「クイズでわかる!資産形成」(毎週土曜日に掲載)の第53回をお届けします。資産形成をきちんと学びたい方に、ぜひお読みいただきたい内容です。

今日のクイズ

 今日は、楽天証券の貸株(かしかぶ)サービス【※注】についてクイズを出します。

【※注】楽天証券の貸株には、「貸株サービス」と「信用貸株」がありますが、今日のレポートでは「貸株サービス」に絞って説明します。

 それでは、クイズです。

 以下、「貸株のメリット・デメリット」についての説明を読んでください。この中で、誤りを含む説明が一つだけあります。誤りを含むのは、【A】【B】【C】【D】【E】のうちのどれでしょう?

【貸株を行う個人投資家にとってのメリット】

  • 【A】保有中の株式を貸株に出すと、貸株金利が得られます。簡単に言うと、保有している株を、楽天証券に貸し出すことで、株のレンタル料がもらえるということです。
  • 【B】貸株中の銘柄も、いつでも売却可能です。普通に売り注文を入れるだけです。「貸株をしていると売りたい時に売れない」と思っている人がいますが、それは完全に誤解です。いつでも、売りたい時にすぐ売れます。
  • 【C】楽天証券の貸株サービスの対象銘柄は、国内取引所上場銘柄全てです。

【貸株を行う個人投資家にとってのデメリット】

  • 【D】貸株をしたままだと、配当金や株主優待が得られません。ただし、「株主優待・予想有配優先」を選択して貸株を行えば、権利確定日(配当金や株主優待の権利が得られる日)だけ、自動的に貸株が皆さまに返却されるので、優待・配当金を得られます。
  • 【E】貸付いただいた株券などは、投資者保護基金による保護の対象とはなりません。

 東証に上場するETF(上場投資信託)も、貸株の対象になります。例えば、日経平均株価に連動することを目指す「日経平均ETF」を買って長期保有するならば、貸株サービスに出して良いと思います。

長期保有銘柄は、貸株に出して、貸株金利を得た方がいい

 貸株サービスとは、お客さまが保有している株を楽天証券に貸し出すことで、期間に応じた金利が受け取れるサービスです。簡単に言うと、株のレンタル料がもらえるということです。

 例えば、貸株金利が年率1.0%の銘柄を200万円貸し出した場合、1年間で2万円の金利が得られます。

 楽天証券は、皆さまから借り受けた株式を、機関投資家などに貸すことで、貸株金利を得ています。その中から、皆さまに、金利をお支払いしています。

 2024年10月30日現在、楽天証券が貸株サービスの対象としている銘柄は、全部で4,378銘柄あります。うち、貸出金利が年率1%を超えている銘柄が619銘柄あります。貸株サービスの貸出金利の下限は年率0.1%です(信用貸株では0.05%)。貸出金利は、毎週見直しています。

【貸株サービスについての説明】

  1. 貸株サービスとは、個人投資家が相応分の貸株金利を受け取れるサービスです。
  2. 簡単に言うと、楽天証券は、個人投資家から借り受けた株式を、機関投資家などに貸すことで、貸し出した株式に応じた金利を受け取り、そこから個人投資家に貸株金利を支払います。

正解

 誤りを含んだ説明は、【C】です。【A】【B】【D】【E】は全て正しい説明です。

 貸株サービスの対象は、国内証券取引所の上場銘柄です。2024年10月30日現在、楽天証券が貸株サービスの対象としている銘柄は、全部で4,378銘柄あります。

 ほとんど、全ての銘柄が対象となります。ただし、全てではありません。対象とならない銘柄は、10月30日時点で122銘柄あります。

 以下が、非対象銘柄です。

  • ほふり非取り扱い銘柄
  • 東証外国株市場銘柄
  • 楽天株式及びグループ会社の株式
  • 東証プロ向け市場上場銘柄
  • 上場新株予約権証券
  • 日経300上場投資信託(ほふり非取り扱い銘柄)
  • ETN/ETFS
  • 単元未満株式
  • 整理銘柄
  • その他、楽天証券が定める銘柄

 それでは以下、【B】【D】について補足説明します。

【B】貸株中の銘柄も、いつでも売却可能です。普通に売り注文を入れるだけです。

「貸株をやりたくない」と言う人の中には、「売りたい時に売れなくなる」と言う人がいますが、完全な誤解です。楽天証券の貸株サービスならば、貸株中でも、普通に売却注文を入れて売却することができます。

