前回は、ドル建て市場(海外市場)およびドル円が、どのように円建て市場(国内市場)に影響を及ぼすかについて、いくつかのパターンに分けて説明しました。基本的には円建て市場はドル建て市場に追随するが、ドル円が大きなトレンドを伴った動きとなった場合、ドル建て市場と異なる動きとなるケースがある、という内容でした。

その中で、換算表を用い、ドル建て金価格とドル円が仮にいくら変動した場合、計算上、いくら分円建て市場が動く、というドル建て金価格とドル円の値動きから想定される、円建て金の変動幅の目安を記述しました。

今回は、その変動幅について、実際のお取引において対象銘柄の価格がどれくらい変動すればどれくらいの損益が発生するのかを計算する、損益計算について触れたいと思います。

図:商品先物取引における損益計算例

出所:筆者作成

値幅を計算する際の「売値」・「買値」と、損益を計算しようとする建玉(たてぎょく:未決済のポジション)の「売り建玉」・「買い建玉」を整理すると以下のようになります。

図:「買い建玉」「売り建玉」別の値幅の求め方

出所:筆者作成

先物取引という特性上、新規注文の発注時、必ず「買い」か「売り」かの区別をします。「買い」では建値(たてね※)よりも市場の価格が上がれば含み益が発生、下がれば含み損が発生、「売り」では建値よりも市場の価格が上がれば含み損が発生、下がれば含み益が発生します。※新規注文が約定(やくじょう:取引所で注文が成立すること)した時の価格。

倍率は、第5回「倍率と取引単位」でお伝えした“倍率”を用います。

図:各種銘柄と倍率

銘柄
(当社取扱い商品)
倍率
1,000 倍
ゴールド100 100倍
金ミニ 100倍
10,000倍
白金 500倍
白金ミニ 100倍
パラジウム 500倍
ガソリン 50倍
灯油 50倍
原油 50倍
軽油 50倍
中京ガソリン 10倍
中京灯油 10倍
ゴム 5,000倍
とうもろこし 50倍
一般大豆 25倍
小豆 80倍

出所:東京商品取引所の資料を基に筆者作成

2017年6月7日(水)の午前9時ごろ、以下のとおり東京金 期先(きさき※)の価格は4,539円で前日比13円高です。
第4回「限月と先限つなぎ」をご参照ください。

図:2017年6月7日(水)午前9時ごろの東京金の価格 価格の単位は円/グラム
※期先(18年4月限)の前日終値は4,526円

出所:マーケットスピードCXの相場表画面より抜粋

仮に東京金期先を前日終値である4,526円で“買い建玉”をしていたとします。この場合、値幅は+13円(=4,539円(決済時の売値と仮定)-4,526円(新規建玉時の買値))となりますので、取引枚数1枚とした場合の損益計算は以下のようになります。(取引手数料は、楽天証券の国内商品先物取引において「一律コース」を選択し、日をまたいだ取引をした場合に適用される700円(税込)/枚を適用)

図:東京金、買い建玉を1枚保有、買い値から価格が13円上昇した場合

出所:筆者作成

逆に、東京金期先を前日終値である4,526円で“売り建玉”をしていたとすれば、値幅は-13円(=4,526円(新規建玉時の売値)-4,539円(決済時の買値と仮定))となりますので、同じく取引枚数1枚、取引手数料(税込)を700円とした場合の損益計算は以下のようになります。

図:東京金、売り建玉を1枚保有、売り値から価格が13円上昇した場合

出所:筆者作成

また、以下は各銘柄の2017年6月7日9時ごろの価格、±3%の変動幅、および当該変動幅発生時の1枚あたりの損益を表にしたものです。

元々の値位置によって異なりますのであくまでも目安ですが、3%、価格が動いた場合、1枚あたりの損益がどれだけになるかを示しています。一口に3%といっても銘柄毎に1枚あたりの損益は大きく異なることが分かります。

図:各銘柄の2017年6月7日9時ごろの価格、±3%の変動幅、
および当該変動幅発生時の1枚あたりの損益 (単位:円)

  2017年6月7日
9時ごろの価格
左記価格の
±3%の変動幅
±3%の変動幅発生時、
1枚あたりの損益
(手数料を700円(税込)として計算)
4,537 ±136 -136,700 ~ +135,300
ゴールド100 4,544 ±136 -14,300 ~ +12,900
金ミニ 4,536 ±136 -14,300 ~ +12,900
62.2 ±1.9 -19,700 ~ +18,300
白金 3,387 ±102 -51,700 ~ +50,300
白金ミニ 3,406 ±102 -10,900 ~ +9,500
パラジウム 2,948 ±88 -44,700 ~ +43,300
ガソリン 46,630 ±1,399 -70,650 ~ +69,250
灯油 47,620 ±1,429 -72,150 ~ +70,750
原油 34,130 ±1,024 -51,900 ~ +50,500
ゴム 180.6 ±5.4 -27,700 ~ +26,300
とうもろこし 22,350 ±671 -34,250 ~ +32,850
一般大豆 45,970 ±1,379 -35,175 ~ +33,775
小豆 11,680 ±350 -28,700 ~ +27,300

出所:筆者作成

損益計算は、仮に相場が思惑通りに動いた場合にどれだけの利益になるのか?(なったのか?)を計算するだけでなく、思惑に反して相場が動いた場合にどれだけの損失になるのか?(なったのか?)を計算するものでもあります。

新規建玉前に、建玉しようとしている銘柄の価格がどれだけ動けばどれだけ損益が発生するのかをシミュレーションすることが、リスク管理の第一歩であるのではないかと思います。

引き続きよろしくお願いいたします。