多額の現金は戦略的な資産であり、これによって困難な時期を乗り切れる
バークシャー・ハサウェイが保有する手元キャッシュの残高は過去最高を記録している。現金同等物に米短期債の保有額を合わせた広義の手元資金は、9月末時点で3,816億ドルと、前期(第2四半期は約3,440億ドル)に比べ376億ドル増加した。単純計算すると6月からの3カ月間で1日当たり約4.2億ドルずつ現金が増えたことになる。
バフェットの現金残高とNYダウの推移
バークシャーの総資産に占める現金比率は31%と、財務データを比較できる1988年以降で初めて3割を超えたということだ。株式市場が高値圏で推移する中、バークシャーは保有する株式を圧縮しつつ、現金の保有残高を積み上げている。
次期CEOとなるグレッグ・アベルは、5月に開かれたバークシャーの年次株主総会において株主から巨額の現金ポジションについて質問された際、「(多額の現金は)戦略的な資産であり、これによって困難な時期を乗り切り、誰にも依存せずにいられる」と答えている。
バフェット指標の推移(1950~2024年)
2008年から2009年にかけての世界金融危機の際、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)、化学大手のダウ・インク(DOW)といった企業を支援し、その後、バークシャーは莫大(ばくだい)な利益を上げた。
バークシャー・ハサウェイA株(月足)対数チャート
相場を事業として続けていくには「防御」が必要となる。相場は「もうけたい、当てたい、勝ちたい」という欲望のゲームとして始まるが、お金がなくなったらゲームオーバーとなる。すなわち、資産管理(asset management)のゲームとして終了する。
最後のバフェットからの手紙
11月10日、バークシャーのCEOとして最後となるバフェットからの手紙が公開された。
【バークシャーの年次報告書でレターを書くことも、株主総会で延々と話すことも、もうありません。英国風に言えば、私は「I’m going quiet(静かにする)」つもりです。グレッグ・アベルが年末に社長に就任する。彼は優れた経営者であり、疲れを知らない働き者で、誠実なコミュニケーション能力の持ち主だ。彼の長期にわたる在任を願う。
そして、彼の故郷でありバークシャーの本拠地のあるオマハについて、また彼の家族や長年のビジネスパートナーであったチャーリー・マンガー氏、交流があった人々の思い出を綴っている。マンガー氏については60年以上にわたり、自分に多大な影響を与え、これ以上ない教師であり、守ってくれる「兄貴分」だったと述べている。お互いに意見の相違はあったが、口論になったことは一度もないと。
1930年、私は健康で、そこそこ賢く、白人で、男性として米国で生まれた。おお、幸運の女神様、ありがとう。私の姉妹たちは私と同等の知性と、私より優れた性格を持っていたが、全く異なる人生を歩むことになった。幸運の女神はその後も私の人生の大半に訪れてくれたが、90代の人間と付き合うよりやるべきことは他にもあるらしい。運にも限界がある。
老い始めるのは遅かった。始まりは人によって大きく異なる。だが、いったん現れれば、否定はできない。
驚いたことに、私は概ね気分が良い。動きは遅く、読書も次第に困難になっているが、週5日はオフィスに出勤し、素晴らしい人々と共に働いている。時折、有用なアイデアが浮かんだり、そうでなければ得られなかったかもしれない提案を持ちかけられたりする。バークシャーの規模と市場水準のため、アイデアは少ないが、ゼロではない。
おそらくは自己満足的な見方だろうが、私は人生の前半よりも後半の方が充実していると感じている。私からのアドバイスは、過去の過ちを悔やんで自分を責めるのではなく、そこから少なくとも少しは学び、前に進むことだ。成長するのに遅すぎることは決してない。適切なヒーローを見つけ、その人物を模範として欲しい。
偉大さは、莫大な富や名声、政府における強大な権力を蓄積することで生まれるものではない。何千もの方法のうち一人でも誰かを助けるとき、あなたは世界に貢献している。親切はコストがかからないが、同時に計り知れない価値を持つ。宗教的であるか否かにかかわらず、行動の指針として黄金律に勝るものはなかなか見つからない。
私は数えきれないほど無神経な行動を取り、多くの過ちを犯してきたが、同時に素晴らしい友人たちからより良い振る舞いを学ぶという幸運にも恵まれた。覚えておいてほしいのは、清掃をする人も会社の会長と同じく人間だということだ。
変わるのに遅すぎることはない。米国が君たちの可能性を最大限に広げてくれたことに感謝することを忘れてはならない。しかしその報酬の分配は、避けがたく気まぐれで、時に金に目がくらむこともある。自身のヒーローを慎重に選んで、その姿を模範とする。完璧にはなれなくても、常に日々より良い自分になれる】
出所:バークシャー・ハサウェイ年次報告書
毎日が「始まりの日」、いくつになっても変わることができるし、何かを変えることはできる。相場でもうけることはもちろんであるが、相場を通じてバフェットの人生は名実ともに豊かになったということだろう。
「幸福というものは少しずつの進歩によって手に入るものであり、1回きりの成功によってでは決してない。小さな家から始まって、1つずつ部屋を建て増してゆく過程にこそ幸せがあるのであって、宮殿に住むことからではない」
(ウォーレン・バフェット)
11月19日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
11月19日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、原田雄一朗さん(楽天証券 FX・CFD事業本部長)をゲストにお招きして、「高市トレードとベッセントシーリング」「円安は進んでいるのか?為替相場は低迷」「通貨(日本円)の崩壊は日本が長年の疑似MMTという狂った金融政策の代償」「通貨インフレという詐欺的増税が到来している」「株のクラッシュと円キャリートレードの恐怖」「日本の金利の上昇で円キャリートレードは瀕死の状態?」というテーマで、原田さんと話をしてみました。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
11月19日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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