 ただし、これは、あくまでも楽天証券の貸株サービスの説明です。他の証券会社では、貸株をいったん取り戻してからでないと売れない場合もあります。

【D】貸株をしたままだと、配当金や株主優待が得られません。ただし、「株主優待・予想有配優先」を選択して貸株を行えば、優待・配当金を得られます。

【D】については、以下、詳しく説明します。

「株主優待・予想有配優先」を選択して貸株すれば、配当金も株主優待も得られる

 お持ちの株を、楽天証券の貸株サービスを利用して貸し出す場合、

  1. 金利優先
  2. 株主優待優先
  3. 株主優待・予想有配優先

 の3通りから、どれか一つを選んでいただくことになります。

 配当金(配当所得)も、株主優待も両方とも欲しいならば、【3】「株主優待・予想有配優先」を選択して、貸株するのが良いと思います。

【1】「金利優先」を選ぶ場合
 配当金や株主優待の権利が確定する日も、貸株の自動返却を行わず、そのまま貸株を継続し、なるべく多くの貸株金利が受け取れるようにします。権利確定日は、貸株金利が通常の5倍になります。ただし、株主優待があっても、権利は得られません。配当金は、配当金相当額(雑所得または事業所得)として、お客さまの預り金に入金されます。

【2】「株主優待優先」を選ぶ場合
 株主優待の権利確定日に、自動的にお客さまの株式が返却され、その権利を受け取ることができます。同じ日に、配当金を得る権利が確定する場合はそちらの権利も確定します。

 ただし、株主優待情報がない場合は、配当金の権利が確定する場合でも、株式の自動返却は行われません。その場合は、配当金(配当所得)は受け取れません。代わりに配当金相当額を受け取ることになります。

【3】「株主優待・予想有配優先」を選ぶ場合
 貸株をしながら、株主優待も配当金(配当所得)も両方とも欲しい方は、こちらを選んでください。株主優待または配当金の権利が確定する日には、自動的にお客さまの口座に株式が返却されます。

 ただし、予想有配優先としていても、優待のない復配銘柄で株式が返却されないケースがあります。詳しくは、以下を参照してください。

 株主優待・予想有配優先の詳しい内容と注意点はこちら

 クイズには出さなかったのですが、気をつけるべきデメリットとして、もう一つあります。

気をつけるべきデメリット:「継続保有特典」のある株主優待で「継続保有」の地位が失われるリスクに注意

 2024年10月30日時点で、株主優待を実施している銘柄は、全部で1,456銘柄あります。うち、595銘柄は、「継続保有特典」をつけています。イオン(8267)KDDI(9433)ビックカメラ(3048)などが継続保有特典をつけています。

「継続保有特典」とは、株主になってからの年数が長いほど、優待内容が増加する特典です。例えば、100株保有している株主に1,000円分の食事券を贈呈する企業で、2年以上継続保有の場合には2,000円、3年以上継続保有の場合には3,000円分の食事券を贈呈する場合があります。これが、継続保有特典です。

 貸株をしたまま、株主優待の権利確定日を過ぎると、優待が得られません。優待が得られないだけでなく、継続保有の地位も失われます。権利確定日の株主名簿に名前が載っていないので、「一度、株主でなくなった」と見なされるからです。貸株をやめて、次の権利確定日で株主優待を得ても、株主になって1年未満の株主と見なされてしまいます。

「株主優待優先」または「株主優待・予想有配優先」で貸株をしていれば、優待の権利が得られる日には、貸株が返却されていますので、その時点で、継続して株主であると見なされます。従って、「継続保有」の地位は失われません。ただし、それでも、貸株をしていると、「継続保有」の地位が失われることがあります。

 まれに、上場企業が、優待も配当も得られない任意の日に、株主名簿の確定をすることがあります。「株主優待・予想有配優先」で貸株をしていても、運悪く、任意の株主名簿確定が行われてしまうと、そこで、継続保有の地位が失われます。

「継続保有特典」のついた銘柄で、「継続保有」の地位を大切にしたい場合は、その銘柄は、貸株に出さない方が良いと言えます。

 なお、継続保有特典のある銘柄は、楽天証券の「株主優待検索」にアクセスすれば、調べることができます。「株主優待検索」の左側にある「検索条件を指定」の欄の下の方に「優待内容」という項目があります。「優待内容」の一番下にある「継続保有特典」のボックスにチェックを入れていただくと、特典をつけている全銘柄が表示されます。