利回り5%と割安のJリート
トランプ関税への不安からグローバル企業の株が買いにくくなる中、内需の好業績ディフェンシブ株を見直す動きが出ています。
不動産投信であるJリート(投資家から資金を集めて日本国内の不動産を運用して賃料収入などを分配する金融商品)は、業績好調にもかかわらず過去3年にわたり売られてきたため、平均分配金利回りが5.1%まで上昇し、「割安」と判断しています。
以下の図は東証REIT指数の推移です。東証REIT指数とは東京証券市場に上場するREIT(リート:不動産投資信託)全銘柄を対象に「時価総額加重型」という方法で平均した指数です。
東証REIT指数は2022年以降日本銀行の利上げを嫌気して軟調に推移してきましたが、2025年に入って割安感・利回りの高さで小反発し、1,709.00ポイント(2025年3月25日時点)となっています。加重平均した予想分配金利回りは5.1%です。
コロナショックで価格が下落したことで、予想分配金利回りは、2020年3月には一時6.8%まで上昇しました。その後、ショックが収まった時点で、価格が急反発し、利回りは2021年6月3.4%まで下がりました。
現在、平均利回りは5.1%まで上昇しており、過去の利回りと比べて、高利回りで割安な水準と考えています。
東証REIT指数(配当なし)と予想分配金利回り(加重平均)

利回り5.4%で競争力の高い物流施設のGLP
GLP投資法人の投資口価格と予想分配金利回り

Jリートの始めの一銘柄目としては、今後も成長が期待できる物流リートが良いと考えています。その中でもGLPが買いと考えます。
理由は以下二つです。
・旺盛な物流施設需要と高い稼働率
・NAVの高い成長性
旺盛な物流施設需要と高い稼働率
物流施設リートが良いと考える理由として、構造的な要因に支えられた旺盛な物流施設需要です。以下は3PL企業による賃貸面積を示したグラフです。
3PLとは、サードパーティー・ロジスティクスの略で、物流業務を代行する企業は3PL企業と呼ばれます。この需要は一時的なものではなく、Eコマース、冷蔵施設、半導体を広く支える施設として中長期的に継続すると考えています。
3PL企業による賃貸面積(Q2累積)

また、GLPはその中でも競争力の高い、好立地、大型の先進的物流施設に投資しており、GLPのホームページによれば2月28日時点で99.5%と高い稼働率となっています。
NAVの高い成長性
GLPは投資主還元にも積極的です。GLPは10期連続での物件売却やリートにおける「自社株買い」である「自己投資口取得」を行ってきました。1口当たり分配金とNAVは以下の表のように大きく成長しています。
GLP投資法人の分配金とNAVの状況

利回り5.8%でシティホテルに強みのあるインヴィンシブル
インヴィンシブル投資法人の投資口価格と予想分配金利回り

二つ目の銘柄として買うのが良いと考えるのはインバウンドによって成長しているホテルリートです。その中でもインヴィンシブル投資法人を買いとする理由は以下二つです。
・インバウンドの増加と宿泊施設稼働率
・高い稼働率とRevPAR
インバウンドの増加と宿泊施設稼働率
訪日外国人数は、以下のグラフで示す通りコロナショックで一時激減しましたが、今年は見事な復活を遂げました。2024年には、訪日外国人観光客数がコロナ前のピークだった2019年を超えて、3,687万人と過去最高となりました。2025年も高水準で推移するとみています。
訪日外国人観光客数:2003~2024年

増えるインバウンドによって活況なのが宿泊事業です。タイプ別の宿泊施設稼働率は以下の通り推移しています。
タイプ別 客室稼働率(全国・従業員10人以上施設)2018~2024年

「旅館・リゾートホテル」と「ビジネス・シティホテル」で水準に差はありますが、コロナショックで一時ビジネスホテル以外は稼働率10%以下まで下がり、今年にかけて2019年以前に近い水準まで宿泊施設全体が回復しています。
インヴィンシブルはこのように好調な宿泊需要の中で、高い稼働率の宿泊特化型のビジネスホテルと、多様なニーズに応えるフルサービス型のシティホテルとリゾートホテルにバランス良く投資しています。今後も、コロナショックから回復したインバウンド需要と宴会・会議などの非宿泊需要を取り込み、収益が拡大すると考えています。
【ご参考】宿泊施設タイプについて、国土交通省 観光庁では以下の定義としています。
旅館:和式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所以外のもの
ホテル:洋式の構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所以外のもの
さらに以下の定義により3種類に分類しています。
(1)リゾートホテル:ホテルのうち行楽地や保養地に建てられた、主に観光客を対象とするもの
(2)ビジネスホテル:ホテルのうち主に出張ビジネスマンを対象とするもの
(3)シティホテル:ホテルのうちリゾートホテル、ビジネスホテル以外の都市部に立地するもの
高い稼働率とRevPAR
インヴィンシブルのホテル客室稼働率とRevPAR(販売可能な客室1室当たりの収益を表す値)は以下の通り推移しています。
インヴィンシブル投資法人 客室稼働率とRevPARの推移2018~2024年(1~10月)

