今週の日本株は週末27日(日)に迫った衆議院選挙で自民党の苦戦が伝えられる中、上値の重い展開が続きそうです。

 ただ、為替市場では先週17日(木)以降、何度も1ドル=150円突破を試す円安が続いています。

 また、米国経済のソフトランディング(景気軟着陸)を追い風に米国株は絶好調。機関投資家が運用指針にするS&P500種指数は先週、前週末比0.85%高と6週連続で上昇。18日(金)には景気敏感株の多いダウ工業株30種平均とともに再び史上最高値を更新しています。

 政治の混乱を嫌う外国人投資家は27日(日)の衆議院選終了まで様子見という見方もあります。ただ米国株の絶好調を受けて日本株にも外国人投資家の買い仕掛けが起こり、日経平均株価(225種)が衆院選の結果を待たずに、するすると4万円台を突破する可能性もないとはいえないでしょう。

 米国では2024年7-9月期の決算発表が本格化。

 日本時間23日(水)早朝に半導体株の一角テキサス・インスツルメンツ(TXN)、24日(木)早朝に電気自動車のテスラ(TSLA)などが決算発表。好決算ならすでに絶好調な米国株続騰の下支え役になりそうです。

 米国株の調子がこれほどいい背景には、来たる11月5日(火)の次期大統領選挙で共和党候補のトランプ前大統領が勝つのではないかという観測が高まっていることもあります。

 トランプ氏は法人税の減税などビジネスにフレンドリーな経済政策を掲げており、最近の米国株高はトランプ氏の次期大統領就任を織り込みにいく動きともいわれています。

 先週の日経平均株価(225種)は連休明けの15日(火)に一時4万円の大台に達したものの、その後は上値の重い展開となり前週末比624円(1.6%)安の3万8,981円で終了。

 15日(火)にオランダ半導体製造装置大手のASMLホールディング(ASML)が発表した2024年7-9月期の受注高が市場予想の半分程度にとどまったことを受け、半導体株が急落したことが響きました。

 半導体製造装置の主力株・東京エレクトロン(8035)は前週末比8.3%安、ASMLに半導体検査装置を販売している人気株レーザーテック(6920)も11.1%安と全体相場の足を引っぱりました。

 世界の半導体産業は活況が続くAI(人工知能)向けと、中国向け半導体輸出規制の影響で落ち込みが続く汎用チップとの間で景況感に差が出ています。今後もAI向けに強いかどうかで半導体株の二極化が続きそうです。

 週明け21日(月)の日経平均終値は前週末比27円安の3万8,954円でした。

先週:オランダASMLの悪決算で半導体株が乱高下!1ドル=150円の円安でも日本株が下がる理由

 先週の日本株は1ドル=150円台まで円安が進んだにもかかわらず、週間の業種別騰落率で半導体株など電気機器や精密機器といった外需株が下位のマイナス圏に沈む、珍しい相場展開でした。

 その背景にはやはり27日(日)の衆議院選挙で石破茂新首相率いる自民党が単独過半数割れの敗北を喫するのではないかという観測がありそうです。

 10月第2週(7~11日)の投資部門別売買動向によると、外国人投資家は現物株と先物取引を合わせて4,081億円の買い越しと8週間ぶりに日本株の買い越しに転じています。

 ただ、円安でも株が上がらない弱い日本株の状況を見る限り、政治の混乱を嫌う外国人投資家の日本株買い控えの気配も感じます。

 15日(火)のオランダ半導体製造装置メーカーASMLの悪決算で急落した半導体株に関しては、その後、持ち直しの動きも出ました。17日(木)に世界一の半導体受託製造会社である台湾積体電路製造(TSMC)がAI(人工知能)向け設備投資の活況で2024年の売上高見通しを引き上げたことが主な理由です。

 主力半導体株が軒並み安となる中、AI向け高速半導体メーカーのエヌビディア(NVDA)に半導体検査装置を納入するアドバンテスト(6857)は前週末比2.2%高と健闘。

 17日(木)に好決算を発表した半導体切断装置のディスコ(6146)が前週末比2.0%高まで反転上昇するなど、AI需要で恩恵を受ける半導体株の一角はプラス転換しました。

 主力株の米国エヌビディア(NVDA)も2.37%高と4週連続で上昇。17日(木)には4カ月ぶりに史上最高値を更新しています。

 映画ネット配信のネットフリックス(NFLX)も17日(木)に予想以上に好調な2024年7-9月期決算と有料会員数の増加を発表して週間で5.69%高となるなど、ハイテク株の盛り返しに貢献しました。

