今週は18日(水)に4年半ぶりの利下げが確実視される米国のFOMC(連邦公開市場委員会)、20日(金)には日本銀行の金融政策決定会合が終了します。
米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は利下げ、日本銀行は利上げと日米の金利政策のかい離に注目が集まる中央銀行ウイークです。
何といっても最重要なのは18日の米国FOMCでの利下げ幅が通常の0.25%になるか、その倍の0.5%になるか。
利下げ自体は米国のお金の巡りが良くなるので株価にとってポジティブです。
ただ、中央銀行が利下げを始めるのは景気に減速懸念があるから。景気後退が深刻な場合、たとえ利下げしたからといってセオリー通り、株価に追い風が吹かない可能性もあります。
今回のFOMCで通常の倍となる0.5%利下げが行われた場合、日米金利差の縮小が想定以上になるため、日本が休日だった16日(月)に一時、1ドル=139円50銭台まで進んだ円高がさらに加速する可能性も高いでしょう。
米国の利下げで米国株は上昇しているのに、日本株は外需株を中心に急落という展開も考えられます。
20日(金)終了の日銀の金融政策決定会合では、7月に0.25%まで引き上げた政策金利の据え置きが濃厚です。
注目は会合後の記者会見で、植田和男総裁が「政策金利0.5%は壁ではない」という前回7月31日の発言を繰り返すかどうか。前回はこの植田発言によって8月上旬に急速な円高進行や株価暴落が起こっただけに注目です。
先週の日経平均株価(225種)は1ドル=143円90銭台の高値から140円台まで円高が進んだにもかかわらず、前週末比190円(0.5%)高の3万6,581円と小幅反発しました。
半導体製造装置メーカーの東京エレクトロン(8035)が前週末比7.6%高となるなど、ここまで売られ過ぎた半導体株が自律反発したことが日経平均の上昇に貢献しました。
機関投資家が運用指針にする先週の米国のS&P500種指数は4.02%高と、先々週の4.25%の大幅下落をほぼ取り返す堅調な展開でした。
先週発表された8月の米国物価指標は住居費など粘着質な物価高がまだ続いている状況を示唆しました。
しかし、米国政府が高速半導体メーカー・エヌビディア(NVDA)の先端半導体のサウジアラビア向け輸出の承認を検討しているという報道が流れたことなどで、先週は半導体株が大きくリバウンド上昇。
10日(火)の米国大統領選に向けたテレビ討論会後の世論調査でハリス民主党候補がトランプ共和党候補以上の支持を集め、政治の混乱が避けられるかもしれない状況になったことも追い風だったようです。
ただ15日(日)にはトランプ候補がゴルフ中に暗殺未遂事件が発生。トランプ氏は無事だったものの、大統領選の行方とそれが株価に与える影響はいまだ不透明です。
日本が祝日だった16日(月)の米国株は、FOMCで0.5%の利下げが行われるという市場の期待感が高まり、ダウ工業株30種平均が史上最高値を更新するなど堅調でした。
新発売されるiPhone16に対する需要が弱いとアナリストに指摘されたアップル(AAPL)が13日終値より2.8%安となるなど、ハイテク株は利益確定の売りに押されました。
17日(火)早朝には一時139円台に突入したドル/円レートが1ドル=140円60銭台まで円安方向に振れました。
連休明け17日(火)の日経平均終値は前週末比378円安の3万6,203円でした。自動車などの輸出関連株や半導体関連の値がさ株が売られました。
先週:米物価高の鈍化や日米半導体株の自律反発で米国株上昇!円高にもかかわらず日経平均プラス維持!
