個別株投資、パフォーマンスは千差万別

 11月も下旬に入りいよいよ年の瀬が近づいてまいりました。「令和のブラックマンデー」という波乱の8月もありましたが、日経平均株価およびTOPIX(東証株価指数)はいずれも大発会の水準(1月4日終値、日経平均は3万3,288円29銭、TOPIXは2,378.79pt)を上回っています。

 一方、「日経平均やTOPIXなどインデックスやETF(上場投資信託)投資をやっておらず、新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の個別株のみ!」という投資家は悲喜こもごもな状況かもしれません。

 トヨタ自動車(7203)ホンダ(7267)日産自動車(7201)など自動車株に投資していた場合はさえないでしょうし、グロース市場の銘柄はGENDA(9166)などごく少数の銘柄以外、さえないパフォーマンスが目立ちました。

 また、春先まで日本株の象徴的な存在だった半導体株は保有銘柄によって差が生じたことかと思います。一方、三菱重工業(7011)IHI(7013)など防衛関連銘柄は総じて強い動きだったでしょう。

 このように、日経平均やTOPIXなど指数は上昇していても個別株は独自の動きを見せますので、今年から新NISAを通じて日本株を購入された投資家のパフォーマンスは千差万別だったことかと思います。

新NISA、年内駆け込みで使うべき?

 2024年も残り少なくなりましたが、新NISAの成長投資枠を通じて、年末に投資をご検討されている方向けに、年末ならではのお話をしたいと思います。

 改めてとなりますが、新NISAの仕組みを今一度お話します。2024年1月から開始された新NISAの年間投資上限額は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円で、両者を併用すると年間最大360万円まで非課税投資が可能となります。

 トータルで1,800万円が新NISAの上限金額となりますので、単純計算しますと360万円×5年で上限金額に達することとなりますが、新NISAは恒久化されましたので「20○○年までに枠を使う必要がある」という制度設計ではありません。

 一方、新NISAの年間投資上限額は、翌年以降に繰り越すことはできません。また、年間投資上限額を超える分の投資は、NISA口座ではできませんので、課税口座の特定口座か一般口座で行う必要があります。

 このほか、新NISAでは、保有商品を売却するとその分だけ投資枠が空き、売却した翌年以降に再び投資することも可能です。再利用できる投資枠は売却した商品の時価ではなく、簿価(投資した金額)での計算となります。

 これが新NISAの基本的な仕組みです。押さえておきたいのは、新NISAの制度は恒久化されていますので、年末に余っている投資枠を駆け込みで使用する必要性はない、ということです。ご自身のライフプランに沿った投資を行うことが可能ですので、新NISAの場合、慌てて投資枠を使用するようなことは考えなくてもいいということです。

年末に向けた株価上昇「掉尾の一振(とうびのいっしん)」とは

「であれば、このまま投資枠を来年以降に持ち越してゆっくり検討する」という結論になりそうですが、少々お待ちください。

 年末の12月に有名な相場用語があります。「掉尾の一振(とうびのいっしん)」です。掉尾の一振とは、年末最後の売買日となる「大納会」に向けて株価が上昇する様子を示す相場格言です。日経平均が年末にかけて上昇するケースを指すこともあれば、東証プライム市場の銘柄よりも時価総額が小さい東証グロース市場の中小型株が上昇することを意味するケースもあります。

 掉尾の一振は毎年話題になりますが、結果として掉尾の一振が見られたかどうかは正直、その時の地合い次第です。時価総額の小さい中小型株が活発に動く時とは、総じて個人投資家の投資家心理がポジティブな時です。

 トランプトレードの活発化や米国の利下げ観測、中国の景気刺激策、日本銀行による追加利上げ実施の有無など大きな流れとは異なる「個人投資家の心理状態」が条件となりますので掉尾の一振が見られるかの予想は非常に難しいです。ちなみに昨年はほぼ無風だったと記憶しています。

