投資初心者にとって「税金」の扱いはハードルが高い

 令和6年スタートの新NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)により、新たに株式投資を始めたという個人投資家の方も多いことでしょう。

 投資初心者にとって、株式投資を実践するに際しては日々学びの連続で、分からないことばかりだと思います。

 そんな中、圧倒的に投資初心者が分からないことといえば、株式投資の税金です。自分でしっかり学ばなければ誰も教えてくれませんから、税金の扱いはかなりハードルが高いといえます。

 実際筆者のもとにも、株式投資を始めて間もない方から「配当金を受け取ったのですが税金はどうなっているのですか?」「株を売って利益が出たのですが、何もしないと税務署から連絡が来るのでしょうか?」といった質問・相談がよくきます。

 多くの方にとって、税務署というのは遠い存在です。そしてニュースやドラマなどを通じて「税金を正しく納めないと税務署が乗り込んできてこってり絞られる」と怖いイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

 でも、税金に対する正しい知識を持ち、正しい行動をしていれば税務署を怖がる必要は全くありません。

配当金は受け取り時に税金を納付済み

 まず、上場株式等の配当金については受け取ったときに、あらかじめ20.315%の税金が源泉徴収(天引き)されています。

 これにより税金の納税そのものが完了していますので、配当金をいくら受け取ったからといって、それにつき税務署からおとがめを受けるということは全くありません。

 また、NISA口座で受け取る配当金については、配当金の受け取り方法を株式数比例配分方式にしておけば非課税で受け取ることができます。これについてもそもそも非課税の扱いですから問題ありません。

売却益は口座により異なる

 株式などの売却により生じた利益(売却益)に対しては、どの口座で生じたものかにより扱いが異なります。

 NISA口座で生じたものであれば、そもそも非課税ですから、特に何もする必要はありません。

 また、源泉徴収ありの特定口座で生じたものについては、売却益に対して20.315%の税金が源泉徴収(天引き)されるので、こちらも後日追加で納税したり、確定申告する必要はありません。

 一方、一般口座および源泉徴収なしの特定口座で生じたものは、1~12月の1年間の発生額を集計した上で、翌年3月15日までに確定申告および納税をする必要があります。

 源泉徴収なしの特定口座の場合は、証券会社の方で1年間の利益を計算した上で、特定口座年間取引報告書というものを発行してくれるので、それを用いればよいです。

 一般口座の場合は、1年間の利益を自分自身で計算する必要があるので、特に売買の回数が多いような方だと非常に大変です。

 ですから一般口座ではなく特定口座を用いるのがよいでしょう。筆者は源泉徴収ありの特定口座を用いています。

確定申告しなくてもよいが申告した方がよい場合もある

 上記をまとめると

  • 配当金

 受け取り時に源泉徴収(天引き)されているので確定申告・納税は不要

  • 売却益

 NISA口座は非課税なので不要。源泉徴収ありの特定口座は利益に対し源泉徴収されているので確定申告・納税は不要

 一般口座、源泉徴収なしの特定口座は自身で確定申告・納税が必要
 

 となりますが、確定申告が不要であっても申告した方が有利な場合もあります。

 例えば配当金以外の所得が少ない人であれば確定申告すれば源泉徴収された税額の還付を受けることができますし、配当金と売却損を相殺する場合も確定申告が必要です。

(源泉徴収ありの特定口座+株式数比例配分方式を選択している場合は証券会社が自動でやってくれます)

 また、前年以前から繰り越してきた売却損と、当年の配当金や売却益と相殺することで税額の還付を受けることができますが、これも確定申告が必要になります。

 さらに、年間を通じて売却損が発生した場合も、確定申告は不要ですが、申告することにより最長3年間損失を繰り越し、将来の利益と相殺して税額を軽減することができます。

 税金の世界は知らないと損することも多々あります。最低限の知識はしっかりと身に付けておくことをおすすめします。