なぜ確定申告が必要なの?
通常、会社員は年末調整で所得税の精算が完了します。しかし、後述のケース(2,000万円超、中途退職、副業など)は、会社での年末調整が行われていない(または完了していない)状態です。そのため、自分で確定申告をして正しい税額を計算し、精算する必要があるのです。
また、
収入 ― 経費 = 所得
の計算式で「課税される所得金額」が発生する場合、自分で申告して税金を納める義務があります。
給与所得と違い、これらのもうけは誰も計算(年末調整)をしてくれません。そのため、自分で計算して税務署に伝える必要があるのです。
自分チェック!あなたはどれに当てはまる?
確定申告をするかしないか、大きく分けて次の3種類の方々がいます。
[1]義務として「しなければならない人」
[2]義務はなくても「した方がお得な人」
[3]確定申告「する必要がない人」
まず「自分がどれに当てはまるか」を押さえるだけで、迷いがなくなります。
以下、チェックリストで、自分がどれに該当するかをチェックしてみましょう!
確定申告が「必要(義務)」な人チェック
A:年末調整で処理されていない給与収入がある
B:事業・副業・不動産などで「もうけ(所得)」が出ている
※一つでも当てはまったら、確定申告が「必要(義務)」な人となります。さっそく準備を始めましょう。詳しくはこちら>>
確定申告を「したほうがトク」な人チェック
C:医療費が10万円以上かかった(医療費控除)
D:給与以外にも源泉徴収されている収入がある
E:ワンストップ特例を使わずにふるさと納税をした
F:年末調整で適用が漏れていた控除がある
G:投資で損益通算や繰越控除をしたい
※一つでも当てはまったら、確定申告「したほうがトクな人」となります。さっそく準備を始めましょう。詳しくはこちら>>
確定申告を「する必要がない」人チェック
上記A~Gまで、一つも該当しなかった人
該当する点がなかった方は、確定申告する必要はありません。ただ、来年度以降、発生する可能性もあるため、準備すべきことを確認しておきましょう>>詳しくはこちら
自分がどれに当てはまったかが分かったところで、具体的な解説に入っていきましょう!
[1]義務として「確定申告しなければならない人」ってこんな人!
A:年末調整されていない給与収入がある
勤務先で年末調整の対象外となる以下の給与がある場合、確定申告が必要です。
▼具体例
- 主な勤務先以外の給与(副業やアルバイト 年末調整はメインの勤務先でしかできません)
- 年収2,000万円を超える場合の給与(年末調整はできず、確定申告が強制されます)
- 年の途中で退職し、年末までに再就職していない場合(年末時点で企業に勤務していない人は、企業での年末調整が実施されないため、自分で確定申告をする必要があります)
上記のような事情がある方は、確定申告をする「義務」があります。粛々と準備を進めましょう!
ATTENTION!
例外として、年末調整されていない給与収入と、その他の所得の合計が年間20万円以下の場合は、確定申告を省略することも可能です。ただし、住民税の申告は必要です。
「副業収入が20万円以下なら申告不要」という話をよく聞きますが、これは「所得税(国税)」だけに認められたルールで、住民税(地方税)にはこのルールは適用されません。たとえ利益が1円でもあれば、原則として住民税の申告は必要です。「20万円以下だから何も申告しなくていい」と放置すると、住民税の申告漏れになってしまうので注意が必要です。
B:事業・副業・不動産などで「もうけ(所得)」が出ている
給与以外で、事業や副業、不動産投資などでお金を稼いでいて、計算上の「利益」が出ている場合は原則として確定申告が必要です。
▼具体例
- せどり・転売、スポットバイト、業務委託など、本業の給料以外で得た収入
- インフルエンサー収益(YouTube、アフィリエイトなど)
- 家賃収入、地代収入(不動産所得)
[2]義務はなくても「した方がお得な人」ってこんな人
確定申告をする義務はありませんが、申告することで払いすぎた税金が戻ってくる(還付される)可能性があります。
C:医療費が10万円以上かかった(医療費控除)
年間の医療費合計額が原則として10万円を超えた場合、確定申告で「医療費控除」を適用することで税金が戻ります。(※総所得金額などが200万円未満の人は、その総所得金額などの5%を超えれば対象です)。
医療費控除は年末調整では対応していないため、自分で申告しないと税金が戻ってこないからです。本人の分だけでなく、生計を共にする家族の分でも、あなたが支払った医療費なら合算できます。
1年分の領収書を捨てずに保管し、合計額を計算してください。(健康保険組合から届く「医療費通知」も参考になりますが、全ての支出が載っているわけではありません)
ATTENTION!
