グロース株とバリュー株のパフォーマンス格差は世界金融危機以来、約15年ぶりの水準に上昇

 米ワイオミング州で開かれていた年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」が終了した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は講演で、9月に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)において利下げに着手する可能性を示唆した。次回のFOMC会合は9月16日から17日の日程で開催される。

 この講演を受けて市場では利下げ推進が優勢なコンセンサスとなりつつある。ただし、一方でパウエル議長は持続的なインフレリスクにも言及、関税による消費者物価への影響は「今や鮮明」であり、「関税による物価上昇圧力がより持続的なインフレ力学をもたらす可能性もある」との警戒感も示した。9月会合の後、追加の利下げが続くかどうかの保証はない。

 市場の過度な偏りは相場の反転によって巻き戻されるというのが常である。8月18日のリアル・インベストメント・アドバイスの記事「Excess Bullishness & 10-Rules To Navigate It(過度な強気心理と、それに立ち向かう10のルール)」から、市場の偏りを示す事象をいくつか抜粋してご紹介する。

 まず、グロース株とバリュー株のパフォーマンスの差だ。依然としてグロース株がバリュー株に対して大きくリードしている。この優位性はエヌビディア(NVDA)マイクロソフト(MSFT)など、AI関連のビッグテックによってけん引されている。このパフォーマンス格差は現在、世界金融危機以来、約15年ぶりの水準となっている。

時価総額/イコール・ウエート指数の推移

時価総額/イコール・ウェイト指数の推移
出所:リアル・インベストメント・アドバイス

 過度な強気センチメントを示しているのは株式市場だけではない。暗号資産市場も非常に似た特徴を示している。ビットコインや暗号資産に関心がなく、一切関わるつもりがなかったとしても、間違いなく影響を受けることになるだろう。

 なぜなら、暗号資産市場は、リスク選好や投機のバロメーターとして、またリスク資産そのものとして機能しているだけではなく、ハイテク株と密接に相関しているためである。

 次のチャートはビットコインとナスダック総合指数の推移である。この相関は単なる偶然といえるのだろうか。ビットコインが動けば、ハイテク株に影響を与える。前述の通り、一部ハイテク株へ過度に集中している株式市場はハイテク株の動きに大きく左右されることが想定される。

ビットコインとナスダック指数の推移

ビットコインとナスダック指数の推移
出所:リアル・インベストメント・アドバイス

 パウエル議長が示唆したように、近い将来にFRBが利下げを行えば、将来の利益に対する割引率が下がる。これによって、投資家が株式リスクに支払える現在の評価額が上昇するという期待がある。一方で、現在の市場評価には金利の恩恵がすでにほぼ織り込まれている可能性もある。

楽観がピークに達したときに何が起きるのか?

 重要なのは、楽観がピークに達したとき市場では常に反転が起きるということだ。

「現在の高いシラーCAPE比率は、米国の株式評価が歴史的平均に比べて高騰していることを示唆しており、これはしばしば長期的な投資家リターンの低下に先行する状態である」

(ISABELNET_SA)

評価額と指数関数的成長トレンドからの乖離(かいり)率の比較

評価額と指数関数的成長トレンドからの乖離(かいり)率の比較
出所:リアル・インベストメント・アドバイス

 今後、どのような要因が相場の失望につながるのか。また、それがいつ起きるのかを正確に言い当てることは難しい。ただし、いずれその時が来て、過度な強気が反転することだけは分かっている。市場に極端なセンチメントが存在する現在、投資家はどのようにこうした明らかなリスクに対応しつつ、全体の流れに参加すればよいのか。それにはいくつかの取りうる手だてがある。

1.クオリティ株かつディフェンシブ株にリバランスする:業績が安定している非投機的なセクターへの配分を増やそう。市場の調整局面では、ディフェンシブ銘柄が相対的に強みを発揮する。

2.キャッシュ比率を維持・拡大する:現金は選択肢を増やす。調整局面では、現金が買いの余力となる。強気相場で全資金を投入するのは避ける。

3.ヘッジやボラティリティ戦略を追加する:インバース上場投資信託(ETF)やボラティリティ連動の資産など、防御的なヘッジを検討する。小規模でもポジションを持つことで、大幅な下落時のダメージを緩和できる。

4.ポジショニングやセンチメント指標をウオッチする:証拠金残高、各種センチメント調査(AAIIやInvestors Intelligenceなど)を定期的に確認する。

5.オルタナティブ資産で分散を図る:実物資産や相関の低いヘッジファンドなどリスク管理された戦略を加えておくと、下落時のクッションとなりつつ成長の可能性も維持できる。

6.最悪のケースでポートフォリオをストレステストする:ドットコム・バブル崩壊などのような下落を想定し、20~30%のドローダウンとなった場合にも流動性危機に耐えられる構造か確かめる。

7.段階的にエクスポージャーを増減させる:強気であっても、短期に一括で買うのではなく、時間を分散して徐々にポジションを築く。

8.柔軟性を保ち、全力投資を避ける:センチメントが過熱したらポジションを軽くし、分散、買い増し、利益確定を繰り返す。

9.機動的な運用を心がけ、全資金投入は避けましょう:調整局面では、固定的なポジショニングが大きなダメージにつながる。

10.テーマごとにエクスポージャー上限を定める:AI関連などテーマごとに最大エクスポージャーの上限を設定する。パフォーマンスがその上限を超えた場合は、利益を計画的に削減する。

 過去1年の株価上昇率がS&P500種指数の構成銘柄で最も大きく、株価が高値圏にあるパランティア・テクノロジーズ(PLTR)のインサイダー取引を見てみると、過去3カ月、6カ月、12カ月の期間においてインサイダーは自社株を売り続けていることが分かる。

 8月5日のブルームバーグの記事「パランティアで5人目のビリオネア、567%株急騰で-創業者以外で初」は、4人の共同創業者に続き最高技術責任者(CTO)が5人目のビリオネアになったことを報じている。

パランティア・テクノロジーズのインサイダー取引(過去3カ月、6カ月、12カ月)

パランティアのインサイダー取引(過去3カ月、6カ月、12カ月)①
出所:Barchart
パランティアのインサイダー取引(過去3カ月、6カ月、12カ月)②
出所:Barchart

パランティア・テクノロジーズ(日足)

パランティア(日足)
(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 上記は8月1日以降のデータであるが、CEOのアレックス・カープ氏や前述のCTOであるシャイアム・サンカー氏など、パランティア・テクノロジーズの幹部が自社の株式を売り越している。インサイダーの売りは何を意味しているのか。いずれにせよ、強気相場で全資金を投入するのは避け、センチメントが過熱したらポジションを軽くするのも一つの例だといえるだろう。

8月27日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 8月27日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土信田雅之さん(楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト)をゲストにお招きして、「どうなるエヌビディアの決算!?」「トランプとFRB」というテーマで、土信田さんと話をしました。ぜひ、ご覧ください。

8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube
8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube
8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube
8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー 画像

8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

8月27日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
出所:YouTube