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著者の今中 能夫が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「決算レポート:エヌビディア(「Blackwell」の量産進む)」
毎週金曜日午後掲載
本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)
エヌビディア
1.エヌビディアの2025年1月期3Qは、93.6%増収、営業利益2.10倍
エヌビディアの2025年1月期3Q(2024年8-10月期、以下今3Q)は、売上高350.82億ドル(前年比93.6%増)、営業利益218.69億ドル(同2.10倍)となりました。データセンター向けが307.71億ドル(同2.12倍)と大幅に増加しました。市場別売上高構成比を見るとデータセンター向けが87.7%に達しています。このデータセンター売上高の約半分がクラウドサービス会社向けです。
また、主力の「H100」の拡張版である「H200」が今2Q比で大幅増となりました。売上高は数十億ドルになりました。今3Qから出荷開始した新型AI半導体「Blackwell」の売上高は数十億ドルとなり、会社予想を上回った模様です。現在フル生産中であり、今4Qは「H200」「Blackwell」ともにさらに増加する見込みです。AI半導体は需要が供給を大幅に上回る状態になっています。
今3Qは今2Q決算発表時に会社側が提示した業績ガイダンスのレンジ平均値、売上高325億ドル、売上総利益率74.4%、営業利益198.80億ドル(研究開発費を含む販管費の会社側ガイダンス43億ドルから計算)、当期純利益167.90億ドル(会社側ガイダンスの営業外収支3.50億ドルのプラス、税率17%より計算)を上回りました。表3では、2025年1月期3Q楽天証券予想と実績を比較していますが、楽天証券予想は会社側ガイダンスから計算していますので、これは実質的に会社予想と実績の比較になります。
全社の売上総利益率は今2Q75.1%から今3Q74.6%に低下しましたが、「Blackwell」が「H100」「H200」に比べれば採算の低い量産初期であることを考えると、堅調な売上総利益率と言えます。
また、営業利益、営業利益率は、研究開発費を含む販管費が会社側ガイダンスの43億ドルに対して42.87億ドルとなったため、売上高の増加、売上総利益の増加により、営業利益も会社側ガイダンスを上回り、営業利益率は今2Q62.1%から今3Q62.3%へほぼ横ばいでした。
地域別売上高(請求書送付先ベース)を見ると、アメリカ向けが最も多く、今2Q130.22億ドルから今3Q148.00億ドルへ増加しました。アメリカは世界で最も大規模データセンターが多く、大規模データセンターを運営しているクラウドサービス会社(アマゾン、マイクロソフト、アルファベットなど)がエヌビディアの大手顧客(直接AI半導体を出荷するだけでなく、間にサーバーメーカー、システムインテグレータなどを介した間接顧客を含む)になります。
また、その他向けが急成長していますが、これはシンガポール向けが多くなっているためです。この多くがサーバーメーカー向けと思われます。また、中国向けは性能が低い製品のみがアメリカ政府の規制上輸出できることになっていますが、中国国内での需要が強く、売上高は増加傾向にあります。
表1 エヌビディアの業績
グラフ1 エヌビディアの四半期業績
表2 エヌビディアの市場別売上高(四半期)
表3 エヌビディア:楽天証券業績予想の詳細(四半期)
グラフ2 エヌビディアの地域別売上高:四半期
2.今4Q会社予想は今3Q比鈍化の見込み。来期は「Blackwell」本格化で大幅増収増益へ
今4Q(2024年11月-2025年1月期)の会社側ガイダンスは、売上高375億ドル±2%、売上総利益率73.0%±0.5%、研究開発費を含む販管費約43億ドル、営業外支出約4億ドルのプラス、税率16.5%±1.0%(いずれもGAAPベース)です。この通りに計算すると、今4Q会社側ガイダンスのレンジ平均値は、売上高375億ドル(前年比69.7%増)、営業利益226億ドル(同66.0%増)となります。
今4Qの会社側ガイダンスでは前年比では大幅増収増益が続くことになります。AI半導体の需要が供給を大幅に上回る状況が続く見込みです。「H200」と「Blackwell」の売上高は今3Qよりも増加する見込みです。
ただし、全社売上高と営業利益は、今3Q比では鈍化する予想です。これは、「H200」と「Blackwell」の売上高は今3Qよりも大幅に増加する見込みですが、まだエヌビディアの中核とは言えません。一方で従来機種の「H100」がスローダウンする見込みであり、場合によっては今3Q比減収になる可能性もあることによります。
また、AIサーバーの顧客の中には、「H100」「H200」よりも高性能な「Blackwell」を待つ動きもあります。今4Qはエヌビディアの主力が「H100」から「H200」「Blackwell」に移行する端境期であると言えます。
そのため、来期2026年1月期は、「H100」「H200」よりも大幅に価格が高い「Blackwell」が主力になると予想されるため、大幅増収増益が予想されます。「H100」の価格は推定2万5,000~4万ドルで日本でディーラーから買うと500~600万円になります。これに対して「Blackwell」GPU1個が3万~4万ドルです。この「Blackwell」GPU2個とエヌビディア製CPU「Grace」1個を組み合わせて1つのパッケージにしたものが上位機種の「GB200」で日本で買うと推定で1,500万円以上すると思われます。また、さらに上位機種で、「Blackwell」72個、「Grace」36個を組み合わせたものが「GB200NVL72」で約300万ドルです。
売上総利益率については、会社側は2026年1月期1Q、2Qは、70%台前半と予想していますが、3Qからは「Blackwell」の増産による生産性改善によって70%台半ばになると見ています。
これらの会社側の見方と今3Qまでの業績を参考にして、楽天証券では2025年1月期を売上高1,287億ドル(前年比2.11倍)、営業利益800億ドル(同2.43倍)と予想します。また、2026年1月期は売上高2,120億ドル(同64.7%増)、営業利益1,310億ドル(同63.8%増)と予想します。
なお、2024年8月に指摘された「Blackwell」の設計上の問題(「Blackwell」シリーズの主力製品の一つ、「GB200」において「Blackwell」GPUを2つ接続するときの回路に問題があったと言われている)はフォトマスクの改良によって解決した模様です。また、最近報道された「GB200NVL72」がサーバーラック内でオーバーヒートを起こす問題についてはサーバーラック内の設計変更によって解決できる模様です。
表4 エヌビディアの市場別売上高(年度)
表5 エヌビディア:楽天証券業績予想の詳細(通期)
3.エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の150ドルから210ドルへ引き上げる
エヌビディアの今後6~12カ月間の目標株価を、前回の150ドルから210ドルへ引き上げます。
楽天証券の2026年1月期予想EPS(1株当たり利益)4.46ドル、楽天証券の2026年1月期予想営業増益率63.8%に対してPEG=0.7~0.8倍として、想定PER(株価収益率)45~50倍を当てはめました。来期も業績好調が予想されますが、アメリカの金利上昇懸念と、エヌビディアの時価総額がアップルを抜いて全米トップと巨大になっており、株価の動きが鈍くなる可能性があることを考慮しました。このため、業績の良さに対して目標株価の評価を保守的に行いました。
引き続き中長期で投資妙味を感じます。
本レポートに掲載した銘柄:エヌビディア(NVDA、NASDAQ)
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