自費診療やドラッグストアの市販薬、通院のための交通費(電車・バス)なども対象になります。必ず領収書を残しましょう。
D:給与以外にも源泉徴収されている収入がある
会社員の給料以外にも、個人で原稿料や講演料など、源泉徴収の対象となる収入を得ている方のうち、振込額から、あらかじめ所得税が天引きされているかどうかを確認してください。
所得税が報酬から引かれている源泉徴収税額は、あくまで「概算」であり、結果として「納めすぎ」になっているケースがあります。正しく計算し直す(確定申告する)ことで、払いすぎた差額が戻ってくる可能性があります。
E:ワンストップ特例を使わずにふるさと納税をした
ふるさと納税で居住地以外の自治体に寄付をしている方も増えています。
「ワンストップ特例」(寄付後に書類やオンラインで処理することで住民税の控除を受けることができる仕組み)を活用している場合は問題ありませんが、これを使わずにふるさと納税を行った場合、確定申告が必須です。これを忘れると、寄付したのに控除が受けられない(返礼品はもらえるけれど寄付全額が自己負担となる)という悲劇が起きます。
▼具体例
- そもそもワンストップ特例の申請書を出し忘れた(ワンストップ適用外)
- 六つ以上の自治体に寄付した(ワンストップ適用外)
- 医療費控除などの事情で、確定申告をすることになった(※確定申告を行う場合、提出済みのワンストップ特例申請は全て無効になります)
ATTENTION!
ワンストップ特例制度は、最大で5自治体までと限度が決められています。これを超えてふるさと納税で寄付をした場合、確定申告による住民税控除申請が必要になります! 楽しくてうっかり5自治体を超えてしまう方も多いため、注意してふるさと納税プランを立てましょう!
F:年末調整で適用が漏れていた控除がある
年末調整の時点で証明書が間に合わなかったり、出し忘れてしまった控除がある場合です。これらを申告書に記載することで、課税対象となる所得を減らし、税金を安くできます。
▼具体例
- 生命保険料・地震保険料控除:年末調整の提出期限に証明書が間に合わなかったり、紛失して出し忘れたもの。
- 社会保険料控除:給与天引きとは別に、自分で納付した国民年金や、家族(子供など)の分を負担したもの。
- 小規模企業共済等掛金控除:iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などで、掛金の払込証明書を出し忘れていたもの。
G:投資で損益通算や繰越控除をしたい
株式や投資信託への投資を「特定口座(源泉徴収あり)」で行っている場合は原則として確定申告は不要です。しかし、あえて申告したほうが得になるケースがあります。
▼具体例
- 損益通算したい:「A証券で出た利益」と「B証券で出た損失」を相殺したい場合。
- 損失の繰越:今年の損失を来年以降に持ち越したい場合。
ATTENTION! 損失繰越の「三つの条件」
損失を繰り越すため(最大3年間)には、以下の三つが絶対条件です。
- 損失が発生した年に確定申告する
- 繰り越す3年間の各年で、毎年連続して申告する
- 利益が出た年に、「その利益と相殺するため」の申告をする
なお、国内FXや先物取引(「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になるもの)にも、同様に損益通算と損失繰越の仕組みがあります。
※NISA口座(成長投資枠・つみたて投資枠)での利益はそもそも非課税なので、何もしなくてOKです。
[3]今年、確定申告をしなくてもOKな人が、来年に備えてできること!
毎年やっている人でも、かなり面倒で緊張感が漂う確定申告。初めての人でも確定申告をサクッと乗り切るためのアドバイスをご紹介します! まずは準備がなにより大事! 今から準備して来年の確定申告をスムーズに乗り切りましょう!
アドバイス1:「確定申告書類ボックス」を作る
100円ショップのクリアファイルでも箱でも何でも構いません。「確定申告関係の書類が届いたら、とにかくココに入れる」これだけで十分です。一番大変なのは「書類を集めること」なので、場所を一箇所に決めるだけで申告作業に着手する際のストレスが激減します。
アドバイス2:証券会社の「電子交付」設定を確認
特定口座年間取引報告書を「郵送」で待っていると、到着が1月中旬以降になりますし、紛失するリスクもあります。おすすめは「電子交付(XMLファイル)」と「マイナポータル連携」の活用です。例えば楽天証券の場合、例年以下のようなスケジュール感になります。
- とにかく早く申告したい人:PDFまたはXMLファイルのダウンロード(1月初旬から交付されており、最も早いです)
- 手間を極力減らしたい人:マイナポータル連携(1月下旬ごろから連携が開始されます)
アドバイス3:電子証明書の有効期限チェック
マイナンバーカードの電子証明書には有効期限(発行日から5回目の誕生日まで)があります。
期限切れだとe-Taxが使えません。「気付いたら期限が切れていた!」とならないよう、カード券面の「有効期限」の記載を確認しておきましょう。
注意したい!みんなが見落としがちな落とし穴3選!
