意外だった米国の0.5%利下げ

 先日、米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)にて0.5%の利下げが発表されました。利下げは実に4年半ぶりのことです。

 個人的には、0.25%の利下げが妥当であると思っていて、もし0.5%の利下げということになると逆に足元の景気がかなり悪いのではないかとの疑念を抱かせる恐れがあるため、心配していました。

 過去には0.5%の利下げというのは、かなり緊急性の高いときでないと行われていないことから、今のように米経済が堅調な時に0.5%の利下げは不要どころか、誤ったメッセージを市場に与えてしまう可能性があったわけです。

 しかしふたを開けてみると賛成多数、反対1人だけで0.5%の利上げとなり、発表後の米国株の株価は堅調な動きとなっています。

 総じてマーケットは、0.5%の大幅利下げを好意的に捉えているようです。

 今のところは筆者の心配は取り越し苦労だったようですが、正直もうしばらく様子を見たいところではあります。

 というのも、過去の株価の大きな下落は、利下げが始まってから起きているからです。

過去の利下げ後の米国株の動きは?

 2000年のITバブル崩壊も、2008年のリーマン・ショックも利下げ局面に入ってから生じています。

 しかしその一方、利下げによりその後の株価が力強く上昇することも多くあります。

 過去の利下げ後の米国株の動きは、株価が大きく下がることもあったが、大きく上昇することもあったというのが事実です。

相場サイクルへの影響はどうなるのか?

 皆さんは相場サイクルというものをご存じでしょうか。株価と景気の関係やその変化を、一つのサイクルとして説明したものです。

1.金融相場
 景気はまだ悪いが金融緩和の効果が生じて株価は底打ちから上昇を始める。いわゆる「不景気の株高」

2.業績相場
 景気がよく、インフレ気味になるため金利が引き上げられるがしばらくは好景気が続き、株価も上昇。

3.逆金融相場
 金利の引き上げが限度を超えると景気に悪影響を及ぼし、株価も天井を付けて下落に転じる。

4.逆業績相場
 本格的に景気が悪化。金融緩和を始めるが効果が出るまで時間がかかるので景気悪化がしばらく続き株価も下落。

 最近はこのサイクルがあまりきれいに出ないことが多くなっていますが、少なくとも金利引き上げの最終局面は(3)逆金融相場です。

 もし景気があまり悪くなっていない状況で、インフレの鎮静化が達成できたとして利下げをすると、(4)逆業績相場をすっ飛ばし、(1)の金融相場に移行することになります。  

 これがいわゆる「ソフトランディング」といわれるものです。

結論:将来を決めつけずマーケットの動きに従うのが吉

 では今回の利下げはソフトランディングにつながるのでしょうか? それは正直分かりません。

 確かに足元の米経済は堅調で、失業率が増加傾向にあるものの景気悪化を明確に示すものは今のところはあまりありません。

 ただ、利下げが経済に実際にプラスの効果を及ぼすにはある程度の時間がかかります。利下げ効果が浸透する前に米景気が急速に悪化するようなことになれば、株価の大幅調整は避けられないでしょう。

 その意味では、今後の米国株がどうなるのかは分からないものの、もしソフトランディングとなれば株価は堅調な動きが続くでしょうし、ハードランディングが懸念されれば株価は下落に転じるでしょう。もちろん日本株も米国株の動きに大きな影響を受けるのは言うまでもありません。

 私たち個人投資家としては、将来どうなるかを決めつけるのではなく、株価の動きからマーケットがソフトランディングを見込んでいるのか、それともハードランディングを懸念しているのかを見極めるのが現実的な対応になると思います。

 株価が上昇トレンドならばある程度買いポジションを構築して保有継続、下降トレンドに転じたら買いポジションを縮小して守りを強める、といったようなシンプルな考え方で十分でしょう。

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