今週の株式市場は11月5日(火)の米国大統領選挙を境に大激動の1週間になります。

 共和党候補のトランプ前大統領か、民主党候補のハリス副大統領か、全米各州の勝敗結果が判明するまで市場は乱高下しそうです。

 2020年の大統領選でも主要メディアが当確報道を出すのに4日ほどかかりました。選挙制度の変更などもあり、今回の選挙で勝者が判明するのに数日前後を要する可能性もありそうです。

 ただ2016年に共和党のトランプ大統領、2020年に民主党のバイデン大統領が選出されたときも大勢が決したあとは、過去の株価の高値水準を大きく超える本格的な上昇相場がスタートしました。

 過去7回の大統領選後、機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は年末までに平均約4%上昇したといわれています。

 そう考えるとトランプ氏、ハリス氏どちらが勝利しても、新大統領に対する期待感から米国株はさらに大きく上昇する可能性が高いかもしれません。

 より株高につながりそうなのは、法人税の減税や個人所得税の減税期間延長などを唱え、選挙前にすでに新大統領選出を織り込むような「トランプトレード」が始まったトランプ前大統領が勝利するケースかもしれません。

 その場合はトランプ氏が政策に掲げる規制緩和やエネルギー政策の転換、防衛力強化などから恩恵を受ける金融株や暗号資産関連株、エネルギー株、インフラ関連や防衛株などが買われるでしょう。

 一方、民主党の現・副大統領であるハリス氏が新大統領に就任した場合はバイデン政権から大きな政策変更はないため、当初はトランプトレードの巻き戻しで株価が下落するかもしれませんが、やがて持ち直す展開も考えられます。

 米国巨大IT企業の株が従来通り買われ、ハリス氏が掲げる新規住宅300万戸建設政策で恩恵を受けそうな住宅関連株にも注目が集まりそうです。

 今週7日(木)終了のFOMC(米連邦公開市場委員会)では9月の0.5%利下げに続き、0.25%の利下げが確実視されています。

 先週1日(金)の米国の10月雇用統計で非農業部門新規雇用者数が前月比1.2万人増と予想を大幅に下回り、雇用の鈍化が鮮明になったためです。

 先週の日経平均株価(225種)は前週比139円(0.4%)高の3万8,053円で終了。

 少数与党になった石破茂政権が政策連携する可能性が高まった国民民主党の唱える大規模減税策に対する期待感が株高につながりました。

 国民民主党は所得税や住民税を支払わなくていい年収を従来の103万円から178万円に大幅に引き上げる「年収の壁」撤廃を目玉政策に掲げています。

 もし、この政策が実現されると政府試算で約7.6兆円の減税効果があるため、個人消費活性化につながることを株式市場は好感。

 日経平均株価は選挙結果が判明した週明け28日(月)から30日(水)にかけて前週末比1,363円も上昇しました。国民民主党の玉木雄一郎代表にちなみ、この上昇は「玉木トレード」と名付けられるほどです。

 一方、米国では先週発表された重要な経済指標は雇用関連以外はおおむね堅調でした。しかし米国巨大IT企業やAI(人工知能)関連の半導体企業の決算が決して悪くはないものの、期待を大きく超えるものでなかったこともあって反落。

 連休明け5日(火)の日経平均終値は前週末比421円高の3万8,474円でした。機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は前週末比1.37%安と2週連続で下落。週明け11月4日(月)も翌日に迫った米国大統領選を前にしたリスク回避の換金売りに押されて下落しました。

先週:自民大敗でも国民民主党の減税政策への期待感で株高!米国巨大IT企業のもの足りない決算で米国株は反落!

 先週は衆議院選で石破首相率いる自民党が大敗。新たな連立政権の枠組みをつくらざるを得なくなったことが逆に日本株の好材料になりました。

 石破政権が政策提携を模索する国民民主党は年収の壁引き上げのための所得税・住民税の基礎控除引き上げの他、ガソリン税の一時引き下げ再発動、消費税率5%への一時引き下げなど手取り収入増加を主要政策に掲げています。どの政策も株高につながる個人消費拡大に貢献する点が市場から好感されました。

 先週の日本株は2024年7-9月期の好決算を発表した企業を中心に値上がりしました。

 空調・家電事業の収益力が改善して2024年7-9月期の営業利益が市場予想の2倍以上に上振れした三菱電機(6503)が前週末比18.4%高。

 電力販売量や水力発電量の増加で2025年3月期の通期業績の上方修正と増配を発表した北陸電力(9505)が17.8%の上昇となりました。

 また米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが11月1日(金)に4.3%台まで上昇したことで収益向上が見込まれる銀行株が週間の業種別上昇率上位に入りました。