初心者がつまずきやすい「典型的な落とし穴」を紹介します。ここを知っておくだけで、後々のトラブルを防げます。
1.医療費控除の「入れ忘れ」で損をしてしまう
「病院で払った治療費」以外にも、医療費控除の対象になるものは意外とたくさんあります。これらを入れ忘れると、本来戻ってくるはずの税金が減ってしまいます。
▼つい忘れがちな医療費の例
- ドラッグストアで買った市販薬(風邪薬、頭痛薬、胃薬など)
- 通院のための交通費(電車代・バス代)
- 自費診療(インプラント、レーシックなど、審美目的でないもの。子どもの発育や機能改善(かみ合わせ、発音、そしゃくなど)を目的として行うものは対象となります)
- 11〜12月の受診分(保険組合からの「医療費通知」に間に合わず記載されていないことが多いです)
※特に「医療費通知(ハガキ)」だけで計算しようとすると、これらの項目が漏れてしまいがちです。手元の領収書もしっかり確認して、漏れなく合算しましょう。
2.副業の「住民税」申告を忘れる
前述の「20万円ルール」で所得税の申告をしなかった場合でも、住民税の申告は必要です。これを忘れると「申告漏れ」扱いとなり、後から追加の納税が発生することもあります。
なお、所得税の確定申告をした場合は、そのデータが自動的に市区町村に送られるため、別途住民税の申告をする必要はありません。
3.損失繰越の「連続申告」を忘れる
株や投資信託、国内FXなどで損をした場合、その損失を最大3年間繰り越せますが、繰り越しのためには「取引しなかった年」も申告が必要です。「今年は取引ゼロだから申告しなくていいや」と飛ばしてしまうと、その時点で過去の繰り越した損失が消滅します。損失を繰り越したい場合は、毎年忘れずに申告しましょう。
4.副業分の住民税の納付方法が「選べる」ことを知らない
副業にかかる住民税は、特に申請をしなければ本業の給与から天引き(特別徴収)されます。 これだと「本業の手取り額が減ってしまう」などの影響が出ますが、実は納付方法を自分で選ぶことができます。
もし「給与天引きではなく、自分で払いたい」という場合は、確定申告書の第二表「住民税・事業税に関する事項」で、「自分で納付(普通徴収)」を選択しましょう。
5.控除証明書・領収書を紛失してしまう
「どこかに置いたはず…」と探し回る時間が一番のロスです。証明書の再発行には1〜2週間かかることもありますし、なにより手続きが面倒です。なくさないようにしましょう。
ATTENTION! e-Taxにするべき「五つのメリット」
「確定申告=税務署で並ぶ」というのは過去の話です。マイナンバーカードとスマホを使ってe-Tax(電子申告)すれば、以下の五つのメリットを得ながら簡単に申告を済ませられます。
メリット1.自宅から24時間いつでも申告可能
税務署の開庁時間を気にする必要はありません。仕事が終わった夜中でも、休日の早朝でも、自分の好きなタイミングでこたつに入りながら終わらせることができます。
メリット2.還付金がスピーディー(約3週間)
紙で提出した場合(1〜1.5カ月)に比べ、圧倒的に早く還付金を受け取れます。「払いすぎた税金を早く取り戻したい」という人はe-Tax一択です。
メリット3.マイナポータル連携で「自動入力」
連携設定をしておけば、ふるさと納税、保険料、株の特定口座、医療費などが自動で入力されます。計算ミスや転記ミスも防げます。
メリット4.証明書の「郵送」が不要(ペーパーレス)
紙の申告書の持参・郵送が不要になるのはもちろん、生命保険料控除証明書などの証明書類の提出も不要です。税務署へ出向いたりポストに投函したりする手間がゼロになります。
メリット5.申告データはいつでも確認OK
紙の控えを保管しておく必要はありません。「受信通知」からいつでも過去の申告内容を確認できるので、書類の紛失リスクもなくなります。
詳しくはこちら>>国税庁:確定申告特集(スマホとマイナポータル連携)
著者プロフィール
▼伴 洋太郎(ばん ようたろう)さん
事務所HP:BANZAI税理士事務所
事務所Instagram:@banzai_tax
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