 掉尾の一振が見られるかどうかは年末の地合い次第ではありますが、いざ中小型株が強い動きを示した際の準備はしておきたいところです。

年内最後の値動きに期待、東証グロース株5選

 今回は掉尾の一振が期待できそうな5銘柄をご紹介します。いずれも東証グロース市場Core指数に採用されている銘柄です。東証グロース市場Core指数は、東証グロース市場に上場する内国普通株のうち、上場時価総額、流動性を考慮して選定する20銘柄により構成される指数です。

 2024年のパフォーマンスは正直微妙な状況です。市場の関心はプライム市場の大型株に向かい、グロース市場の売買はほぼ盛り上がることなく1年を終えようとしています。ですが、掉尾の一振は比較的、ここまで投資資金が向かっていなかった銘柄に向かう傾向がありますので、2024年最後のタイミングでの値動きに期待したいと思います。

銘柄名 証券コード 株価(円)
(11月20日終値)
特色
ティーケーピー 3479 1,235 オフィス回帰の流れで見直し期待
GMOフィナンシャルゲート 4051 7,530 地方のキャッシュレス化はこれから
インテグラル 5842 3,905 「金利のある世界」で出遅れ修正に期待
弁護士ドットコム 6027 2,543 法律と生成AIをミックスさせたサービス始動
ispace 9348 576 2025年1月にミッション2打ち上げ予定

ティーケーピー(3479)

 首都圏を中心とした貸会議室の大手です。都内中心部辺りでは、コロナ禍にリモートワークを推進しオフィス縮小化を進めていた流れが変わり始めています。オフィスに企業が戻り始めたことで、オフィス賃貸率も改善傾向が見られます。オフィス回帰の流れはこれから本格化するでしょう。株価は年初来安値圏で推移していますが逆張りの展開に期待します。

GMOフィナンシャルゲート(4051)

 店舗でのキャッシュレスプラットフォームなどを提供しています。DX化の追い風も吹いていますが、日本のキャッシュレスの割合は世界でもまだまだ低く、2023年のキャッシュレス決済比率は39.3%と9割を超える韓国や8割超の中国などと比べると、日本は開拓余地が豊富な状況と考えます。

 特に地方はまだまだ現金決済が基本ですので、キャッシュレスのインフラ整備のニーズはあるでしょう。株価は年初来安値圏より少し上の水準とさえない推移です。見直しの流れが強まる展開に期待します。

インテグラル(5842)

 10月に東証グロース市場Core指数に採用されたばかりで、主に投資ファンド事業を行っています。「金利のある世界」が一般的となり不動産価格も上昇傾向にあるなど、同社の周辺環境は徐々に良くなりつつあります。

 業績は堅調推移ですが、株価が追い付いていない状況です。日本銀行による利上げ実施によって借入などの金利負担が増していることはネガティブですが、10年国債利回りがようやく1%ほどですので、まだまだ気にする金利状況ではないと考えます。出遅れ是正の動きに期待します。

弁護士ドットコム(6027)

 日本最大級の企業法務ポータルサイト「BUSINESS LAWYERS」の運営や、電子契約クラウドサインなどを展開しています。弁護士ドットコム事業や電子契約クラウドサイン事業はやや頭打ちとなりつつありますが、独自のデータベース「Legal Graph(リーガルグラフ)」に、生成AIを組み込んだコアテクノロジーの「リーガルブレイン」を搭載したサービスがスタートしました。

 今後の業績寄与への期待感を高めたいところです。株価は年初来安値圏で推移していますので、見直しの展開を想定します。

ispace(9348)

 宇宙事業を手掛けており、先行投資の影響で赤字が続いています。民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション2は最速で2025年1月の打ち上げを計画しています。今回のミッション2は、ミッション1で得た成果を踏まえた月着陸船の設計・技術、月面輸送サービスなどの検証を強化する目的を掲げています。

 当初の2024年12月打ち上げの予定が1カ月後ずれ込みましたが、12月になれば自然と期待感が高まると考えます。