日経平均は石破ショックから持ち直し

 先週(営業日9月30月~10月4日)の日経平均株価は1週間で1,193円下落して3万8,635円となりました。

 先週の月曜日(9月30日)は、「*石破ショック」で日経平均が1,910円安となるところから始まりました。 石破茂氏が9月27日の自民党総裁選で逆転勝利したことをネガティブにとらえる売りが集中しました。

 ところが、10月1日に首相に就任した石破氏が、次々とマーケット・フレンドリー(株式市場に友好的)な発言を繰り返したことから、週後半の日経平均は戻り歩調となりました。米景気好調を示す指標の発表が続き、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が最高値を更新したことも追い風となりました。 

NYダウ・日経平均の日次推移比較:2024年7月1日~10月4日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

*石破ショック
金融市場が石破氏の自民党総裁就任に「円高株安」で反応した理由が二つあります。

【1】円高急伸  
自民党総裁選で、日本銀行の利上げを批判している高市早苗氏が敗北、利上げを許容すると考えられていた石破氏が逆転勝利したことを受けて、円高が急伸しました。円高を嫌気して、日経平均が急落しました。

【2】石破氏の**金融所得課税強化発言
石破氏が9月2日のBS日テレ番組で金融所得課税強化を「実行したい」と発言していたことが、不安材料となっていました。石破氏の総裁選勝利を受けて、金融所得課税強化の不安が高まり、日経平均が急落しました。

**金融所得課税強化発言
株式の売買益や配当金などにかかる金融所得課税は、現在一律20.315%(復興特別所得税を含む)となっています。累進課税となっていないため、高所得者の恩恵が大きくなります。岸田文雄元首相は、2021年の自民党総裁選で格差是正の一環として金融所得課税の見直しを公約に盛り込み、税率引き上げを目指していました。ところが、総裁選で勝った後に株価が下落したことに加え、多方面から反対が多かったことから、金融所得課税の強化は見送りました。石破氏は2日のテレビ出演で、この経緯に触れた上で、金融所得課税強化を「実行したい」と発言しました。

石破首相はマーケット・フレンドリーに

 石破氏は、首相に就任するとともに、株式市場を急落させた自らの発言を修正しました。

【1】資産運用立国の方針継承

 10月1日、首相就任後に資産運用立国を目指した岸田政権の政策を引き継ぐと話し、金融所得課税強化に対する不安を低下させました。

【2】「追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」と発言

 10月2日、首相官邸で植田和男日本銀行総裁と面会し、その後の記者会見で、利上げを抑制する姿勢を表明しました。「利上げを容認する」との思惑で、円高が進んだことを意識しての発言と考えられます。これを受けて、円安・株高が進みました。

 さらに先週、9月の米雇用統計が想定よりも強かったことが分かると、ドル/円は10月4日には1ドル148円台の後半まで円安が進みました。

ドル/円為替レートの5分ごとの動き:9月24日午前7時~9月28日午前5時5分

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成、日本時間午前0時~5時は欧米市場での値動きを示している。日本の午前0時~5時は欧米では前日なので、上のチャートでは前日に含めている

日本株の投資判断

 日本株は良い買い場との判断を継続します。石破政権が、これまでの自民党政権の政策を継承しながら政権運営を目指す方針と分かり、株式市場の不安はひとまず収まりました。 

 また、米国のインフレが低下する中で、米景気は堅調を保っており、米景気ソフトランディングの可能性が高まりました。それを受けて、日本の景気も株価も緩やかな上昇基調が続くと考えられます。

 ただ、日本株はこれからも急落・急騰を繰り返すと思われることから、リスク管理は大切です。割安な日本株を、時間分散しながら買い増ししていくことが、長期の資産形成に寄与すると考えています。

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