先週は米国の利下げが確実視される中、日米金利差縮小を見込んで為替市場でじわじわと円高が進行。
11日(水)に日銀の中川順子審議委員が秋田市での講演で、経済や物価の動向に応じて「金融緩和の度合いを調整していくことになる」と述べ、政策金利のさらなる引き上げを否定しなかったことも円高につながりました。
ただ日経平均は12日(木)に半導体株をけん引役に前日比1,213円高と大幅上昇。週間でプラスを維持しました。
しかし、円高が嫌われたトヨタ自動車(7203)が前週末比4.9%下落するなど、大型株の影響が強いTOPIX(東証株価指数)は1.0%の下落。先々週の4.2%安からさらに続落しました。
個別銘柄では世界的なAI(人工知能)向けデータセンター建設ラッシュを好感して、データセンター運営企業や空調設備関連企業の株価が上昇。
データセンター大手のさくらインターネット(3778)が23.2%高、データセンター向け電設工事を行う住友電設(1949)が9.7%高となるなど盛り上がりました。
ハイテク株に対する見直し買いが世界的に広がる中、子会社の英国半導体設計会社アーム・ホールディングス(ARM)の株価急騰を受けてソフトバンクグループ(9984)も9.4%高と反転上昇しました。
米国では11日(水)発表の8月CPI(消費者物価指数)が予想通り前年同月比2.5%増まで低下したものの、住居費の伸びが前年同月比で5.2%増に加速するなどサービス関連の物価高がいまだに続いていることが判明。
12日(木)の8月PPI(卸売物価指数)も前月比0.2%上昇と予想をやや上回りました。
ただ、12日にFOMCでの利下げ幅が0.25%になるか0.5%になるか予断を許さないという報道が流れたこともあり、0.5%利下げに対する期待感が台頭。
CME(シカゴ商品取引所)が金利先物市場の動向から政策金利を予想する「Fed Watch Tool」の予想確率は17日(火)早朝時点で0.25%の利下げが35%、0.5%の利下げが65%となっています。
16日(金)発表のミシガン大学消費者信頼感指数の8月速報値は7月から上昇。
0.5%利下げに対する期待感や米国経済のソフトランディング(軟着陸)が順調に進んでいるという楽観論が台頭したことが先週の米国株の反発につながりました。
そのけん引役になったのはAI関連の主力株・エヌビディア(NVDA)。前週末比15.8%と大きく反転上昇しました。
また、AIを駆使したセキュリティ系ソフトウエアを販売するパランティア・テクノロジーズ(PLTR)が17.3%高。9月6日(金)にS&P500に新規採用されたことで機関投資家の買いが殺到しました。
一時はバブル崩壊かと思われたAI関連株に新たな主役誕生となるかもしれません。
今週:1ドル=140円割れで大波乱?FOMC&日銀会合を無事通過後の基本シナリオは株価上昇!?
今週18日(水)に終了するFOMCでは、参加理事たちが今後の政策金利の水準を予想した分布図「ドットチャート」も発表されます。
9月17日早朝の「Fed Watch Tool」では2024年中に1.25%(0.25%の利下げで換算して5回分)の利下げを行う予想確率が一番高くなっています。
2024年内に開かれるFOMCは9月17~18日、11月6~7日、12月17~18日の3回しかないため、9月、11月、12月のうち2回は通常の倍の0.5%利下げになるというのが市場予想です。
18日(水)に発表されるドットチャートでFOMC参加理事たちが市場予想より小幅な利下げ見通しを打ち出すと、米国株にとってネガティブでしょう。
今回の利下げ幅が通常の0.25%になってもその倍の0.5%になっても米国株の上昇が続くシナリオが最有力かもしれません。
ただ先週の米国株がすでに0.5%利下げを織り込んで上昇しているだけに、0.25%の小幅利下げだと、利下げペースが緩慢なことで米国の雇用市場の鈍化を食い止められないという不安が台頭し、株価が反落する恐れもあります。
FOMCの利下げ幅がどちらに転ぶかが極めて不透明。FOMC後の記者会見でパウエルFRB議長からどんな発言が飛び出すかにも注目が集まります。
一方、FOMCで0.5%の大幅利下げが決まると、日米金利差縮小で1ドル=130円台の円高加速が必至の状況になるでしょう。日本株市場では外需株を中心に株価が急落するかもしれません。
FOMCの利下げが0.25%にとどまり、今後の利下げペースも緩やかなものにとどまることが日本株にとって最良のシナリオでしょう。
米国では週明け16日(月)発表の9月のニューヨーク連邦準備銀行製造業景気指数が予想を大幅に上回り1年ぶりにプラス圏に浮上。製造業の組み入れ比率が高いNYダウの史上最高値更新に貢献しました。
17日(火)には8月の小売売上高が発表。
18日(水)には8月の住宅着工件数、19日(木)には8月中古住宅販売など高金利で低迷が続く住宅関連指標も発表されます。
20日(金)には日銀の金融政策決定会合も終了。ただでさえFOMCで急速な円高が進みそうなこともあり、植田日銀総裁も会合後の記者会見では金融引き締めに積極的なタカ派発言のトーンを少し弱めるのではないかと思われます。
中央銀行ウイークといえる今週を乗り切れば、来週27日(金)には自民党総裁選の開票結果が判明。
人気の高い小泉進次郎元環境相が掲げる衆議院の早期解散総選挙が本当に実施されるようなら、選挙と株価は相性がいいこともあり、10月以降は年末に向けた上昇相場再開に期待できそうです。
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