はじめに

個人投資家の90%は、株式投資で思うような成果を挙げられていないといわれています。株式投資で失敗しないためには、やはりある程度の知識やテクニックが必要です。

そこで、株式投資がなかなかうまくいかない、という個人投資家の皆様を対象とし、教科書的な内容ではなく、実践に裏打ちされ、導き出された「すぐに役立つ真の基礎知識」をご紹介します。
個人投資家が負けない、失敗しないためにはどのように行動すればよいのか、そのためのヒントを提供していきます。

難しい内容は極力避け、本当に必要な基本的知識・テクニックに絞ってご紹介していきます。そのため、中には、すでにご存知の内容も含まれているかもしれませんが、そんな時は、頭の整理・復習を兼ねてお読みいただければ幸いです。

株式投資で失敗しない、負けないためには、「なぜ失敗してしまうのか」をまず知ることが必要です。
しかし、多くの個人投資家は、失敗してもその原因を深く追求することなく、再び同じ失敗に陥ってしまいがちです。

株式投資に限らず、ビジネスでも人生でも、「失敗」はその後の成功につなげるために非常に役に立ちます。なぜなら、失敗の原因を知ることで、同じ過ちを繰り返さないようにすることができるからです。
株式投資においても、なぜ失敗してしまったのかをよく考えてみることが必要です。

私たち個人投資家が株式投資で失敗した、と感じるのは、主に次のような局面でしょう。

(1)安くなったら買おうと思っていた株が、それほど安くならずに大きく上昇してしまい、上昇相場に乗り損ねた。

(2)そこそこの利益が得られたので売った株の株価が、その後も大きく上昇を続けてしまい、大きな利益を得る機会を失った。

(3)もう少し上昇したら売ろうと思っていた株が、そこまで上昇せずに反転下落してしまい、売り時を失った。

(4)買った株の株価が大きく値下がりしてしまい、売るに売れず塩漬け状態になってしまった。

これらをさらにまとめれば、究極的には次の2つに集約できます。

A.うまくすれば得られた利益を逃してしまった(=1.2.3.)

B.含み損を抱えて身動きがとれなくなってしまった(=4.)

このうち、Aについては、もっと多くの利益を得られたかもしれないのに小さな利益しか得られなかった、ということですから、失敗といえば失敗ですが、自身の資産を大きく目減りさせてしまうほどの致命的な失敗とは全く違う次元の話です。したがって、これらの失敗につきそれほど深刻になる必要はありません。
(とはいえ、こうした失敗もできるだけ避けるに越したことはないのも確かです。Aについて筆者が考える対応法などは、後日、別の回で触れたいと思います)

一方のBについては、場合によっては資産の大部分を失いかねない致命的な大失敗につながりかねませんので、何としても避けなければなりません。
株価が買値から2割、3割下落している程度ならまだしも、運悪く高値掴みをしてしまった場合などは、買値の5分の1、10分の1、それ以下にまで株価が下落してしまうことは決して珍しくありません。
株価が買値から10分の1にまでなってしまったら、もう成す術はありません。思い切って処分してしまうか、株価が上がるのをあてもなく待ち続けることぐらいしかできません。

つまり、株式投資で多くの個人投資家が大きな失敗をする理由は、含み損を抱えて身動きがとれなくなるまで株を持ち続けてしまうから、ということができます。
逆に言えば、これさえ回避できれば、株式投資における致命的な失敗の大部分は避けられるはずです。

そのためにはどうすればよいのでしょうか? 難しいことはありません。昔から多くの勝ち組投資家が行っていることを同じように実行すればよいのです。
それは、「損切りルールを設定し、それを守る」ことと、「株価が下がっている途中では買わない」ことの2つです。
この2つさえ実行することができれば、大負けを避けることができるはずです。そして、下降相場での損失を最小限に食い止め、その後の上昇相場で大きな利益を得ることが可能です。

なぜ勝ち組の個人投資家が口を揃えて「損切りが重要」というのか、それは彼らが身を持って体験した結果導き出された、大負けを防ぐために最も必要な行動だからです。

また、「株価が下がっている途中で買わない」ことを徹底すれば、株価が上昇トレンドにあるときにだけ買うことになりますから、買った後で株価が大きく下がって塩漬け状態になることはかなり減少させることができるはずです。

2つのうちどちらか1つ実行するだけでも、大負けの可能性はかなり縮まりますが、やはり2つとも実行するのが最も効果的です。

もし、皆さんが「株式投資で成功したい」、「塩漬け株を作るのはもうこりごりだ」、と本気で思っているのなら、今からでも決して遅くありません。ぜひとも「損切りの実行」と「下落途中の株を買わない」ことを徹底してみてください。きっと結果はついてくるはずです。

損切りの具体的な方法や、下落途中の株の見極め方などについては、後日、別の回でお話しする予定です。
また、拙著「それは失敗する株式投資です!」(日本経済新聞出版社)に、それらについて詳しく書いてありますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。

次回は、個人投資家は資産を大きく目減りさせる原因である「塩漬け株」をなぜ作ってしまうのか、その原因を探ることで、塩漬け株を作らないための「発想の転換」をしていただきたいと思います。