2026年の「政治要因と経済要因」から相場シナリオを予測

 新年が明けると、世界情勢は怒涛の展開となりました。トランプ政権による、ベネズエラへの電撃攻撃とマドゥロ大統領の拘束、グリーンランド購入検討報道、イランへの軍事介入示唆(しさ)。

 これらの出来事だけでも驚きですが、加えて日本の1月通常国会召集冒頭の衆院解散報道、さらに米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長への刑事捜査など予期せぬ出来事が次々と起こりました。これら一連の出来事に対して今のところマーケットは比較的冷静な動きとなっていますが、次の展開によっては大きく動く可能性があるため注意が必要です。

 為替市場では、ドル/円は衆院解散報道で158円台に乗せるなど円安に動きましたが、パウエル議長の刑事捜査報道でドル安に動いたものの再び円安が進み、14日には159円台に乗せています。介入警戒感はあるものの、このままだと160円を超える可能性が高まってきました。

 今月はデータのそろった9日の米12月雇用統計と13日の米12月消費者物価指数(CPI)を確認して、下旬の日米金融政策を見極め(ともに見送りの可能性)、介入を警戒しながら150円台後半に張り付く相場を予想していましたが、全ては1月23日の通常国会召集日に決まりそうです。

 もし、1月に解散すれば、解散で円安、自民党圧勝で円安、所信表明で円安と、三段ロケットの円安となり、相場地合いが大きく変わる可能性があります。

 ドル/円を2000年以降の大きな値動きのレンジで捉えると、デフレ真っただ中では100円±20円のレンジ、その後アベノミクスで120円±20円のレンジ、日米逆方向の金融政策で140円±20円のレンジで動いていましたが、第2次高市政権では日米の金融政策よりも財政拡大懸念の方が勝り、160円±20円のレンジの世界を描くのが容易になってくるかもしれません。

 ただ、選挙は厳しいものになるかもしれないとの見方もある点には留意する必要があります。高市内閣支持率は70%超ですが、自民党支持率は30%台となっているため自民党単独過半数は難しいかもしれないとの見方です。単独過半数が取れないと、積極財政は思うようにはいかないかもしれません。

 また、衆院で優位になっても参院では野党優位の状況は変わらないため、年度内予算成立や物価高対策よりも優先した解散総選挙に野党は猛反発することが予想され、政策遂行も一筋縄ではいかないかもしれません。

 高市早苗首相は現時点では何も語っていませんが、14日に党幹部に冒頭解散を伝えるといわれています。また、野党には国会召集日を伝えたものの施政方針演説などの日程を伝達していないため、冒頭解散の可能性が高まってきたようです。

 毎年、このコラムでは年初めに1年間の重要イベントの日程を取り上げています。1年間の相場シナリオを予測するためには押さえておきたい必須項目です。

 1年間とは1月から12月のサイクルです。為替市場の主戦場は欧米市場であるため、12月の本決算が多い欧米の企業や海外ファンドと同じサイクルで考える必要があります。

 ただし、ドル/円の場合は、日本の企業決算の時期も考慮する必要があります。特に3月決算が多いため、年度末の3月や年度初めの4月には決算に関わる為替の需給要因が加わることに留意しておく必要があります。なかでも期末日の公示タイム(午前10時前後)には予想外の動きをすることもあるため注意が必要です。

 為替の変動要因を大別すると、政治要因と経済要因があります。

 政治要因のイベントとしては選挙や国際会議などがあります。一方で経済要因のイベントで特に重視するのが、為替相場に中長期的に影響を与える中央銀行の金融政策です。特に米国の金融政策です。

 そしてその金融政策を左右する米国の国内総生産(GDP)やCPI、雇用統計の経済指標です。相場シナリオを考えていく際には、これら政治・経済イベントの予定されている日程を押さえながらそのリスク度合いや影響度合いを考慮して相場シナリオを組み立てていく必要があります。

 これらの政治・経済日程は、各国政府の管轄部署のホームページや新聞報道から確認することができます。

2026年の重要政治日程

 今年最大の注目される政治イベントは、11月3日の米中間選挙です。昨年11月の米国地方選挙の結果は、トランプ政権にとって厳しい結果となりました。ニュージャージー、バージニア州知事選、ニューヨーク市長選では、いずれも民主党が勝利しました。

