米国大統領選挙とFOMCの結果次第で相場は乱高下?
いよいよ米大統領選が始まりました。今週は、4年に一度の米国大統領選挙というビッグ・イベントに加えて、追加利下げの期待が高まるFOMC(米連邦公開市場委員会)があるため、相場は上下に乱高下しそうです。
米大統領選は大接戦でトランプ氏が数ポイント優勢とのことですが、ここ数日で少し変化が見られています。しかし、数ポイントの差では過去の選挙を見ているとふたを開けてみないと分からないというのが実情だと思われます。2016年の大統領選挙では、ヒラリー氏優勢の世論調査でしたが、トランプ氏が勝利しました。
選挙の投票はもう始まっていますが、開票は激戦州であるジョージア州が5日の東部時間午後7時、日本時間で6日の午前9時に開始します。同じく激戦州のノースカロライナ、ペンシルベニアは日本時間午前10時ごろまでに開票開始とのことです。
特にペンシルベニア州は選挙人(*)の数が激戦州で最も多い19人で、「制した候補が勝利に大きく近づく」といわれている州です。しかし、郵便投票や期日前投票が当日まで行われないことから結果判明には数日かかるといわれているため、日本時間の6日中には勝敗の結果が分からないかもしれません。
ちなみに4年前の選挙で同州の選挙結果が判明したのは4日後とのことです。従って、ペンシルベニア州よりも早く判明し、ペンシルベニア州と同じ激戦州で、ブルーウォール(青い壁)と呼ばれる民主党の地盤、ミシガン州(選挙人15人)の勝敗で相場が動くかもしれないため、ミシガン州も注目の州です。
(*)米国大統領選は、大統領を選ぶための投票を行う「選挙人」を州ごとに選ぶ制度です。選挙人は全米50州と首都ワシントンに計538人が割り振られ、過半数の270人を獲得した候補が大統領となります。総得票数で上回っても選挙人の数が下回れば、大統領になれません。
各州の選挙人は人口に応じて割り振られ、相手よりも1票でも多ければ、割り当てられた全ての選挙人を獲得する「勝者総取り」の方式を採用しています。メーン州(選挙人4人)とネブラスカ州(同5人)は別の方式となっています。選挙人が最も多いのはカリフォルニア州の54人。激戦7州は合計で93人。その中でペンシルベニア州は選挙人の数が最も多い19人。
トランプ?ハリス?大統領選後の見通しは?
トランプ氏がペンシルベニア州やミシガン州で勝利すれば(2000年は両州とも敗北)、選挙の勝利に大きく近づくとの期待が高まり、再びトランプ・トレードが活発になることも予想されます。
8年前は予想外のトランプ氏勝利や減税などの政策期待、FRB(米連邦準備制度理事会)のタカ派姿勢が加わり、金利上昇とともにドル/円は11月中に約13円のドル高・円安となりました。しかし、今回は事前にトランプ・トレード(金利上昇、ドル高)は織り込まれた動きをしていることや、8年前の動きも経験しているためトランプ・トレードは長続きしないかもしれません。
ただ、選挙では議会選挙(**)もあるため、上下院も共和党が過半数を取れば、トリプルレッドと呼ばれる強固な政権となることから、トランプ・トレードが一層活発になることも予想されます。しかし、上院が過半数を取れないねじれ議会の場合は、財政政策が思うように発動されないためトランプ・トレードの巻き戻しが起こるかもしれません。
そして議会の承認を得ない関税引き上げや移民制限によるインフレ懸念などが市場かく乱要因として一層注目されることが予想されます。このように議会選挙結果にも注目する必要があります。現状は上院が民主党、下院が共和党のねじれ議会となっています。
(**)大統領選と同時に、下院(定数435)の全議席と上院(定数100)の34議席(補選1議席を含む)が改選されます。上院は条約の批准や高官人事権を持っており、予算の承認には上下両院での可決が必要となります。大統領選の勝者と議会の多数派が異なる「ねじれ」状態になれば、政策の停滞が懸念されます。
2016年の予想外のトランプ氏勝利は、世論調査で隠れトランプ票を読み取れなかったということですが、今回は共和党の議員や支持者の中の隠れハリス票を読み取れていないのではないかという見方があります。
もし、ハリス副大統領が勝利の場合、トランプ・トレードのポジションの巻き戻しで逆の動き、すなわち金利低下、ドル安の動きが予想されます。4日、アイオワ州でハリス氏優勢との世論調査でドル売りとなったことはそのことを物語っているようです。
そして民主党が上下院の過半数を取れば、トリプルブルーとなり、ハリス氏も財政拡張路線を取っているため、トランプ・トレードの巻き戻しの後、再び金利高、ドル高になる可能性もあります。
ただ、トランプ氏の政策ほど大規模でないため金利高、ドル高も限定的な動きになるかもしれません。ねじれ議会になると、現状と変わらないため大きな動きにはならず、焦点は米国の経済、物価、FRBの政策に移ることが予想されます。
いくつかのシナリオを想定しましたが、市場の事前予想通りに動くかどうかは分かりません。何が起こるか分からないのが米大統領選挙だということにも留意しておく必要があります。
また、ハリス副大統領が勝利の場合、トランプ氏は敗北宣言をせず、再集計要請や不正投票を主張し、決着が長引く可能性があるということにも留意する必要があります。2016年の選挙(クリントン氏vsトランプ氏)では勝者判明は翌日でしたが、2020年の選挙(バイデン氏vsトランプ氏)では4日後でした。
しかし、トランプ氏は敗北宣言をしませんでした。最も長くかかったのは2000年の選挙(ゴア氏vsブッシュ氏)の36日後でした。決着が長引けば長引くほど、相場は乱高下の後、方向を見いだせない状況が続く可能性があります。12月17日の州の選挙人が確定し、投票するまではもめるかもしれない点にも留意する必要があります。
選挙の勝者判明が長引けば、6~7日のFOMCの結果に相場は左右されそうです。勝者判明がFOMCの結果発表までの短期決着になっても、相場はFOMCの結果やFRBのパウエル議長の記者会見を控えていることから、相場の上下動は一時的な動きになるかもしれません。
11月のFOMCでは0.25%利下げはほぼ織り込まれており、注目は12月にもう1回利下げがあるかどうかです。12月利下げを示唆しなくても否定しなければ、ドルの上値は重くなりそうです。
1日に発表された10月雇用統計の非農業部門雇用者数は1.2万人の増加と予想(11万人)より大きく低下しました。ハリケーンやストライキが影響しているとのことですが、その影響を考慮した予想の11万人とすれば、米雇用市場は着実に減速していると思われるため、市場の12月利下げ期待はなかなか後退しないのではないでしょうか。
大統領選の開票が始まる日本時間の6日午前からパウエル議長の記者会見が終わる8日の午前5時過ぎまでは、相場は市場の思惑とは別の動きをする可能性もあり、予期せぬ乱高下も予想されるため十分に注意する必要があります。
6日午前中には、トランプ氏の獲得選挙人の数が多いため、5日の円高から1ドル=153円台後半の円安に動いていますが、勝敗はまだ決しておらず、この動きも続くかどうか分かりません。あるいは途中で反転するかもしれないため注意が必要です。
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