中央銀行はもはやインフレと戦っていない
日米の金融当局が国債市場に介入し、金利のコントロールを行っている。ベッセント財務長官は過去最大の100億ドル規模の国債買い入れを行った。まさに国家管理相場だ。
米国30年国債金利(日足)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
日本40年国債金利(日足)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
「米国は数兆ドル規模の短期債務を、はるかに高い金利で借り換えなければならない。この借り換えリスクは、担保変換ファシリティ、額面貸出、そしてデュレーション・バックストッピングによる暗黙のイールドカーブ・コントロールによって隠蔽されている。米連邦準備制度理事会(FRB)はもはやインフレと戦っていない。金融政策の独立性を保っているかのように見せかけながら、機関の崩壊と戦っているのだ。これは名前による量的緩和(QE)ではなく、機能による疑似QEである。BTFPと関連プログラムは量的緩和とは呼ばれていない。しかし、どちらも同じ結果をもたらす」
(EndGame Macro)
株価が堅調なのはこうした疑似QEが行われているのと、世界的に軍事費増大をはじめとした財政出動が一斉に行われているからである。世界の現金(M2)の量と最も連動するビットコインや株式は堅調な動きを続けている。
世界の流動性とビットコイン
こうした市場の変容を以前から指摘していたリン・オールデンは、最近の市場の動きを次のように述べている。
「我々は今、財政主導の新たなサイクルに入りつつある。それは、特定の要因に縛られないという意味で、より持続的なものとなっている。ステロイドを投与されているのだ。現在は対国内総生産(GDP)比の債務は増加しているが、金利は低下していない。人口動態は大きな逆風となっている。今、ベビーブーマー世代だけがその恩恵を受けている。今後10年間で、社会保障基金に蓄えられている3兆ドルは、基本的に経済に再投入され、対外債務に転嫁されることになるだろう」
今回のイーロン・マスクとトランプ大統領の茶番劇により、大統領執務室に誰が座ろうとも債務は減らないことが明らかになっている。有権者は共和党を信用しなくなっている。
マスクとトランプとの間で起きたことは、トランプが選挙キャンペーンで掲げたMAGAの理想をマスクが支持し、トランプがスワンプ(ディープステートの沼地)から来た法案を売りつけるという、荒唐無稽な構図となっている。
問題は連邦債務危機がおおむね限界点に達したことである。米国債の利払いは今や国防費を上回り、単独で最大の予算項目になろうとしている。この軌道は持続不可能であり、財政の大混乱が迫っていることを示している。ピーター・オンジェは、「連邦政府の赤字の急増は2008年に匹敵する金融危機を引き起こすだろうか? 3兆ドルの赤字なら、それは時間の問題だ」と述べている。
トランプ政権は米ドルが著しく過大評価され、それが経済を疲弊させている原因だと考えている。トランプはどこかの時点で、ドル安政策(誘導)を打ち出すかもしれない。
ドルインデックスCFD(日足)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター
こうした問題は、いずれ「金融リセットが行われる可能性」を示唆している。フォース・ターニング(第四の転換点)が到来している。私たちの周囲で見られる二極化、内紛や世界戦争の脅威の増大。現在生きている全ての世代が、良きにつけあしきにつけ、この危機がどのように解決されるかを決定する重要な役割を担うことになる。
インフレは結果であり、原因ではない。それは不換紙幣の過剰印刷、過剰債務の結果である。米国債とドルはサード・パーティ・リスクがある。ゴールドやビットコインに信用リスクはない。ゴールドの延べ棒やビットコインは不換紙幣による信用に支えられていない。
中央銀行はもはやインフレと戦っていない。FRBや日本銀行を見ていれば分かるが、インフレは危機ではなく巨大な債務の解決策なのである。いずれにせよ、債務問題の解決にはインフレが使われる。
「この列車(負債バブル)を止めるものは何もない。私が今見ているのは、列車を止めようとして失敗しているところだ」
(リン・オールデン)
6月11日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
6月11日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所 チーフアナリスト)をゲストにお招きして、「米中対立と半導体業界の勢力地図」「疑似QEで金利をコントロール」「米国は市民戦争へ」「イーロン・マスクとトランプ」というテーマで話をしてみました。ぜひ、ご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
6月11日:楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
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