 日本国内では10月31日(木)に日本銀行の金融政策決定会合が終了。政策金利0.25%の現状維持を決定しました。

 会合後に記者会見した植田和男日銀総裁は経済・物価の動向次第で「金融緩和の度合いを調整する」と発言し、利上げを継続していくことを強調。

 この発言には、11月5日(火)早朝時点で1ドル=152円10銭台まで進んだ円安をけん制する狙いがありそうです。

 米国では巨大IT企業が相次いで決算発表。

 クラウド事業の成長で2024年7-9月期の売上高が予想を上回ったグーグルの親会社アルファベット(GOOG)は週間で前週比末3.39%高。

 アマゾン・ドット・コム(AMZN)はネット通販事業の改善や利益率の向上が鮮明な2024年7-9月期決算を発表して5.38%上昇。

 一方、マイクロソフト(MSFT)は予想を上回る好業績だったものの、AI導入でも思ったほどデータセンターの能力が向上しなかったという幹部の発言が悲観されて4.15%安。

 アップル(AAPL)も中国販売の低迷などで2024年10-12月期の総売上高に関して慎重な見通しを表明したため、株価は週間で3.67%の下落となりました。

 AI関連の人気株エヌビディア(NVDA)のライバルである米国半導体メーカーのアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)も30日(水)に予想を上回る2024年7-9月期の売上高を発表。

 しかし、2024年10-12月期のAIハードウエア向け半導体の売上見通しが予想以下で期待はずれだったことから前週末比9.2%安と失望売りに押されました。

 米国経済指標では29日(火)発表の米国雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想を大幅に下回り3年8カ月ぶりの低水準まで落ち込みました。

 さらに11月1日(金)発表の10月雇用統計では、非農業部門新規雇用者数が米航空大手のボーイング社のストライキやフロリダ州などを襲った大型ハリケーンの影響もあって予想の前月比11.3万人増を大きく下回る1.2万人増に。

 しかし、株式市場は雇用の鈍化で今週7日(木)終了のFOMCで0.25%の利下げが確実視されることを好感。S&P500種指数は前日比0.41%高と反発しました。

 週明け4日(月)の米国市場は翌日5日(火)の米国大統領選を直前に控えて乱高下する展開になりました。S&P500種指数は1日(金)終値に比べて0.28%下落しました。

今週:米国大統領選で株価急落シナリオは?FOMCの0.25%利下げや日本企業の中間期決算にも注目!

 今週は5日(火)の米国大統領選の結果待ちになります。

 各州の開票結果は6日(水)、日本時間の7日(木)未明から午前中にかけて判明しはじめ、午後には多くの州で勝者が決まるでしょう。

 ただ今回も「スイングステイト」と呼ばれる激戦州では民主党のハリス氏、共和党のトランプ氏の支持率がきっ抗(こう)しているため、どちらが勝利したかが分かるまでに時間がかかりそうです。

 大統領選と同時に行われる上院・下院の議会選挙の結果も注目されそうです。

 現在、民主党が過半数を握る上院では、2年間に3分の1ずつ改選が行われますが今回は民主党の改選議席数が多いため、共和党優勢と伝えられています。

 一方、全議席が改選される下院は接戦の状況です。

 共和党のトランプ氏が大統領になると、対中国向け高額関税の実施や不法移民の強制送還で安価な製品や安い労働力が米国内に流れ込まなくなる恐れがあります。そのため、景気後退と物価高が同時進行するスタグフレーションが起こるというネガティブな見通しも一部にあります。

 米国著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社のバークシャー・ハサウェイ(BRK.B)の現金保有高が2024年7-9月期に過去最高を更新したことも判明。バフェット氏は暴落前に株を売り暴落後に株を底値買いすることで知られています。

 今週11月5日(火)からは東京証券取引所の取引終了時間が午後3時から3時30分に延長されます。米国大統領選もあって、取引時間延長が相場の混乱につながるかもしれません。

 引き続き、多くの企業が2024年7-9月期決算を発表しますが、今回から取引時間中に発表を前倒しする企業も増えています。

 6日(水)の取引時間中にはトヨタ自動車(7203)伊藤忠商事(8001)が発表。

 8日(金)にはソニーグループ(6758)などが決算発表します。