集中投資があだに。7,000万円の損失から学んだこと
トウシル:前編では、リーマンショックでの挫折をバネに投資を始め、コロナショックの荒波を乗り越えて資産1億円を達成するまでの道のりをお伺いしました。しかし、その先に待っていたのは人生最大の損失だったそうですね。
まーしー:資産1億円を維持できたのは、ほんの数カ月でした。2021年後半からインフレが加速し、米中央銀行が急激な利上げに踏み切ると、僕が保有していたような中小型のグロース株は軒並み大暴落しました。
トウシル:金利が上がると、将来の利益への期待で買われていたグロース株には逆風になりますね。
まーしー:まさにその通りで、僕の資産は1億円から3,000万円まで、一気に7,000万円も減少しました。
トウシル:え? え? 今サラッとすごいことをおっしゃったんですが、「7,000万円になった」のではなく、「7,000万円が減って資産が3,000万円になっちゃった」でいいんですよね?
まーしー:合ってます(笑)。リーマンショックよりも、コロナショックよりも、金額ベースでは最大の損失でした。この時「中央銀行に逆らってはいけない」ということを、本当に骨の髄まで思い知らされました。高すぎる勉強代でしたが、良い失敗だったと前向きに捉えています。
V字回復の鍵は「AIブーム」の捉え方
トウシル:資産の7割を失う経験は、ちょっと想像を絶します…。そこからどうやって再び立ち上がったのでしょうか。
まーしー:精神的にはかなりきつかったですが、ここで諦める選択肢はありませんでした。暴落した銘柄は、将来の税金対策として損出しを繰り返しながら大半を売却し、その資金を新たな投資先に振り向けました。そこで目を付けたのが、後の「AIブーム」を支えることになる領域です。
トウシル:いち早くAIの可能性に気づいていた、と。
まーしー:実は、直接的にAIがもうかるだろうと予測して投資したわけではないんです。僕が見ていたのは、もっと根源的な「未来のインフラ」でした。
アマゾン・ドット・コム(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)といった巨大企業の決算を見ていると、データセンターへの投資が今後も確実に拡大していくと読めました。では、そのデータセンターに不可欠な半導体で最も強い企業はどこか、と考えたんです。
トウシル:なるほど。ブームそのものではなく、ブームを支える土台に投資する、と。
まーしー:そういうことです。当時は米中貿易摩擦の影響もあって、半導体メーカー株は大きく売られていました。僕が買った後も下落は続き、一時は含み損が40〜50%に達したほどです。ですが、自分の未来予測を信じて、ここでも耐え抜きました。結果的に、世界的なAIブームが追い風となり、AI関連銘柄が僕の資産をV字回復させてくれたんです。
トウシル:ちなみに、現在の資産額は?
まーしー:きっちり1億円に戻してますよ。
トウシル:やったー! すごい!
まーしー流・銘柄選定術「SF作家のように未来を描く」
トウシル:未来のインフラを見抜く、というのは非常に興味深い観点です。まーしーさんは銘柄を選ぶ際、何か指標は参考にされているのでしょうか?
まーしー:実は、株価収益率(PER)などの指標はほとんど気にしていません。なぜなら、そうした数字で導き出せる情報は、プロの機関投資家やAIによってすでに株価に織り込まれているはずだからです。凡人である僕が同じ土俵で戦っても、市場を出し抜けるとは思えないんですよね。
トウシル:では、何を見て投資判断を?
まーしー:僕が期待して資金を投じるのは、まだ誰も気づいていない、数字には表れない「未来の物語」です。いうなれば「絵に描いた餅」ですよ。SF作家が未来の世界を想像するように「これから世の中はこうなるんじゃないか」という仮説を立て、その物語が実現したときに、どの企業が中心にいるかを考えるんです。
トウシル:ちょっとワクワクしてきました。具体的な妄想の仕方を教えていただきたいです!