 経済や物価高が争点になったため、トランプ大統領は景気を刺激するためにFRBへの利下げ圧力が一段と高まることが予想されます。

 パウエル議長への刑事捜査もその一環と市場は捉えていますが、パウエル議長は11日にトランプ政権の圧力を非難する声明を出しました。市場はFRBの独立性を脅かすと懸念しましたが、共和党からの批判や後任議長の承認をしないとの動きもあり、今すぐに金融政策を左右するものではないとの見方から市場の動きは冷静な動きとなっています。

 政治イベントは、その結果によって瞬時に相場に影響を与えたり、じわじわと経済に影響が及んでくる場合があります。しかも、経済環境を無視して瞬時に相場に影響を与える場合もあるため、最重要で注目すべき要因です。

 相場シナリオを想定する際に、政治イベントを軸として大きな枠組みを想定します。その大きな枠組みの中で経済イベントを考慮して中期・短期のシナリオを想定していきます。

 以上が通常の考え方ですが、トランプ大統領の場合は思いつきの発言や脅し、駆け引きなどがあるため、瞬時に反応はするもののすぐに戻ることも予想されるため注意が必要です。

 ただ、新年早々見られたような想定外の大胆な行動を取ることは、中間選挙の年になったことからまだ起こることが予想されます。

 ベネズエラ攻撃やメキシコ、イランへの攻撃姿勢には不満高まる物価高やエプスタイン文書問題から米国民の目をそらすためとの見方も根強いため、中間選挙が盛り上がってくる年央に向かって市場が翻弄(ほんろう)される事態は繰り返されると思っていた方がよさそうです。

 今年の政治イベントを下表にまとめましたので参考にしてください。日本の選挙、米国の中間選挙以外にも米中首脳会談や、米国や中国が開催地の国際会議にも注目です。

 下記のように米中首脳が複数回接触することが予定されているため、経済・貿易や安全保障の面で何らかの合意がなされるかもしれません。また、首脳達が集まった会議では二国間会議も予想されるため、主要国の動きにも注目です。

  • 3月:高市首相訪米し、日米首脳会談を模索
  • 4月:トランプ大統領訪中予定
  • 年後半に習主席が国賓として訪米予定
  • 11月:中国・深センでAPEC首脳会議
  • 12月:米国フロリダでG20サミット

 また、11月のAPEC首脳会議と12月のG20サミットとの間に実施される「台湾統一地方選」に注目です。この地方選は2028年の総統選の前哨戦といわれています。

 昨年12月2日、トランプ大統領はモンロー主義記念日に合わせて声明を発表し、「トランプ補論」と称して「西半球における米国のリーダーシップを守る」と述べました。トランプ大統領の「われわれの半球(hemisphere)」との主張を聞いた時に、すぐに思い浮かんだのは15世紀末のスペインとポルトガルが締結した世界の支配地域分割条約です。※

1494年トルデシリャス条約:スペインが新大陸を(ブラジルを除く)、ポルトガルがアジア(フィリピンを除く)を勢力圏とする条約。

 中国との首脳会談をG2会談と呼ぶトランプ大統領にはその構想があるのでしょうか。昨年と比べて今年は中国との首脳外交が活発になることが予想されます。その結果として東アジアが手薄になって日本の軍備がますます重要になり、財政拡大懸念からドル/円は200円を超える超円安に。想像したくない世界です。

2026年の重要政治日程

1月 13~14日 日韓首脳会談
15~17日 日伊首脳会談(日伊外交関係樹立160周年)
19~23日 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)
23日 通常国会召集(冒頭解散?)
月末 トランプ大統領の一般教書演説
2月 6~22日 ミラノ・コルティナ冬季オリンピック開幕(イタリア北部)
15~23日 中国の春節休暇(旧正月)
24日 ロシアのウクライナ侵略から4年
3月 5日 中国全国人民代表大会開幕(全人代、北京)
5~17日 WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)開幕(東京、米国など)
6~15日 ミラノ・コルティナ冬季パラリンピック開幕(イタリア北部)
下旬 高市首相訪米し、日米首脳会談を模索
春ごろ トランプ米政権の予算教書発表
4月 月中 トランプ大統領訪中(予定)
6月 11日~
7月19日
サッカーワールドカップ(W杯)北中米大会開幕
(米国・カナダ・メキシコ、日本戦)
15~17日 G7サミット(主要7カ国首脳会議、仏・エビアン)
22日 米国によるイラン核施設攻撃から1年
7月 4日 米国建国250周年
10月 7日 イスラム組織ハマスのイスラエル襲撃から3年
12~18日 IMF・世銀年次総会(バンコク)
11月 3日 米中間選挙
18~19日 APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議(中国・深セン)
28日 台湾統一地方選
12月 14~15日 G20サミット(20ヵ国・地域首脳会議)(米フロリダ州)

