投票意向調査
大統領選挙の本投票日まであと1カ月と2週間となりました。現在のところ民主党の大統領候補、カマラ・ハリスが共和党の大統領候補、ドナルド・トランプをリードしています。
そこでそろそろカマラ・ハリスが勝った場合、それが米国の連邦政府の財政に与える影響について考えてみる必要があると思います。
その前に米国政府の台所事情の確認ですが、いまアメリカの財政赤字はGDP(国内総生産)の6.3%で、普段より多いと言えます。ちなみに第2次世界大戦後の平均は2.6%でした。
なぜ財政赤字が多いか? と言えばそれは民主党が選挙戦を有利に進めるために積極的な財政散布を行っているからです。
これは(ずるい!)と言えますが、ドナルド・トランプが大統領だった2020年の選挙の年は米国の財政赤字はGDPの14.7%にも達していました。
だから民主党も共和党も選挙の年は同じような策を弄して選挙に勝とうとするわけです。
2020年に財政赤字幅が大きかったもうひとつの理由は新型コロナの影響です。
その後、2021年は12.1%、2022年は5.4%と順調にノーマルな状態へ戻してゆく途上にありましたが、今年は選挙の年なので民主党が財政出動した結果、また赤字が増えてしまったというわけです。
さて、カマラ・ハリスが当選した場合、ジョー・バイデンの経済政策を引き続き実施すると予想されます。言い直せば新機軸を打ち出すのは最小限にとどめるわけです。
ハリスは法人税を現在の21%から28%に引き上げることを提唱しています。しかしそれには議会の承認が必要であり上院は共和党優勢なので法案が可決される可能性は極めて低いです。
なおトランプ大統領の時代(2017年)に成立した減税就労機会増加法(Tax Cut and Jobs Act)は5年間の時限法案です。カマラ・ハリスは一部の低所得者層を利する項目を除き、この法案を延長しないと見られています。
これとは別にカマラ・ハリスは子供のいる家庭に対する3,600ドルのタックス・クレジット、出産時の6,000ドルの一時金を提案しています。
こうした一連の措置でハリスの政策は向こう10年間で米国の財政を1.7兆ドル圧迫し、それは財政赤字がGDPの5〜6%が常態化することを示唆しています。(ちなみにトランプの財政予算面での公約がかりに実行された場合はその2倍近い赤字になると言われています。)
ハリスが彼女の考える経済政策を議会で可決させようと思った場合、たぶん上院は11月の選挙でも共和党が優勢となると思われることからいわゆるリコンシリエーションと呼ばれる立法手続きを利用することが予想されます。その場合、「長期赤字幅を増加させるような法案は上程できない」という了解があります。言い直せば大きなことは出来ないのです。
なお上で述べた下院が民主党、上院が共和党というシナリオは「ねじれ」常態という風に形容されますが、投資家はこの「ねじれ」を好む傾向があります。その理由は(なにも決まらないほうが財政的には大きな変化は出ないので見通しが立てやすい)からです。
大統領選挙の2年後、すなわち2026年は(そろそろ引き締めたほうがいいぞ)という心理が働きやすく財政出動は控えられ、赤字幅が縮まるのが常です。政府がお金をばらまかなくなるので何となく不景気感が漂うことが予想されます。
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