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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「石破ショック?日本株は「買い場」と考える理由、歴代内閣と日経平均の動き」
先週の日経平均は円安・NYダウ最高値を好感して大幅上昇
先週(営業日9月24~27日)の日経平均株価は1週間で2,105円上昇して3万9,829円となりました。大幅上昇の理由は二つあります。
【1】米景気堅調、米国株が最高値を更新
FRB(米連邦準備制度理事会)が、9月18日に0.5%の大幅利下げを実施したものの、米景気は堅調で、大幅利下げはあくまでも予防的処理との見方が広がりました。つまり、米景気ソフトランディングの期待が強まったということです。
これを受けて、円安が進み、米国株(ダウ工業株30種平均・S&P500種指数)が最高値を更新しました。日本株にも、外国人投資家とみられる買いが増えました。
NYダウ・日経平均の日次推移比較:2022年末~2024年9月27日
【2】9月27日14時ごろ、自民党総裁選の全国投票で高市早苗氏が1位と伝わったこと
全国投票で1位の高市氏が決選投票でも勝つと見込んで、東京市場で「円安株高」が一段と進みました。一時1ドル=146円台まで円安が進み、日経平均は大幅高となりました。高市氏は、「日本銀行の利上げに否定的」「景気刺激策に積極的」で知られていることから、高市氏が総裁選に勝つ期待を織り込んで、円安株高が進みました。
ドル/円為替レートの5分ごとの動き:9月24日午前7時~9月28日午前5時5分
ところが、27日の15時20分ごろ、決選投票で石破茂氏が逆転勝利したと伝わりました。すると、上のグラフで見られる通り、急激な円高が進みました。
日経平均は15時が大引けで、この日は前日比903円高の3万9,829円で引けました。石破氏による逆転勝利による円高急伸を織り込まないまま大幅高で引けました。
石破氏の逆転勝利を受けてCME日経平均は暴落
27日の日経平均は3万9,829円で引けました。ところが、大引け後に「石破氏の逆転勝利」が決まり、急激な円高が進みました。これを受けて、CME(シカゴ先物取引所)の日経平均先物(期近・円建て)は急落し、3万7,520円で引けました。
東京証券取引所の日経平均終値よりも2,309円低い水準です。これを受けて、週明け9月30日の日経平均は急落が予想されます。
石破氏が自民党総裁に就任し、10月1日に次期首相に就任することに対し、金融市場が「円高株安」で反応した理由は、二つあります。
【1】石破氏はインフレを問題視、日銀による利上げを許容すると考えられていることから円高急伸
高市氏は日本銀行の利上げを批判していることから、高市氏が総裁選に勝利すると見られていた間は、為替市場で円安が進みました。ところが、利上げを許容すると考えられている石破氏の逆転勝利を受けて、円高が急伸しました。円高を嫌気して、日経平均先物が急落しました。
【2】石破氏は9月2日のBS日テレ番組で金融所得課税強化を「実行したい」と発言
石破氏が金融所得課税【注】を強化したいと発言したことが、株式市場にとってネガティブ・サプライズでした。石破氏の総裁選勝利を受けて、金融所得課税強化の議論が復活する可能性が危惧されて、日経平均先物が急落しました。
【注】金融所得課税の強化
株式の売買益や配当金などにかかる金融所得課税は、現在一律20.315%(復興特別所得税を含む)となっています。累進課税となっていないため、高所得者の恩恵が大きくなります。岸田文雄首相は、2021年の自民党総裁選で、格差是正の一環として、金融所得課税の見直しを公約に盛り込み、税率引き上げを目指していました。ところが、総裁選で勝った後に株価が下落したことに加え、多方面から反対が多かったことから、金融所得課税の強化は見送りました。石破氏は2日のテレビ出演で、この経緯に触れた上で、金融所得課税強化を「実行したい」と発言しました。
石破新総裁を嫌気して急落する局面は「買い場」と判断
石破新総裁の政策の全貌はまだ見えていません。あくまでも、私の個人的意見ですが、石破氏は、株式市場にショックを与えるような政策を性急に打ち出すことはないと予想しています。その意味で、CME日経平均先物が2,400円近く下がっていることは、過剰反応だと思っています。
今週の日経平均が実際に大きく下がるようならば、そこは長期投資で日本株の買い場となると考えています。
【1】金融所得課税強化を性急に進めることはないと予想
「金融所得課税強化」については、党内の有力者から一斉に猛烈な反対が出たことを受けて、発言を修正しています。石破氏は「金融所得全てに課税強化するという考え方には反対だ」と強調し、課税強化は一部の富裕層に限定すべきとしています。
【2】日銀の独立性と金融正常化を支持しつつも性急な利上げは求めないと予想
石破氏が日銀の利上げを許容するとみられていることから、急激な円高が進みましたが、やや過剰反応と思われます。石破氏は、日銀の独立性と金融正常化を支持しており、その考えは変わらないと思います。一方で、石破氏はデフレ脱却の必要性にも言及しており、デフレ脱却前の性急な利上げには賛成しないものと思われます。
石破氏の政策の全貌は分かりませんが、自民党内の意見を幅広く取り入れて調整していくと考えられます。総裁選の決選投票で、議員票によって逆転勝利したのは、石破氏の方が調整能力に長けていると、党内の有力者が考えたからだと、私は思います。
実際、自民党四役や組閣人事に、総裁選を戦った人材を幅広く取り込んでいく姿勢を表明していることに、その調整能力が現れていると思います。
あくまでも私見ですが、石破氏は、自らの信念は変えないものの、力づくで自分の考えを押し通すことはせず、バランスの取れた政策運営をしていくことで、自民党主流派の力を取り込んでいくものと思われます。
石破新総裁は、総理大臣に就任した後、10月9日にも衆議院を解散して総選挙を実施する考えを示しています。当面は、解散総選挙に勝利するための党内結束を重視するためにも、株式市場にネガティブ・サプライズとなる発言は控え、安全運転に徹すると考えられます。
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