コロナショックで落ち込んだ稼働率ですが、現在は回復してRevPARはコロナショック前の水準を超えて上昇しています。稼働率とRevPARのどちらも上がっていることから、稼働率を維持したまま収益性を向上できていることが見て取れます。
【ご参考】RevPARとは
RevPAR(Revenue Per Available Room)は、ホテル業界で広く使用される指標の一つで、客室稼働率当たり収益の指標です。この指標は、ホテルの収益性を評価するために使用され、特に客室の稼働率と平均客室単価(ADR: Average Daily Rate)を組み合わせたものです。
RevPARの計算方法は以下の2通りです。
・RevPAR = 平均客室単価(ADR) × 客室稼働率
・RevPAR = 総客室収入 ÷ 利用可能な客室数
ホテルは安売りすると客室稼働率は上がる一方で、客室単価が下がってしまいます。RevPARは平均客室単価と客室稼働率のバランスをとって、ホテルがどれだけ効率的に収益を上げているのかを確認する指標となります。
以上の2銘柄は強みを生かして好業績なものの金利上昇を嫌気して価格が低迷しており、予想分配利回りが高く割安なため買いと判断しています。
不動産への小口投資が可能なリート
そもそもJリートについてよくご存じでない方のために、Jリートとは何かご説明いたします。
リート(REIT)はReal Estate Investment Trustの略です。日本国内のREITは「J」を付けてJ-REIT(ジェイリート)と呼ばれています。
リートは不動産への小口投資を可能にした「上場投資信託」であり、証券取引所に上場された一般の株式と同じように売買できる商品です。
定期的に分配金を受け取れる
Jリートの特徴の一つは分配金です。株における配当金にあたります。投資法人として利益の90%以上を分配することで実質的に法人税を免除されるので、収益の大半が分配金として投資家に支払われます。そのため分配金利回りが一般的な「株」と比べ安定し高いことが特徴と言えます。
ただし、確定利回り商品ではないため業績が悪化すれば分配金が引き下げられ、利回りが下がるだけでなく価格も下がるリスクがあります。その意味では「株」に近い商品です。
リスク管理上、Jリートは、「日本株」と「国内債券」の中間的運用商品として扱う必要があります。
リートに投資して分配金を受け取る流れ

個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、ローンを組むとしても大きな金額になります。資金規模の制約から、個人投資家が直接投資できる対象は限られます。
一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。
ところが、リートが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。リートの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でも、リートを通じて大型ビルに投資することもできるようになりました。
Jリートには、さまざまな種類がある。代表銘柄を紹介
Jリートには、さまざまな種類があります。もともとは、オフィスビルや住宅・マンションに投資するファンドがほとんどでしたが、近年は、ホテルや物流施設、商業施設など、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。
各投資対象の参考銘柄は、以下表です。
Jリートの参考銘柄:2025年3月25日時点
コード | 銘柄名 | 主な投資対象 | 分配金 利回り ※年率 (会社予想) |
投資口 価格 |
---|---|---|---|---|
8956 | NTT都市開発リート投資法人 | 複合型 | 4.47 | 134,600 |
8977 | 阪急阪神リート投資法人 | 総合型 | 4.27 | 153,600 |
3234 | 森ヒルズリート投資法人 | オフィスビル | 4.54 | 135,900 |
8951 | 日本ビルファンド投資法人 | オフィスビル | 3.72 | 129,000 |
8952 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | オフィスビル | 4.34 | 112,900 |
3281 | GLP投資法人 | 物流施設 | 5.37 | 123,000 |
3283 | 日本プロロジスリート投資法人 | 物流施設 | 4.73 | 236,700 |
3466 | ラサールロジポート投資法人 | 物流施設 | 5.65 | 139,700 |
8963 | インヴィンシブル投資法人 | ホテルなど | 5.83 | 64,900 |
3292 | イオンリート投資法人 | 商業施設など | 5.41 | 125,500 |
3269 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 住居 | 4.08 | 147,100 |
出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成(分配金利回りは2025年3月25日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算) |
割安なJリートへのTOB
割安なJリートは、投資ファンドによるTOB(投資口公開買い付け)の対象となるケースが見られます。シンガポールの投資ファンドであるCITCO TRUSTEES (UT) LIMITED AS TRUSTEE OF 3D ENDEAVOR MASTER FUND - II(以下3D)は、1月28日にNTT都市開発リート投資法人、2月13日に阪急阪神リート投資法人に対してそれぞれTOBを開始しました。
各リート投資法人はその後、このTOBに中立の立場を表明しました。賛成ではないが、反対もしないという立場です。これにより投資口価格はTOB価格近くまで急騰しました。
NTT都市開発リートのTOBは3月21日、買い付け予定数の下限に達しなかったため不成立で終了しました。しかし、その後も投資口価格は堅調で、買い付け額13万1,890円より高い13万2,300円(2025年3月25日時点)となっています。
NTT都市開発リート投資法人の投資口価格推移

阪急阪神リート投資法人の投資口価格推移

投資主価値の見直す動き
3DはどちらのTOBも、成立した場合の保有割合を既所有分と合わせて10~15%とする買い付けにとどめ、アセットの状況に対して投資口価格が割安であるための純投資を目的としました。
今回の3Dの動きをきっかけとして、Jリート全体で自己投資口取得や分配金の増加といった投資家価値の向上の動きが拡大すると考えられます。
その他、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を意識した投資口分割による小口化が進み多くが20万未満となり、今後も個人投資家のJリート投資拡大が期待されています。
小口からの分散投資が可能な商品
Jリートは各投資法人を選ぶ個別銘柄以外に、複数の銘柄に投資できる投資信託や、Jリートの指数に連動したETF(上場投資信託)があります。
投資口価格が安い銘柄であれば数万円から買えるJリートですが、複数の銘柄を組み合わせると投資額が大きくなります。その場合ETFや投資信託は比較的少額からの分散投資が可能です。時間分散したい方は積立や複数回に分けた投資も可能です。
【参考】Jリート関連投資商品例
投資信託(当社ではクレジットカード決済、楽天キャッシュ、楽天ポイントで購入可能。以下はNISA成長投資枠対応)
「Smart-i Jリートインデックス」
「野村Jリートファンド」
上場投資信託(ETF)
「NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信」(1343)
「MAXIS Jリート上場投信」(1597)
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