まーしー:例えばコロナ禍でズーム・コミュニケーションズ(ZM)に投資したときは、「世界中の人が移動を制限されたら、ビデオ会議システムは絶対に必要になる。この流れは簡単には止まらないだろう」と考えました。これは投資家目線というより、一人の生活者としての視点から生まれた発想だと思います。
トウシル:近未来の世界を見抜く、眼力の強さを感じます。
まーしー:僕は小さい頃から算数や数学が苦手な、いわゆる文系脳なんです。だからこそ人の気持ちを考えたり、物語の行間を読んだりすることが得意でした。数字に表れない世の中の大きな流れや人々の感情の変化を捉える力は、むしろ文系だからこそ培われたのかもしれないと思っています。
7,000万円の損失を経て進化した、現在の投資戦略
トウシル:大失敗を乗り越え、現在はどのような投資をされているのですか?
まーしー:あの7,000万円の損失が、僕の投資スタイルを大きく変えました。もう二度と、特定の「旬のテーマ」に資産を集中させるようなことはしない、と心に誓っています。いつどんな理由で暴落するか分からないという手痛い教訓を得ましたから。
トウシル:今は分散を意識されているのですね。
まーしー:そうですね。「未来への投資」を意識した投資を含め、現在は20銘柄ほどに分散しています。AI関連のインフラ銘柄がポートフォリオの中心であることは変わりませんが、それ以外にも、人間が生きている限り必ず需要があるヘルスケアセクターや、少し変わったところでは、守りの資産として暗号資産関連の銘柄も一部保有しています。
トウシル:暗号資産というと、攻めのイメージが強い気がします。
まーしー:僕が暗号資産をポートフォリオに加えている理由は、リターンを求めてのものではありません。将来、万が一にも法定通貨の価値が揺らぐような事態が起きたときのリスクヘッジ、つまり「金(ゴールド)」のような位置づけだと考えています。これも、未来に起こりうる一つの物語に備えているといえますね。
「個別株は無理にやらなくていい」初心者に伝えたいこと
トウシル:最後に、これから新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)などで投資を始める初心者の方や、少し投資に慣れてきて個別株に挑戦しようと考えている方に、まーしーさんのご経験を踏まえたアドバイスをお願いします。
まーしー:自分の成功も失敗も赤裸々にお話ししてきましたが、そんな僕が今、初心者の皆さんに伝えたいことは、たった一つです。「個別株は、無理してやらない方がいい」。
トウシル:驚きました。ご自身が個別株で大きな資産を築いたにもかかわらず、ですか?
まーしー:そうです。僕がここまでやってこられたのは、数々の失敗を乗り越えるだけの運があったからです。同じことを他の人がやって、同じ結果になるとは到底思えません。むしろ、資産を大きく減らしてしまう可能性の方が高いでしょう。
トウシル:では、初心者はどうすればいいのでしょうか。
まーしー:難しいことは何も考えず、S&P500種指数(S&P500)に連動するインデックスファンドを淡々と積み立ててください。これが最適解です。
トウシル:まーしーさんがインデックス投資をやめて個別株に移ったのは、「もっとリターンが欲しかったから」でしたよね。
まーしー:そうです。その結果は、資産が7割も吹き飛ぶ地獄でした。遠回りして、大きな失敗をして、ようやくたどり着いた結論なんです。投資にあまり興味はないけれど、将来のために資産は増やしたい。ほとんどの方はそうだと思います。
でしたら、ウォール・ストリート・ジャーナルを見て、理解できない雇用統計のニュースに一喜一憂する必要はありません。積み立て設定をしたら、あとは忘れて年に1回口座を確認するくらいで十分です。それが、普通の人にとって最も確実で、最も心穏やかに資産を築ける方法だと、僕は断言します。
トウシル:波瀾(はらん)万丈なご経験をされたまーしーさんの言葉だからこそ、非常に重みがあります! 本日は貴重なお話をありがとうございました。
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