11月雇用統計プレビュー
BLS(米労働省労働統計局)が12月6日に発表する11月の雇用統計では、NFP(非農業部門雇用者数)が、20.0万人増の予想となっています。前回10月は、ハリケーンやストライキの影響で、増加数が事前予想より9万人も少ない1.2万人増にとどまりました。
11月はその反動もあって、過去1年の平均値である18.5万人を再び上回りそうです。失業率は0.1ポイント上昇して4.2%、平均労働賃金は、前月比0.3%増(前月0.4%増)、前年比3.9%増(前月4.0%増)の予想です。

FRB(米連邦準備制度理事会)の政策に対するマーケットの評価に変化が生じています。これまでは、7月のFOMC(米連邦公開市場委員会)会合の「利下げ見送りは失敗」という意見が大勢を占めていました。ところが最近では逆に、9月FOMC会合の「大幅利下げは失敗」だったという意見が増えています。
10月の雇用者数は一時的要因で大きく減少したものの、その他の経済指標は堅調さを維持しています。米国のインフレ率はいまだ目標値を上回ったままで、ダウ工業株30種平均株価は史上最高値を更新し続けています。パウエルFRB議長は9月の記者会見で利下げを0.5%に決定した理由を説明しましたが、そのほとんどは実際には起きていません。
今回の失業率が4.0%を下回る結果になれば、FRBに金融緩和を急ぐ必要はなくなり、今月の利下げを見送る可能性が高いとマーケットは予想しています。なぜなら、米国の経済成長がトレンドを上回るペースで拡大を続けている中で、FRBがデータ重視の政策を掲げながら利下げを継続するのはつじつまが合わないからです。
政策ガイダンスをバックワード(振り返り)からフォワード(予測)方式に戻すことはできないとしても、今後もデータが強いままならば、FRBは利下げ軌道の調整が必要になるでしょう。

セルフサービスと賃金の関係
FRBが考える雇用市場の問題とは、雇用者数が増えることではなく、求人数に対して雇用者数が足りないことです。従業員つなぎ止めのために企業はより高い賃金を払う必要が生じ、そのコストは最終的に価格に転嫁されてインフレ率が下がらないことがFRBの悩みです。
ここ数年で飲食店やスーパーでセルフレジが急速に普及しています。セルフレジとは、自分の買い物を自分でスキャンしてレジに読み取らせて会計をするシステムです。日本のコンビニでは、店頭での触れ合いや暖かさが減ってしまうという理由で後ろ向きでしたが、新型コロナの流行でソーシャルディスタンスが求められるようになってから、導入が一気に進みました。

レストランなどの飲食店では、水のセルフサービスは以前からありましたが、最近は料理の注文まで自分でするスタイルが増えています。これが便利か面倒かは意見が分かれますが、労働の観点からすれば、客は店のためにタダ働きしていることになります。
自分のスマホでオーダーする場合、インフラや通信費までも自己負担になるので、店にお金を払って働いているようなものです。一方、店側にとっては客がセルフサービスを利用するほど仕事が減るわけで、人手不足解消と同時に従業員の時間当たり給料は上昇することになります。

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