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著者の加藤 嘉一が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「中国が新たな対日禁輸措置を発動、その中身と影響は?」
中国が新たな対日制裁措置を発動
中国では2月15~23日の春節休暇が終わり、大半の人々は24日から働き始めているようです。1年に1回の長期休暇明けの初日、中国商務省が新たな対日制裁措置を発表しました。
中国は「輸出管理法」および「両用品目輸出管理条例」などに基づき、軍民両用(民間生活と軍事の両方に利用可能なこと、デュアルユースとも呼ぶ)品の輸出の禁止対象となる企業のリストと、軍民両用品の輸出に対する監視が強化される対象の企業・団体のリストを発表しました。
20の企業・団体が各リストに掲載されています。本稿では便宜上、それぞれを「禁輸リスト」「監視リスト」と呼びます。
この二つのリストの中身について、見ていくことにしましょう。
【禁輸リスト】
背景:「日本の軍事力強化に関与した」とされている20社をリストに追加
内容:
(1)輸出事業者はリストに掲載されている日本企業に両用品を輸出することを禁止
(2)海外の組織・個人も中国原産の両用品を当該企業へ移転、または提供することを禁止
(3)現在進行中の関連する輸出活動は即時に停止
【監視リスト】
背景:軍民両用品の最終使用者・最終用途を確認できない日本の20社をリストに追加
内容:
(1)輸出事業者が監視リスト掲載企業に両用品を輸出する場合、包括許可の申請、または登録申告方式による輸出証明書の取得は認められない
(2)輸出事業者が個別許可を申請する際、監視リスト掲載企業に対するリスク評価報告書を提出するとともに、申請した両用品が日本の軍事力向上に資するいかなる用途にも使われない旨について、書面による誓約を提出しなければならない
(3)許可審査期間は、『中華人民共和国両用品目輸出管理条例』第17条第1項に定める期間の制限を受けない
(4)商務部は、監視リスト掲載企業に対する両用品の輸出について、より厳格な最終使用者および最終用途の審査を実施。日本の軍事ユーザー、軍事用途、ならびに日本の軍事力向上に資する一切の最終使用者・用途に関わる輸出は承認しない
(5)監視リストに掲載された事業体は、『中華人民共和国両用品目輸出管理条例』第26条の規定に基づき、調査への協力義務を履行した場合、監視リストからの削除を申請することが可能。商務部は確認後、当該企業をリストから削除することができる
中国政府が「電撃発表」した「禁輸リスト」と「監視リスト」
ここからは、「禁輸リスト」と「監視リスト」に掲載された計40の企業・団体をリストアップします(出典:中国商務省)。
【禁輸リスト】
- 三菱造船
- 三菱重工航空エンジン
- 三菱重工マリンマシナリ
- 三菱重工エンジン&ターボチャージャ
- 三菱重工マリタイムシステムズ
- 川崎重工航空宇宙システムカンパニー
- 川重岐阜エンジニアリング
- 富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ
- IHI原動機
- IHIマスターメタル
- IHIジェットサービス
- IHIエアロスペース
- IHIエアロマニュファクチャリング
- IHIエアロスペース・エンジニアリング
- NECネットワーク・センサ
- NEC航空宇宙システム
- ジャパン マリンユナイテッド
- JMUディフェンスシステムズ
- 防衛大学校
- 宇宙航空研究開発機構(JAXA)
【監視リスト】
- SUBARU
- 富士エアロスペーステクノロジー
- ENEOS
- 輸送機工業
- 伊藤忠アビエーション
- レダグループホールディングス
- 東京科学大学
- 三菱マテリアル
- ASPP
- 八洲電機
- 住友重機械工業
- TDK
- 三井物産エアロスペース
- 日野自動車
- トーキン
- 日新電機
- サン・テクトロ
- 日東電工
- 日油
- ナカライテスク
二つのリスト、およびそこに掲載されている企業の内訳を俯瞰(ふかん)すると、三つの示唆を簡潔に抽出することができると思います。
(1)「禁輸」と「監視」という二つのリストにあえて分けているのは、中国政府が軍民両用品の対日輸出を複数の次元、段階で捉えていることの証左
(2)「禁輸リスト」に掲載されているのがいわゆる防衛産業に従事している企業なのに対し、「監視リスト」には純工業系、すなわち民生用企業が多く、「グレーゾーン」が存在する
(3)「禁輸リスト」に掲載されている企業は文字通り「禁輸」であり、0か1かの世界に映る。一方、「監視リスト」に掲載されている企業に関しては、中国側輸出事業者との意思疎通、申請方法の見直しといった創意工夫によって、軍民両用品の輸出対象となったり、リストから削除されたりする可能性があり、局面打開に向けて一定の余地が残されている
中国側の意図と影響、日本企業に求められること
最後に、中国側の意図と影響について、三つの視点から考察していきます。
一つ目に、今回の新たな制裁措置は、中国側の「本気度」を示しているという点。春節休暇明けの最初の営業日に、40に及ぶ個別企業・団体をリスト化し、出してきたわけですから、当然念入りな準備を経てのアクションだといえます。
二つ目に、「本気度」の背後にあるのが、習近平政権としての第2次高市政権に対する警戒心と不信感。仮に、2月上旬の衆院選、および自民党の歴史的圧勝を受けて、中国側として対日関係を改善し、前向きなメッセージを送ろうとしているのだとすれば、今回のような、日本の財界や企業を震え上がらせるような措置は取らないでしょう。
三つ目に、日中関係の継続的悪化は避けられそうにないという点。中国側の一連の対日制裁措置の一義的な目的が、「日本の軍事力向上」を阻止すること、そのために、軍民両用品に対する規制を強化、厳格化しているということは火を見るより明らかです。
ひるがえって、高市政権が目玉政策として掲げる防衛力の強化、「安保3文書」の改定、国家情報局の設立、そして高市政権が視野に入れる憲法改正などは、中国側が真っ向から反対している一丁目一番地の分野です。第2次高市政権下において、日中関係の継続的悪化が避けられそうにないと私が推察するゆえんです。
まさに、国益と国益のぶつかり合いであり、そのはざまで、日本の民間企業が(おそらく、少なくない中国企業も)巻き込まれ、不利益を被っている状況は否定できません。国家、国益、国勢という大きな流れや動きを前に、日本の企業としては、これまで以上に「自分の身は自分で守る」姿勢が求められるでしょう。
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