず、持ち株が多額の含み損をかかえてしまうのです。

バブル相場は経済や景気実態と株価が乖離する現象です。金融相場であれば、まさに「不景気の株高」ですから、景気実態と株価の動きは逆になります。また、本格的なバブル相場では、景気実態と株価の方向性は同じことが多いですが、株価が大きく上に行き過ぎた状態になります。
従って、景気実態や経済指標をみていれば、それらと株価の動きとの乖離からバブル相場であるかどうかは気付くはずです。
しかしながら、「景気実態や経済指標に比べ株価の動きだけが異様に強い。これはバブルだから株式投資に手出し無用」と思ってしまうのも個人的にはもったいない気がします。
もちろん、景気実態や経済指標と株価の乖離という歪みは、多くは株価下落という形でいつかは解消されるものですから、それまでは株式投資を控えてじっとしている、というのも1つの投資戦略です。
でも、いくら実態と株価が乖離しているとはいえ、株価が大きく上昇するのを逃す手はないというのが筆者の考えです。
筆者はバブル相場が悪いとは思いません。うまく乗りこなせば大きな利益を投資家に与えてくれるチャンスになるからです。要は、「今はバブル相場なのだ」と割り切って投資ができるかどうかです。

バブル相場では、できるだけ上昇の恩恵を受けつつ、欲張り過ぎないようにするのが肝要です。そのため、売買のルールを決め、それに従って取り組むことが重要です。 例えば、株価の上昇に応じて少しずつ機械的に利食いを出す、上昇トレンドが下降トレンドに変化したら残りの持ち株も売る、というようにです。売った株を再び買い直すときは、すでに株価が高い位置にあるので、損切りを徹底するようにしましょう。バブル相場はババ抜きゲームですから、ババをつかんだと思ったら損切りしてとにかく逃げることが大事です。バブルが破裂してもいつまでも持ち続けるという「バイ・アンド・ホールド戦略」では塩漬け株で身動きの取れない状態になる危険が大です。

また、バブル相場では、1989年にかけてのバブル相場のようにほぼ全ての銘柄が大きく上昇するようなケースと、2000年にかけてのITバブル相場のように、ITと無関係な銘柄の株価は全く反応せず、逆に下げ続ける、というケースがあります。
今年の7月以降は日経平均株価、および日経平均株価採用の値がさ株など一部の銘柄だけが強く、銀行株をはじめ多くの銘柄は逆に下落基調が続いています。ITバブル相場はこれと同じような動きをイメージしてもらえば分かりやすいでしょう。
したがって、いくらバブル相場が発生しようとも、銘柄選択を誤れば全く儲からないことも十分に考えられます。場合によっては割り切って「強い銘柄」につく、ということも必要になります。もちろん、そうした銘柄は高値掴みの危険性と隣り合わせですから、損切りのルール設定と実行が重要になるのは言うまでもありません。