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著者の土信田 雅之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「[今週の株式市場]日本株の「割安感」と「出遅れ感」~イベント少ない中で上昇できるか~」
先週末2月14日(金)の日経平均株価は3万9,149円で取引を終えました。前週末終値(3万8,787円)からは362円高と小幅に上昇し、週間ベースでも3週ぶりの反発となりました。
前回のレポートでも指摘していたように、先週の株式市場は、「日米の企業決算」や「米国の経済指標」、「トランプ関税の動向」の3つが焦点だったわけですが、単純な週末の終値の比較だけで判断すれば堅調だったと言えそうです。
こうした相場の底堅さを受けて迎える今週ですが、週初17日(月)の米国市場が休場となるほか、日米の企業決算も先週でほぼ一巡したこともあって、先週とは反対に、国内外のイベントが少なめの週になります。
そのため、手掛かり材料が乏しい中で、株式市場は「買い戻し」から「買い騰がる」展開へとつなげられるかが試されることになりそうです。
日経平均は注目イベントを通過し、3万9,000円台を回復
まずは、いつものように、先週の株式市場の状況から確認して行きます。
図1 日経平均(日足)の動き(2025年2月14日時点)
先週の日経平均は、週初10日(月)の取引時間中につけた安値が200日移動平均線をサポートにする格好で反発し、その後も戻り基調が続きました。週末にかけては25日移動平均線を上抜け、節目の3万9,000円台乗せも維持して終えるという展開でした。
上の図1は日経平均の日足チャートですが、基本的な見方については、これまでとあまり変化はなく、昨年10月から続く「レンジ相場(3万8,000円から4万円)」の範囲内で、「先週は株価の足取りがしっかりしていた」ということになります。
図2 日経平均(日足)とトレンドライン(2025年2月14日時点)
こうした、日経平均の足取りをトレンドで捉えてみると、上の図2にもあるように、前回のレポートで指摘していた、(2)の範囲の上限あたりで推移していたことになりますが、今週以降も株価の戻り基調がこのまま続けば、昨年8月5日安値と10月15日高値の上昇幅を基準としたギャン・アングルの3×1ラインに沿う格好で株価が上昇していく(1)の展開も見えてくることになります。
それに伴って日経平均の4万円台乗せも達成することになります。
日経平均は再び4万円台を回復できるか?
冒頭でも述べましたが、今週は比較的イベントが少ない週となります。
先週の焦点のひとつになっていた企業決算は先週でヤマ場を越え、米国で今週発表される小売大手のウォルマート(WMT)と、来週発表のエヌビディアなどが、今後注目されそうな決算になりそうです。
同じく、先週の焦点となっていた米国の経済指標についても、米1月分のCPI(消費者物価指数)とPPI(卸売物価指数)が予想をやや上振れてインフレ警戒がくすぶる一方、1月の小売売上高が予想を下回るなど、まちまちの結果となりましたが、サプライズと呼べるほどの変動はなく、市場の反応も限定的となりました。
さらに、トランプ関税については、「鉄鋼・アルミ製品への25%関税」と「相互関税の内容」が注目されていました。
前者については、関税の実施が表明されたものの、関税が発動される3月12日までに時間があり、米国と相手国との交渉次第では状況が変化するかもしれないこと、また、後者についても、トランプ米大統領が13日(木)に「相互関税」の導入を指示する覚書に署名したことが報じられました。
しかし、国ごとに調査したうえで個別に対応する方針が示されたことで、こちらも発動されるまでには、時間が掛かる見込みとなったため、市場の警戒感はいったん後退した格好です。
引き続き、トランプ米大統領の不確実性には要注意ですが、これまで見てきた先週の焦点は、今週の相場のムードに影を落とす格好にならなかったと思われ、今週の株式市場はイベントが少ない中でも、意外にスルスルと上昇していく可能性があります。
したがって、日経平均が4万円台に乗せる展開も十分に有り得ると思われますが、一応、目先の日経平均株価が期待通りに上昇しない展開についても考えておく必要がありそうです。
判断が難しい日本株の「出遅れ」
日経平均を含め、日本株が思ったよりも上昇しないケースを考える上でカギとなるのが、「出遅れ感」です。
図3 各国主要株価指数のパフォーマンス比較(2024年末を100)(2025年2月14日時点)
上の図3は、昨年末を100とした、世界主要株価指数のパフォーマンス比較の推移を示したものです。
先ほどまで、日経平均の堅調さについて見てきましたが、海外の株価指数と比べると、日本株がかなり出遅れていることが分かります。
その一方で、足元で高いパフォーマンスを示しているのが、香港ハンセン指数とストックス欧州600指数です。
香港ハンセン指数については、いわゆる「DeepSeek(ディープシーク)」ショックの逆パターンで、アリババやテンセントといった中国のテック株が積極的に買われる展開となっていることが株価上昇の理由として考えられます。また、ストックス欧州600指数については、米国株と比べた割安感や出遅れ感が株価上昇の原動力になっていると思われます。
そのため、「欧州株と同じように、割安感と出遅れ感がある日本株にも資金が向かう流れになれば、日本株も上昇していくのでは?」と考えることができます。
先週末14日(金)時点でのストックス欧州600のPER(株価収益倍率)は、予想ベースで14.47倍、日経平均は15.37倍となっており、まだ欧州株の方が割安ではありますが、米国株(S&P500)が22.58倍ですので、そろそろ日本株の割安感が意識されてもおかしくはありません。
実際に資金が動くことになれば、日経平均の4万台乗せはさほど難しくはないと思われます。
ただし、金融政策面では、先日利下げを実施した欧州(ECB)に対して、日本(日銀)は利上げが実施される見込みが優勢となっています。こうした金融政策の方向性の違いが欧州株と日本株のパフォーマンスの差につながっている面がありそうです。
そして、割安感の修正よりも、積極的に上値をトライしている香港株市場の方がワクワク感や魅力がありますし、とりわけ、今週は、バイドゥやアリババ、ビリビリなど、米国市場に上場している中国企業の決算が予定されていることなどを踏まえると、日本株が放置される状況が続いてしまうかもしれません。
いずれにしても、「先週末14日(金)までに決算を発表した国内上場企業(3月決算企業)の純利益(4月~12月期)が前年同期比で15%増となった」と日経新聞が報じているように、企業業績の視点で見れば、日本株が目立って弱いというわけではありません。
そのため、仮に目先の日本株が軟調となった場合には、「押し目を拾うチャンス」と見做される可能性が高く、底堅い展開は続くことになりそうです。
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