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著者の窪田 真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]米景気への不安低下、NYダウ最高値。日本株、長期投資で「買い場」

米景気ソフトランディング期待・米利下げ・米国株上昇受け日経平均反発続く

 先週(営業日9月17~20日)の日経平均株価は、1週間で1,142円上昇して3万7,723円となりました。

 米景気ソフトランディング(軟着陸)期待が高まる中、FRB(米連邦準備制度理事会)が18日に0.5%の大幅利下げを実施したことを好感し、米国株(ダウ工業株30種平均、S&P500種指数)は先週史上最高値を更新しました。これを好感して、先週の日経平均は反発が続きました。

日経平均株価週足:2024年1月4日~9月20日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

 今年の日経平均は7月11日まで「円安株高」局面が続いていました。米景気が堅調でドル金利が高止まる中で、「円安株高」がいつまでも続く期待がありました。

 ところが、1ドル161円台、日経平均4万2,224円をつけた7月11日を境に、「円高株安」局面に転換しました。米景気が冷え込む不安から米金利が低下して急激な円高が進むと、円高で企業業績が悪化する日本株が売られ、日経平均が急落しました。

 日経平均は8月5日に前日比4,451円(12.4%)安の3万1,458円と過去最大の下げ幅(下落率では昭和のブラックマンデーに次ぐ第2位)を記録しました。これは海外投機筋による日経平均オプション取引解消によって起こった「過剰反応」と考えられます。

 8月5日以降、米景気に対する過剰な悲観は収まりました。総合インフレ率(CPI(消費者物価指数)総合指数)が2.5%まで低下する中、米景気は底堅いとの見方が広がり、米景気ソフトランディングへの期待が高まりました。FRBの0.5%大幅利下げは、雇用のさらなる低下に備えた「予防的措置」と解釈され、米景気への悲観にはつながりませんでした。

米インフレ率(CPI総合・コア指数前年比上昇率)推移:2020年1月~2024年8月

出所:米労働省より楽天証券経済研究所作成

 米景気がハードランディングするかソフトランディングするか、過去2年以上続いている議論はいまだに結論が出ていません。米景気に不安が高まると米長期金利が低下し、米景気堅調の見方が広がると、長期金利が上昇していました。

 足元ソフトランディングの期待が高まる中で、0.5%利下げ・長期金利低下が進んだことが、株式市場に追い風となっています。

米長短金利(10年・FF金利)推移:2021年末~2024年9月20日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所作成

NYダウ最高値、ナスダックは最高値に届かず

 米景気は悪くないとの見方が広がり、NYダウとS&P500が先週は最高値をつけました。NYダウは、過去は米国経済の中心となる企業から構成されていましたが、銘柄入れ替えの遅れによって、今はややオールド・バリュー株の構成比が高く、景気敏感株もやや多めとなっています。そのNYダウは、米景気の見方が改善したことによって最高値をつけました。

 一方、米国経済をけん引するGAFAMなど大型ハイテク株の比率が高いナスダック総合指数は、米金利がまだ高水準にあることから、高値まで戻っていません。

 長期的には、ナスダックの方がNYダウよりも上昇率が高いですが、短期的にはNYダウの方が上昇しやすい環境となっています。

日経平均・ナスダック・NYダウの動き比較:2012年末~2024年9月(20日)

出所:2012年末を100として指数化、QUICKより楽天証券経済研究所作成

日本株は長期投資で買い場の判断を継続

 日本株の投資判断は、いつも述べていることと変わりません。日本株は割安で、長期的に大きく上昇する余地があると考えています。日経平均は、5年以内に5万円まで上昇すると予想しています。

 ただし、短期的な波乱はまだ終わっていない可能性もあります。日経平均はこれからも、急落・急騰を繰り返すでしょう。従って、リスク管理は大切です。割安な日本株を時間分散しながら買い増ししていくことが長期の資産形成に寄与すると考えています。

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