2026年の重要経済日程

 為替相場の経済変動要因として最も大きな要因は金融政策です。今年もFRBと日本銀行の金融政策に注目です。昨年12月の金融会合では、日米とも政策変更に慎重な姿勢を示しました。FRBの利下げや日銀の利上げがどのようなペースでいつ決定されるのか注目です。欧州中央銀行(ECB)理事会にも注目です。 

 利下げ休止から、利上げの見方も浮上してきているため、年央から利上げ期待が高まるかもしれません。そして日米欧の金融政策を左右する景気の強さ(GDP)や物価動向と米国失業率(米国雇用統計は、毎月第1金曜日に前月分が発表)に注目する必要があります。

 下表に日米欧の理事会開催日、GDPや物価の公表日をまとめました。今週のコラムは保存版として活用してください。

 今年は、重要経済日程を押さえるだけでなく、5月に任期満了となるパウエル議長の後任人事にも注目です。新議長の下で金融政策がどのように変わるのか注目です。

 また、パウエル議長は議長退任後も理事の任期は2028年まであります。今回のFRBに対する圧力から理事として留任するとの見方が浮上してきています。トランプ大統領肝いりの新議長が就任してもFRBの政策運営はトランプ大統領の思い通りには運営されないかもしれません。

日米欧中央銀行の金融政策会議開催日

2026 年 日銀金融政策決定会合 米連邦公開市場委員会(FOMC) 欧州中央銀行理事会(ECB) 金融イベント
1月 22~23日※ 27~28日 日銀保有ETF、REIT売却開始
2月 4~5日  
3月 18~19日 17~18日 18~19日  
4月 27~28日※ 28~29日 29~30日  
5月 15日 パウエル議長退任
6月 15~16日 16~17日 10~11日  
7月 30~31日※ 28~29日 22~23日  
8月 ジャクソンホールFRB議長講演
9月 17~18日 15~16日 9~10日  
10月 29~30日※ 27~28日 28~29日  
11月  
12月 17~18日 8~9日 16~17日  
(注)
1.※は日銀「展望レポート」公表(1、4、7、10月)、FOMC、ECBは経済見通し公表(3、6、9、12月)
2.FOMCは火~水曜日開催、ECB理事会は水~木曜日開催
3.会議終了後の総裁の記者会見は日米欧とも毎回実施
4.黒太字は日米欧の理事会が集中している日程。相場が変動しやすいため注意が必要

日米欧GDP速報値の発表日

  日本 米国 ユーロ圏
2025年
10-12月期
2月16日 2月20日 1月30日
2026年
1-3月期
5月中旬 政府機関閉鎖の影響で
発表時期未定
4月30日
2026年
4-6月期
8月中旬 7月30日
2026年
7-9月期
11月中旬 10月30日

日米欧CPI

2026年 日本 米国 ユーロ圏
1月 23日(12月分) 13日(12月分) 7日(12月分)
2月 20日(1月分) 11日(1月分) 4日(1月分)
3月 24日(2月分) 11日(2月分) 3日(2月分)
31日(3月分)
4月 3月分以降の公表予定は
1月下旬に発表
10日(3月分) 30日(4月分)
5月 12日(4月分)
6月 10日(5月分) 2日(5月分)
7月 14日(6月分) 1日(6月分)
31日(7月分)
8月 12日(7月分)
9月 11日(8月分) 1日(8月分)
10月 14日(9月分) 2日(9月分)
11月 10日(10月分) 4日(10月分)
12月 10日(11月分) 1日(11月分)