 来週30日(水)にはマイクロソフト(MSFT)、31日(木)発表のアップル(AAPL)アマゾン・ドット・コム(AMZN)などが決算発表。米国巨大IT企業が引き続きAI向けデータセンターなどに巨額投資を行っていることが判明すれば、半導体株全体が再び勢いづく可能性もありそうです。

 乱高下した半導体株とは違い、株価上昇が目立ったのが内需株です。

 11日(金)にインバウンド(訪日外国人)需要拡大を追い風に今期2025年8月期の増収増益と前期比3円の増配を発表した家電量販店のビックカメラ(3048)が前週末比13.9%も上昇しました。

 米国の長期金利の指標となる10年国債の利回りが4%台で高止まりするなど、金利上昇を受けて三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が5.9%高となるなど銀行株にも買いが集まりました。

 16日(水)の講演で日本銀行の安達誠司審議官が「金融政策が正常化プロセスに入る条件はすでに満たしている」と述べたことも、金利正常化が収益増になる銀行・保険株の上昇を支えたようです。

 米国では17日(木)発表の9月小売売上高が前月比0.4%増と予想を上回り、同日発表の週間の新規失業保険申請件数も予想より少なかったことで堅調な経済状況が浮き彫りになりました。

 14日(月)には米国の中央銀行に当たるFRB(連邦準備制度理事会)のウォラー理事が慎重なペースで利下げすべきと述べるなど、FRB高官からも9月の0.5%利下げに続く追加利下げは緩やかに行うべきという発言が相次いでいます。

 それは日米金利差がそれほど急激に縮小しないことを意味するため、円安トレンドの継続につながるので日本株には朗報です。

 27日(日)の衆議院選挙という不安要因をクリアすれば、非常に堅調な米国経済を好感して外需株中心に日本株が再び勢いよく上昇する可能性もありそうです。

今週:東京メトロ上場で相場の雰囲気改善!?トランプ次期大統領選出で本当に株高が起こる?

 今週は米国ではあまり大きな経済指標の発表がありません。

 ただ、2024年7-9月の米国企業の決算発表が続き、その内容に一喜一憂する展開になりそうです。

 22日(火)には自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)、23日(水)にボーイング(BA)IBM(IBM)などの決算も予定されています。

 日本国内でも23日(水)にEV向けモーターなどを生産するニデック(6594)、25日(金)には半導体向けシリコンウエハー世界一の信越化学工業(4063)、中国向け産業ロボットが主力のファナック(6954)、乳がん治療の新薬剤が米国で承認され株価も絶好調な中外製薬(4519)などが決算を発表します。

 また23日(水)には東京メトロ(9023)が新規上場します。3月・9月末に200株保有で片道全線きっぷ3枚ずつが贈られる株主優待制度をすでに発表しているだけに、優待株投資家からも注目されそうです。

 衆議院選挙の情勢調査の報道も株式相場に影響を与えそうです。一部には自民党が議席を大幅に減らし、15年ぶりに単独過半数を割り込む可能性も指摘されています。自民党の苦戦がさらにひどくなると、株価にとってはネガティブでしょう。

 一方、米国では経済対策への期待感から中西部の激戦州で共和党候補のトランプ前大統領の支持率が伸びていることを背景に、すでにトランプ次期大統領誕生を織り込むような「トランプトレード」が復活。

 トランプ氏の規制緩和で潤う地方銀行など金融株や暗号資産関連株、エネルギー・商品関連株などトランプ関連銘柄がすでに勢いづいているという指摘もあります。

 ただし、トランプ氏は中国への高額関税措置の導入や安価な労働力ともいえる移民の入国制限を公約に掲げています。

 これらは米国の物価高を再燃させる可能性が高いため、米国では長期金利が4%台まで上昇。

 またトランプ氏が米国民を分断させるような過激な発言を繰り返していることも政治的・社会的混乱につながりそうです。

 選挙前にあまりにトランプトレードが盛り上がると、いざ選挙でトランプ新大統領誕生となったときに揺り戻しが起こる可能性もあるでしょう。絶好調だった米国株が一時的に急落する恐れもあるので注意が必要です。

 むろん、2008年秋のリーマンショックの株価暴落時にオバマ新大統領が選出されて以降は米国大統領選後に米国株、そして日本株は大きく上昇しています。今回もその再来に期待したいところです。